2011-06-24(Fri)
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。#11 あの夏に咲く花
明らかになっためんまの「願い」。そして光の中へ。

これにて「あの花」完結です。

みんな揃ってロケット花火を打ち上げたにも関わらずめんまは成仏できませんでした。結局そのまま帰宅した二人、ポテチを食べながら他人事みたいな調子のめんまに対し、じんたんは「成仏しなかった理由」について思い当たる節があるようです。それは「ロケット花火が違っていた」のではなく…と考えているとゆきあつから呼び出しのお電話。じんたんは寝入ってしまっためんまを置いて神社へ向かいます。
「めんまが成仏しなかったのは願いが違ったからじゃない」
既にみんなが集まっている夜の神社はほとんどお通夜。なぜめんまは成仏しなかったのか? その理由についてじんたん同様あなるもわかっていたのですね。めんまの願いを叶えるためではなく、自分のために打ち上げたロケット花火。各々が違う思惑で「めんまの成仏」を望んだことを神様は見ていた、だからめんまは成仏しなかった。
と、ここまでは予想どおりでした。見た目だけ仲間に戻っても、形だけ一つになっても、心がバラバラでは何の意味もありません。あなるの叫びに追従してゆきあつも本心を語り…つることしては重々承知のことだろうけど、はっきり口に出した言葉を聞くのは何より辛かろう。ゆきあつの言葉に「最低!」と噛み付いたつるこへあなるが割り込んでさらに泥沼。そして掴み合いの軽いキャットファイトからつるこの本心がようやく明らかになりました。
前回見せた「あの日の再現」について、つるこからの電話でゆきあつが全てを察したのは、じんたん抜きで集まったはずのあの日の秘密基地にじんたんがいた理由までも再現していたのですね。てな具合につるこは「今も昔もゆきあつの一番の理解者はあなる」であることに気付いていた、だからこその前回の言葉であり、第九話で見せた家政婦つるこの心の波紋だったのです。自分はどうあってもゆきあつの隣に立てないと判っている、これは辛いなあ。
「私が昔からずっと羨ましかったのはあなたよ! あなる!」
例えゆきあつが振り向いてくれなくても「理解者」になることで満足していた日々、しかし結局あなるに敵わないことを見せ付けられてしまう。自分はめんまの「代わり」でも構わないのに「理解者」の立場すら望めない。これは辛かっただろうね。思えば女装事件の暴露をあえてみんなの前(あなるの前)で行ったのは自分の優位性「ゆきあつの事を一番理解している」とのアピールだったのかも。子供時代から観察眼が鋭かったつるこは良くも悪くも自分の事・周りのことをよくわかっていて、しかしわかりすぎる故に嫉妬のベクトルがあなるへ向いてしまった。
そういえばつるこが描いためんまの絵のリボンが何故赤かったのかずっと気になっていたのですが、今回子供時代の映像を見てその意味をふと思いつきました。子供時代のつるこの服には必ず「赤」が入っており、また高校生の今はメガネフレームが赤と、つまりつるこにとって「赤」は自らを表す色なのでしょう。絵のリボンを赤く描いたのは亡くなっためんまに自分の色を重ね合わせ、「ゆきあつのめんまは私」と虚しい空想に浸るけれど、その直後の溜息で「それはありえない」と我に返った。そう考えると第四話のあのワンシーンはじつに切ないなあ。

「めんまはじんたんだけじゃなくて、みんなが大好きだからなぁ」
あの日つるこはめんまへ全てを話していた。ゆきあつあなるがじんたんの気持ちを確かめようとしていること、そのためじんたんを呼んでしまったこと。しかしめんまはあの日の秘密基地で何も言わなかった。それは「みんなが大好き」だから。大好きなじんたんに酷い事を言われても泣かなかったのは、自分の事よりバスターズのみんなの事を考えていたから。自分の事しか考えてないみんなと違ってめんまはみんなの事ばかり考えてる。そりゃ幼いつるこが「敵わない」と思うのもわかります。
「めんまが成仏して、あなるがじんたんとくっ付いてくれれば、私がまた…」
というわけでつるこもまた自分勝手な思いからめんまの成仏を望んでいた。そこにめんまへの思いは無く、それどころか「邪魔だから消えてくれ」と言わんばかり。確かにこれでは成仏などできるはずがありません。
「成仏させてやらなきゃ、めんまは俺を許してくれねえんだよ!」
そしてこれまで幾度となく匂わせていたぽっぽの闇がいよいよ明らかになりました。重苦しい雰囲気の中で突然叫び始めたぽっぽ…前回「いつも見ているだけ」のセリフから予想したとおり、ぽっぽはめんまの事故現場を見ていたのです。しかし見ているだけで何もできなかった、溺れて沈んでいくめんまに何もしてあげられなかった。最後の最後で超弩級の隠し球が明らかになって、これまでのぽっぽの様子からの温度差も激しく、相当な衝撃シーンなのだけれど…尺の都合か大人の都合かかなりの詰め込みに見え、またその説明をほとんどセリフで行ってしまう大味さ、そして唐突・極端すぎるぽっぽの豹変に私の感情は少々乗り遅れてしまいました。高校へも行かず遠い外国へ逃げ、帰国すると秘密基地に住んでいたぽっぽのトラウマの深さは計り知れず、ならば彼に一話分使っても丁寧に描いてほしかった気がします。

