2011-09-13(Tue)
花咲くいろは #24 ラスボスは四十万スイ
ついに語られた女将さんの本心。

祖母と孫娘の語らいは可笑しくも暖かい。

まずは前回引きの歩道橋ステージにてドラマチックに再会した孝ちゃんとのあれこれから。公園へ移動しベンチに並ぶ二人を照らす夕陽、ビルの隙間に沈み行く夕陽は都会の象徴であると同時に、その都会の喧噪からぽつんと離れた二人のシーンを強調するスポットライト効果も感じさせる面白い絵面です。以前は無理に取っていたコーンスープの残り粒を今は取らない孝ちゃん、つまり心の片隅に残った「思い」を無理に取ることはないと悟った。例え残ったままでも決して腐らない、それどころか日増しに存在感を増していく。
つまらないと思ったことなど無かった都会の景色。しかしそれは景色の中にいつも緒花がいたから。逆に初めて見た景色さえも緒花さえいれば輝いて見える。第一話での別れ際に無理に取ったはずのコーン粒はしっかり残っていたのです。なーんて空気を読めない緒花ですら丸判りのこの後の展開、「その時」が近付いていることを示すように照明(夕陽)が落とされ、さあいよいよ!と動き始めた遊具を必死に止める緒花…続く言葉を孝ちゃんに言わせてはいけない、その言葉は自分が言わなければいけない。孝ちゃんに飛び付いて口を押さえ、
「わたし孝ちゃんが…孝ちゃんが…孝ちゃんに…孝ちゃんにぼんぼり祭り来てほしい!」
なのに土壇場で言えなくなっちゃう緒花がかわいい。ぼんぼりをイメージさせる街灯を見切らせるフレーミングの妙が憎いね。ぼんぼれ緒花!
つまらないと思っていた景色に孝ちゃんがいるととても綺麗に見えた。その事にもう少し早く気付けば面倒くさいことにならなかったけれど、離れてみて初めて判ることもあるのです。いっぱいいっぱいの緒花が落とす涙はまるでこれまでのモヤモヤを洗い流すように溢れて止まらない。

その頃喜翆荘のフロントでは時間を持て余した仲居二人が先行きの不安を話し、そんな所へ掛かってきた電話に目を丸くする巴さん。まさかこの電話がエニシング暴走の号砲になるとは。
喜翆荘閉館後の身の振り方を考えねばならないのは板場も同様で、とはいえ引く手数多な板前である蓮さん徹さんは既に次の職場が決まっており、しかし未成年の追い回しに仕事は無い。あらら。まあ現実的に考えれば高校在学中の未成年女子をそう気安く連れて行けるわけがないけれど、一人置いてけぼりの民子はショックだろうね。割った皿を拾いながら思わず涙を落とす民子を勘違いして手を握る徹さん、先ほどの緒花&孝ちゃんと似たような絵面なのに状況が180度違う切なさ。
「男一匹、包丁一本。どんな場所でも修行でござんす!」
気まずさ全開の空気を変えようと立ち上がった徹さんが叫んだセリフは「流れ包丁 鉄平」というマンガの名ゼリフらしい。すると民子も立ち上がり、このマンガの影響で板前を目指すようになったと告白…正直言ってしょうもないきっかけだけれど、職業に対する憧れなんて案外こんなものかもしれません。何度も読み返されたであろう年季の入ったコミックスは民子の思い入れを感じさせますね。って、どう見ても「包丁人 味平」じゃないかこれ。「鉄平」の原作が次郎丸ってのは「味平」原作者の牛次郎氏をもじったのか…「鉄平」が「味平」と同時期設定とすればかなり古いマンガだけど次郎丸ってどんだけベテラン、いったい何歳なんだ? ちなみに牛次郎氏は1940年生まれの当年71歳のようです(笑

東京から戻った緒花を待ち構える青鷺。喜翆荘で最後までぼんぼる覚悟の緒花は青鷺の妨害などに負けませぬ。そんな気合を感じたか青鷺も静かに見送り…地元に馴染み、喜翆荘に馴染んだ緒花を青鷺さんは認めている? それはつまり「余所者」だった緒花がいつしか「湯乃鷺の人」になったということ。
さて喜翆荘に戻った緒花は館内(事務室)の異変に何事かと! これは喜翆荘の紹介記事が載った旅行雑誌の影響、青鷺と閑古鳥の鳴き声しか聞こえなかった喜翆荘に予約電話の音が鳴り響き、従業員総出で対応にてんてこ舞いです。異変に気付いて事務室に現れた女将さんはこの記事の執筆者が誰なのかわかっているのだなあ。閉めるつもりの旅館に塩を送られた女将さんの胸中も複雑でしょうね。

ベタ褒めの記事を眺めて盛り上がる従業員たちの傍で目配せの二人。もちろんエニシングもこの記事の執筆者が誰なのかわかっていて、そのエニシングが「どうするのか」を女将さんは黙って見ている。今までいろいろ経営改善に奔走しながら全く効果が無かった自分に比べたった一本の記事で喜翆荘をこれほど盛り上げてしまった「姉さん」への劣等感・嫉妬、だからこそ負けられない男の意地…このワンカットだけで女将さんとエニシングが各々抱える「しがらみ」が見えます。スゲエ。
突然の予約殺到にこれにて商売繁盛→借金帳消し→喜翆荘存続のコンボ成立? と思いきやそう簡単な話ではありません。この異変をしても女将さんは頑なに「喜翆荘はぼんぼり祭りで閉める」と考えを変えません。また蓮さん、徹さん、そして巴さんなどが内定している次の職場に迷惑を掛けられないとも。こんな風に過剰とも思えるほどの「気配り」こそ喜翆荘の本質であって、女将さん以外の全員は残念ながらその事をわかっていない。
次の職場を早々に決めておきながら状況が変われば周囲の迷惑も顧みず「喜翆荘で働きたい」と手のひらを返す。もちろんその気持ち(喜翆荘への愛着)に嘘は無いのだろうけど、そもそもそれほど喜翆