「じんたんの最近は~♪」
その頃じんたん宅で居眠りのめんまは父ちゃんの帰宅で目を覚ましました。仏壇の母ちゃんに最近のじんたんの様子を報告する父ちゃん、その言葉を聞いためんま…引きこもってゲームばかりやっていたじんたんはバスターズのみんなと再びツルむようになって元気を取り戻した、その変貌に安堵するようなめんまの笑顔は、思えば「願いが叶った安堵」であり成仏へのカウントダウンだったのですね。
「じんたんなんかもうどうでもいい! めんまにちゃんと謝って…」
一方の神社では先程から大泣き中のあなるがパッと顔を向けて決意発表、みんなの告白を聞いてようやく「めんまのため」に成仏を望んだか、あなるはその決意を涙声で突然叫んだ。突然の叫びに唖然のみなさん、いきなり「どうでもいい」と言われたじんたんは一瞬表情を固め…と思ったらズレた「二つの睫毛」に固まっていたのでした。あははは。これをきっかけにどよんどな空気は一転、ゆきあつの「あなるはそのまんまでいいよ」にあなるは「もー! ありがと!」とかわいいリアクションを返したり、バスターズのみなさんは憑き物が落ちたように笑顔に戻りました。こんな些細なきっかけであだ名を呼び合い昔に戻れてしまったのは、やはりみんな心の底で「それを望んでいた」からなのでしょうね。
というわけでみんな揃って今度こそ「めんまのため」に成仏を願う。ここにいる五人だけじゃなくてめんまを交えてきちんと話し合おう、だって私たち六人で超平和バスターズなんだから…と肝心のセリフをつるこに取られてプンスカのあなるの後、じんたんと肩を組んで「頼むぜ、リーダー」のゆきあつ。いろいろ吹っ切れたとはいええらい変わりようです。険悪な雰囲気をきっかけ一発で逆転したり、嫌味なキャラが突然いい奴に変わったり、最終回での突然変化は昔の連続ドラマでよく見かけましたが、こういう点を含めて岡田脚本は「連ドラ的」と言われるのだろうね。
じんたんはみんなに見送られてめんまを迎えに走ります。みんなの気持ちが一つになったことでひょっとしたらめんまが消えてしまっているのでは? と見ていてドキドキ、しかも自宅に着いたじんたんが居間を覗くカットなどめんま不在を思わせるアングルから入ったりじつに性格が悪い(褒め言葉。そんな危惧を余所にめんまはまだじんたん家にいました。

ここでついに「めんまの願い」が明らかに。当初の予想どおりとはいえよくぞ最終回まで引っ張ったものです。前回意味深に語った母ちゃんの「ただ一つだけ…」は成仏の条件ではなく母ちゃん自身の心残りでありました。母ちゃんが入院して以来じんたんは泣かなくなった、感情を抑え付けるようになってしまった。するとめんまは「じんたん絶対泣かす!」と約束、これこそ生前に果たせなかった「めんまの願い」だったのです。だから「あの日」のめんまはその事を相談するためじんたん抜きで集まりたかった、
後に「夏のケモノ」としてじんたんだけに姿を見せたのも「じんたんを泣かす」ためなのだから当然ちゃ当然です。そして第八話にて泣いてるじんたんの頭を撫でた時母ちゃんのフラッシュバックがあった意味もこれにて回収。あの時点でめんまの願いは叶っていた、だから後はもう成仏するのを待つだけで、少しずつ姿が消えかかっていたのもそういうことだったと。なるほど。
見るからに弱々しく横たわるめんまを抱き締め、じんたんは「あの場所」へ向かう。俺はめんまに会いたかった、謝りたかった、好きだと言いたかった。でもそれはみんなも同じだった。だから消えてしまう前にみんなの所へ行かなければならない。何というか思いっきり王道な展開で、音楽含めて泣かせに来ているの丸わかりな演出なれど見ていて画面が歪んで困る。私もちょろいね。

しかし秘密基地に到着する頃、じんたんさえもめんまの姿が見えなくなっていました。なにィ! このタイミングで消えますか!? 声はすれども姿が見えないめんまを慌てて捜すじんたん、一方「じんたんから見えない」ことを察しためんまは咄嗟に「かくれんぼ」と呟き…人が天に召されることを「隠れる」とも言うので、つまりめんまの「かくれんぼ」はそう言う意味も含んでのシナリオなのだろうか。考えすぎか。めんまを探しに秘密基地を飛び出すじんたん、バスターズのみんなもそれに続くけれど君たちは幽霊めんまの声も姿もわからないのだから見つけようが無いでしょうに、とは野暮なツッコミ。勢いですよ勢い!
みんながいなくなった秘密基地にて、めんまは最後の力を振り絞って何かを書いていました。これがお別れのメッセージであることは誰でも想像付きますが、まさかあんな鮮やかな形で渡されることになるとは。そしてめんまはじんたんが昔掘った「超平和バスターズ」の文字を見て何やら思案。結果から言うとめんまの手紙よりもここへの追記の方が私の涙腺を刺激しました。じんたん母ちゃんに託された望みはじんたんを泣かすことだったけれど、「めんまの望み」は言うまでもなく追記のことだと思うので。
朝日が昇る時間まで走り回ってもめんまは見つからず、もう手遅れ?と肩を落とすみなさん。するとあなるが草むらに咲いた「花」に気付きました。それは先ほどめんまが書いていたみんなへの手紙、バスターズそれぞれへの手紙がまるで花びらのように置かれている様はこれだけで涙腺ダムが大決壊でした。手紙を開いたと同時にseacret baseが掛かるのもズルいよねえ。この瞬間にウルッとするなと言うほうが無理。
各々が自分への手紙を読み、めんまとの別れに涙する中、じんたんは一人「かくれんぼを終わらせる」ために声を上げます。「もういいかーい? もういいかーい?」、するとみんなもその声に続き…まるで舞台演劇のような過剰な演出に少々戸惑ってしまったけれど、若者たちのめんまへの思いが痛いほど伝わるシーンでしたね。

「もういいよ!」
すると聞こえためんまの声。その声はじんたんだけではなくみんなにも聞こえ、朝日を背景にこちらを見ていためんまの姿もみんなから見えました。「じんたんを泣かす」ために現れた夏のケモノは、やはりもう1つの願いがあったのでしょう。それはおそらく「みんなときちんとお別れをしたい」ということ。そのためにはみんなが仲良くしていてくれないと困る、そして成仏して生まれ変わったときみんなが仲良しじゃないと困る、だから最後にめんまは姿を現したんだと思う。言ってしまえばこのラストは当初からの予想どおりで、しかし変化球が続いた本作にてこれほど王道中の王道の締めを持ってきたことに逆に驚いたり。
みんなに見つかっためんまは木を支えに弱々しく立ち上がり、「かくれんぼを終わらせる言葉」すなわち「現世への未練を終わらせる言葉」をお願い。みんなからお別れの言葉をもらい、じんたんからも「大好き」と言われためんまは思わず目がうるうる。すると一転して子供時代へ戻ったバスターズのみんな、めんまを泣かせたじんたんを囃し立てる様子は子供時代によくある風景だったのでしょうね。その様子を懐かしそうに見守るめんま、みんなと仲良く遊んでいた頃を思い出しためんまは「生まれ変わってみんなと遊びたい」と最後のお別れを。
一方バスターズのみなさんは各々がめんまの死について「しこり」を持ち続けていて、しかしそれは全て自分本位のもので、肝心の「めんまの気持ち」を考えてこなかった。そんな中幽霊めんまの騒動から「成仏」への経緯で各々が自分の「しこり」を見つめ直し、結果めんまの思いを理解でき、めんまときちんと「お別れ」する気持ちになれた。その事を端的に表す「めんま、見ーつけた!」という締めはなかなか鮮やかでした。
朝日に透けるめんまは最後の笑顔を見せて光の中へ消えていく。そして一瞬暗転の後、今までしおれていた六本の花が綺麗に蘇ってEDへ入る流れが綺麗すぎてナントモ。

俺たちは大人になっていく。
どんどん通り過ぎる季節に、道端に咲く花も、移り変わっていく。
あの季節に咲いた花は、何て名前だったんだろう?
小さく揺れて、触れればチクリと痛くて、鼻を近づければ僅かに青い日向の香りがした。
次第にあの香りは薄れていく。俺たちは大人になっていく。
だけど、あの花は、きっとどこかに咲き続けてる。
EDに乗りながら描かれるその後のバスターズの様子と「花」の意味。じんたんあなるは学校へ戻ったようでなにより、じんたんを見るあなるの表情からして「どうでもいい」わけでは無さそうな(笑。ゆきあつるこは相変わらずの距離みたいだけれど、ゆきあつが気遣って見せたり、つるこもいろいろ吹っ切れたようでしまい込んでいた花パッチンを付けていたり、微妙な変化の兆候が見られて微笑ましい。ガテン仕事のぽっぽももう「逃げる」ことを止めたようで様々な勉強に精を出している様子。などといろいろ変化したみなさんですが集まる場所は変わりません。
超平和バスターズはずっとなかよし
めんまが書き足した字のとおり、みんなはこれからも仲良くやっていくことでしょう。これから先もいろんな事があるだろうし、時にはぶつかることがあるかもしれない。でもどこかで「あの花」が見守ってくれていると思えば大丈夫、だって超平和バスターズは六人揃えば何でも乗り越えられるのだから。
簡単に総評。
駆け足気味に詰め込まれた最終回は若干の演出過剰もあって評価が分かれそうで、私的にも正直言って期待したほどのカタルシスを得られませんでした。最終回は涙腺ダムの大決壊を覚悟していたのに思ったほど泣けなかったのは作中でキャラを泣かせすぎたせいかな。あれほどの大泣きを見せられるとどうしても一歩引いてしまって作品世界へ入り込めず、勢いに乗り遅れて傍観者になってしまうともはやどうにもこうにも。めんまを背負って秘密基地へ走るシーンや、花びらのように並べられた手紙を見つけるシーンなどなど「キャラが泣いていないシーン」ではウルってましたが。あとあのタイミングのseacret baseは反則でしょう(笑
とはいえあちこちに埋め込まれた伏線も一応回収され、めんまも無事に成仏し、10話の時点でどうなるかと思っていたけれどまあまあ綺麗に纏まったいい最終回でした。振り返ってみれば女装ゆきあつ・あなる貞操の危機・イレーヌさんの「ふざけてるわね」などトリッキーな仕掛けと共に、良くも悪くも人間の体温を感じる繊細なシナリオ・描写に唸らされた毎回。それを演じるキャラクターたちも作画崩れをほとんど感じなかった安定度で、中の人もシーンを盛り上げるに十二分な熱演を見せて(聞かせて)くれましたね。先が見えないオリジナルストーリーの興味深さもあって全11話非常に楽しませて頂きました。
ただ全体を通して少し残念だったのは色恋沙汰の泥沼を前面に出すあまり、描写があなる&ゆきあつに偏りすぎていたこと。全てのメンバーを平等になどと野暮な事は言いませんが、色恋沙汰どころではない重いトラウマを抱えたぽっぽの扱いが、それまで時折匂わせていたとはいえ最終回のたった1分半の説明調突発豹変告白シーンだけってのはちょっと気の毒だと思う。彼についてはもう少し何とかならなかったのだろうか。ついでに言えばバスターズの子供時代のエピソードが「あの日」に集約しすぎて、それ以前の日常で彼らがいかに「仲良し」だったかほとんど描かれずに話が進んでしまい、なので彼らが再び一つにまとまった時の感動が薄かったのも残念。こういうのは絵で見せてこそのアニメであって、女性キャラの細かな描写など特筆すべき表現力を見せていただけに惜しまれます。
本作については制作スタッフ的にかなり期待していたのだけれど、例の震災でそれどころではなくなり、レビューもやめとく予定だったのに、いざ放送第一話を見たら涙が止まらず…勢いで書いた第一話以降、ご覧のとおりレビュー完走してしまいました。おつかれさま俺。そしてダラダラ長い毎度のレビューを読んで頂いた読者諸兄もおつかれさま。
というわけで「あの花」はこれにてオシマイ。ああ面白かった。少々苦言を言いましたがそれも作品を愛する故ってことでご勘弁。心に残る素敵な作品をありがとうございました。
↓記事が役立ったら一票どうぞ。

これにて「あの花」完結です。

みんな揃ってロケット花火を打ち上げたにも関わらずめんまは成仏できませんでした。結局そのまま帰宅した二人、ポテチを食べながら他人事みたいな調子のめんまに対し、じんたんは「成仏しなかった理由」について思い当たる節があるようです。それは「ロケット花火が違っていた」のではなく…と考えているとゆきあつから呼び出しのお電話。じんたんは寝入ってしまっためんまを置いて神社へ向かいます。
「めんまが成仏しなかったのは願いが違ったからじゃない」
既にみんなが集まっている夜の神社はほとんどお通夜。なぜめんまは成仏しなかったのか? その理由についてじんたん同様あなるもわかっていたのですね。めんまの願いを叶えるためではなく、自分のために打ち上げたロケット花火。各々が違う思惑で「めんまの成仏」を望んだことを神様は見ていた、だからめんまは成仏しなかった。
と、ここまでは予想どおりでした。見た目だけ仲間に戻っても、形だけ一つになっても、心がバラバラでは何の意味もありません。あなるの叫びに追従してゆきあつも本心を語り…つることしては重々承知のことだろうけど、はっきり口に出した言葉を聞くのは何より辛かろう。ゆきあつの言葉に「最低!」と噛み付いたつるこへあなるが割り込んでさらに泥沼。そして掴み合いの軽いキャットファイトからつるこの本心がようやく明らかになりました。
前回見せた「あの日の再現」について、つるこからの電話でゆきあつが全てを察したのは、じんたん抜きで集まったはずのあの日の秘密基地にじんたんがいた理由までも再現していたのですね。てな具合につるこは「今も昔もゆきあつの一番の理解者はあなる」であることに気付いていた、だからこその前回の言葉であり、第九話で見せた家政婦つるこの心の波紋だったのです。自分はどうあってもゆきあつの隣に立てないと判っている、これは辛いなあ。
「私が昔からずっと羨ましかったのはあなたよ! あなる!」
例えゆきあつが振り向いてくれなくても「理解者」になることで満足していた日々、しかし結局あなるに敵わないことを見せ付けられてしまう。自分はめんまの「代わり」でも構わないのに「理解者」の立場すら望めない。これは辛かっただろうね。思えば女装事件の暴露をあえてみんなの前(あなるの前)で行ったのは自分の優位性「ゆきあつの事を一番理解している」とのアピールだったのかも。子供時代から観察眼が鋭かったつるこは良くも悪くも自分の事・周りのことをよくわかっていて、しかしわかりすぎる故に嫉妬のベクトルがあなるへ向いてしまった。
そういえばつるこが描いためんまの絵のリボンが何故赤かったのかずっと気になっていたのですが、今回子供時代の映像を見てその意味をふと思いつきました。子供時代のつるこの服には必ず「赤」が入っており、また高校生の今はメガネフレームが赤と、つまりつるこにとって「赤」は自らを表す色なのでしょう。絵のリボンを赤く描いたのは亡くなっためんまに自分の色を重ね合わせ、「ゆきあつのめんまは私」と虚しい空想に浸るけれど、その直後の溜息で「それはありえない」と我に返った。そう考えると第四話のあのワンシーンはじつに切ないなあ。

「めんまはじんたんだけじゃなくて、みんなが大好きだからなぁ」
あの日つるこはめんまへ全てを話していた。ゆきあつあなるがじんたんの気持ちを確かめようとしていること、そのためじんたんを呼んでしまったこと。しかしめんまはあの日の秘密基地で何も言わなかった。それは「みんなが大好き」だから。大好きなじんたんに酷い事を言われても泣かなかったのは、自分の事よりバスターズのみんなの事を考えていたから。自分の事しか考えてないみんなと違ってめんまはみんなの事ばかり考えてる。そりゃ幼いつるこが「敵わない」と思うのもわかります。
「めんまが成仏して、あなるがじんたんとくっ付いてくれれば、私がまた…」
というわけでつるこもまた自分勝手な思いからめんまの成仏を望んでいた。そこにめんまへの思いは無く、それどころか「邪魔だから消えてくれ」と言わんばかり。確かにこれでは成仏などできるはずがありません。
「成仏させてやらなきゃ、めんまは俺を許してくれねえんだよ!」
そしてこれまで幾度となく匂わせていたぽっぽの闇がいよいよ明らかになりました。重苦しい雰囲気の中で突然叫び始めたぽっぽ…前回「いつも見ているだけ」のセリフから予想したとおり、ぽっぽはめんまの事故現場を見ていたのです。しかし見ているだけで何もできなかった、溺れて沈んでいくめんまに何もしてあげられなかった。最後の最後で超弩級の隠し球が明らかになって、これまでのぽっぽの様子からの温度差も激しく、相当な衝撃シーンなのだけれど…尺の都合か大人の都合かかなりの詰め込みに見え、またその説明をほとんどセリフで行ってしまう大味さ、そして唐突・極端すぎるぽっぽの豹変に私の感情は少々乗り遅れてしまいました。高校へも行かず遠い外国へ逃げ、帰国すると秘密基地に住んでいたぽっぽのトラウマの深さは計り知れず、ならば彼に一話分使っても丁寧に描いてほしかった気がします。

「じんたんの最近は~♪」
その頃じんたん宅で居眠りのめんまは父ちゃんの帰宅で目を覚ましました。仏壇の母ちゃんに最近のじんたんの様子を報告する父ちゃん、その言葉を聞いためんま…引きこもってゲームばかりやっていたじんたんはバスターズのみんなと再びツルむようになって元気を取り戻した、その変貌に安堵するようなめんまの笑顔は、思えば「願いが叶った安堵」であり成仏へのカウントダウンだったのですね。
「じんたんなんかもうどうでもいい! めんまにちゃんと謝って…」
一方の神社では先程から大泣き中のあなるがパッと顔を向けて決意発表、みんなの告白を聞いてようやく「めんまのため」に成仏を望んだか、あなるはその決意を涙声で突然叫んだ。突然の叫びに唖然のみなさん、いきなり「どうでもいい」と言われたじんたんは一瞬表情を固め…と思ったらズレた「二つの睫毛」に固まっていたのでした。あははは。これをきっかけにどよんどな空気は一転、ゆきあつの「あなるはそのまんまでいいよ」にあなるは「もー! ありがと!」とかわいいリアクションを返したり、バスターズのみなさんは憑き物が落ちたように笑顔に戻りました。こんな些細なきっかけであだ名を呼び合い昔に戻れてしまったのは、やはりみんな心の底で「それを望んでいた」からなのでしょうね。
というわけでみんな揃って今度こそ「めんまのため」に成仏を願う。ここにいる五人だけじゃなくてめんまを交えてきちんと話し合おう、だって私たち六人で超平和バスターズなんだから…と肝心のセリフをつるこに取られてプンスカのあなるの後、じんたんと肩を組んで「頼むぜ、リーダー」のゆきあつ。いろいろ吹っ切れたとはいええらい変わりようです。険悪な雰囲気をきっかけ一発で逆転したり、嫌味なキャラが突然いい奴に変わったり、最終回での突然変化は昔の連続ドラマでよく見かけましたが、こういう点を含めて岡田脚本は「連ドラ的」と言われるのだろうね。
じんたんはみんなに見送られてめんまを迎えに走ります。みんなの気持ちが一つになったことでひょっとしたらめんまが消えてしまっているのでは? と見ていてドキドキ、しかも自宅に着いたじんたんが居間を覗くカットなどめんま不在を思わせるアングルから入ったりじつに性格が悪い(褒め言葉。そんな危惧を余所にめんまはまだじんたん家にいました。

ここでついに「めんまの願い」が明らかに。当初の予想どおりとはいえよくぞ最終回まで引っ張ったものです。前回意味深に語った母ちゃんの「ただ一つだけ…」は成仏の条件ではなく母ちゃん自身の心残りでありました。母ちゃんが入院して以来じんたんは泣かなくなった、感情を抑え付けるようになってしまった。するとめんまは「じんたん絶対泣かす!」と約束、これこそ生前に果たせなかった「めんまの願い」だったのです。だから「あの日」のめんまはその事を相談するためじんたん抜きで集まりたかった、
後に「夏のケモノ」としてじんたんだけに姿を見せたのも「じんたんを泣かす」ためなのだから当然ちゃ当然です。そして第八話にて泣いてるじんたんの頭を撫でた時母ちゃんのフラッシュバックがあった意味もこれにて回収。あの時点でめんまの願いは叶っていた、だから後はもう成仏するのを待つだけで、少しずつ姿が消えかかっていたのもそういうことだったと。なるほど。
見るからに弱々しく横たわるめんまを抱き締め、じんたんは「あの場所」へ向かう。俺はめんまに会いたかった、謝りたかった、好きだと言いたかった。でもそれはみんなも同じだった。だから消えてしまう前にみんなの所へ行かなければならない。何というか思いっきり王道な展開で、音楽含めて泣かせに来ているの丸わかりな演出なれど見ていて画面が歪んで困る。私もちょろいね。

しかし秘密基地に到着する頃、じんたんさえもめんまの姿が見えなくなっていました。なにィ! このタイミングで消えますか!? 声はすれども姿が見えないめんまを慌てて捜すじんたん、一方「じんたんから見えない」ことを察しためんまは咄嗟に「かくれんぼ」と呟き…人が天に召されることを「隠れる」とも言うので、つまりめんまの「かくれんぼ」はそう言う意味も含んでのシナリオなのだろうか。考えすぎか。めんまを探しに秘密基地を飛び出すじんたん、バスターズのみんなもそれに続くけれど君たちは幽霊めんまの声も姿もわからないのだから見つけようが無いでしょうに、とは野暮なツッコミ。勢いですよ勢い!
みんながいなくなった秘密基地にて、めんまは最後の力を振り絞って何かを書いていました。これがお別れのメッセージであることは誰でも想像付きますが、まさかあんな鮮やかな形で渡されることになるとは。そしてめんまはじんたんが昔掘った「超平和バスターズ」の文字を見て何やら思案。結果から言うとめんまの手紙よりもここへの追記の方が私の涙腺を刺激しました。じんたん母ちゃんに託された望みはじんたんを泣かすことだったけれど、「めんまの望み」は言うまでもなく追記のことだと思うので。
朝日が昇る時間まで走り回ってもめんまは見つからず、もう手遅れ?と肩を落とすみなさん。するとあなるが草むらに咲いた「花」に気付きました。それは先ほどめんまが書いていたみんなへの手紙、バスターズそれぞれへの手紙がまるで花びらのように置かれている様はこれだけで涙腺ダムが大決壊でした。手紙を開いたと同時にseacret baseが掛かるのもズルいよねえ。この瞬間にウルッとするなと言うほうが無理。
各々が自分への手紙を読み、めんまとの別れに涙する中、じんたんは一人「かくれんぼを終わらせる」ために声を上げます。「もういいかーい? もういいかーい?」、するとみんなもその声に続き…まるで舞台演劇のような過剰な演出に少々戸惑ってしまったけれど、若者たちのめんまへの思いが痛いほど伝わるシーンでしたね。

「もういいよ!」
すると聞こえためんまの声。その声はじんたんだけではなくみんなにも聞こえ、朝日を背景にこちらを見ていためんまの姿もみんなから見えました。「じんたんを泣かす」ために現れた夏のケモノは、やはりもう1つの願いがあったのでしょう。それはおそらく「みんなときちんとお別れをしたい」ということ。そのためにはみんなが仲良くしていてくれないと困る、そして成仏して生まれ変わったときみんなが仲良しじゃないと困る、だから最後にめんまは姿を現したんだと思う。言ってしまえばこのラストは当初からの予想どおりで、しかし変化球が続いた本作にてこれほど王道中の王道の締めを持ってきたことに逆に驚いたり。
みんなに見つかっためんまは木を支えに弱々しく立ち上がり、「かくれんぼを終わらせる言葉」すなわち「現世への未練を終わらせる言葉」をお願い。みんなからお別れの言葉をもらい、じんたんからも「大好き」と言われためんまは思わず目がうるうる。すると一転して子供時代へ戻ったバスターズのみんな、めんまを泣かせたじんたんを囃し立てる様子は子供時代によくある風景だったのでしょうね。その様子を懐かしそうに見守るめんま、みんなと仲良く遊んでいた頃を思い出しためんまは「生まれ変わってみんなと遊びたい」と最後のお別れを。
一方バスターズのみなさんは各々がめんまの死について「しこり」を持ち続けていて、しかしそれは全て自分本位のもので、肝心の「めんまの気持ち」を考えてこなかった。そんな中幽霊めんまの騒動から「成仏」への経緯で各々が自分の「しこり」を見つめ直し、結果めんまの思いを理解でき、めんまときちんと「お別れ」する気持ちになれた。その事を端的に表す「めんま、見ーつけた!」という締めはなかなか鮮やかでした。
朝日に透けるめんまは最後の笑顔を見せて光の中へ消えていく。そして一瞬暗転の後、今までしおれていた六本の花が綺麗に蘇ってEDへ入る流れが綺麗すぎてナントモ。

俺たちは大人になっていく。
どんどん通り過ぎる季節に、道端に咲く花も、移り変わっていく。
あの季節に咲いた花は、何て名前だったんだろう?
小さく揺れて、触れればチクリと痛くて、鼻を近づければ僅かに青い日向の香りがした。
次第にあの香りは薄れていく。俺たちは大人になっていく。
だけど、あの花は、きっとどこかに咲き続けてる。
EDに乗りながら描かれるその後のバスターズの様子と「花」の意味。じんたんあなるは学校へ戻ったようでなにより、じんたんを見るあなるの表情からして「どうでもいい」わけでは無さそうな(笑。ゆきあつるこは相変わらずの距離みたいだけれど、ゆきあつが気遣って見せたり、つるこもいろいろ吹っ切れたようでしまい込んでいた花パッチンを付けていたり、微妙な変化の兆候が見られて微笑ましい。ガテン仕事のぽっぽももう「逃げる」ことを止めたようで様々な勉強に精を出している様子。などといろいろ変化したみなさんですが集まる場所は変わりません。
超平和バスターズはずっとなかよし
めんまが書き足した字のとおり、みんなはこれからも仲良くやっていくことでしょう。これから先もいろんな事があるだろうし、時にはぶつかることがあるかもしれない。でもどこかで「あの花」が見守ってくれていると思えば大丈夫、だって超平和バスターズは六人揃えば何でも乗り越えられるのだから。
簡単に総評。
駆け足気味に詰め込まれた最終回は若干の演出過剰もあって評価が分かれそうで、私的にも正直言って期待したほどのカタルシスを得られませんでした。最終回は涙腺ダムの大決壊を覚悟していたのに思ったほど泣けなかったのは作中でキャラを泣かせすぎたせいかな。あれほどの大泣きを見せられるとどうしても一歩引いてしまって作品世界へ入り込めず、勢いに乗り遅れて傍観者になってしまうともはやどうにもこうにも。めんまを背負って秘密基地へ走るシーンや、花びらのように並べられた手紙を見つけるシーンなどなど「キャラが泣いていないシーン」ではウルってましたが。あとあのタイミングのseacret baseは反則でしょう(笑
とはいえあちこちに埋め込まれた伏線も一応回収され、めんまも無事に成仏し、10話の時点でどうなるかと思っていたけれどまあまあ綺麗に纏まったいい最終回でした。振り返ってみれば女装ゆきあつ・あなる貞操の危機・イレーヌさんの「ふざけてるわね」などトリッキーな仕掛けと共に、良くも悪くも人間の体温を感じる繊細なシナリオ・描写に唸らされた毎回。それを演じるキャラクターたちも作画崩れをほとんど感じなかった安定度で、中の人もシーンを盛り上げるに十二分な熱演を見せて(聞かせて)くれましたね。先が見えないオリジナルストーリーの興味深さもあって全11話非常に楽しませて頂きました。
ただ全体を通して少し残念だったのは色恋沙汰の泥沼を前面に出すあまり、描写があなる&ゆきあつに偏りすぎていたこと。全てのメンバーを平等になどと野暮な事は言いませんが、色恋沙汰どころではない重いトラウマを抱えたぽっぽの扱いが、それまで時折匂わせていたとはいえ最終回のたった1分半の説明調突発豹変告白シーンだけってのはちょっと気の毒だと思う。彼についてはもう少し何とかならなかったのだろうか。ついでに言えばバスターズの子供時代のエピソードが「あの日」に集約しすぎて、それ以前の日常で彼らがいかに「仲良し」だったかほとんど描かれずに話が進んでしまい、なので彼らが再び一つにまとまった時の感動が薄かったのも残念。こういうのは絵で見せてこそのアニメであって、女性キャラの細かな描写など特筆すべき表現力を見せていただけに惜しまれます。
本作については制作スタッフ的にかなり期待していたのだけれど、例の震災でそれどころではなくなり、レビューもやめとく予定だったのに、いざ放送第一話を見たら涙が止まらず…勢いで書いた第一話以降、ご覧のとおりレビュー完走してしまいました。おつかれさま俺。そしてダラダラ長い毎度のレビューを読んで頂いた読者諸兄もおつかれさま。
というわけで「あの花」はこれにてオシマイ。ああ面白かった。少々苦言を言いましたがそれも作品を愛する故ってことでご勘弁。心に残る素敵な作品をありがとうございました。
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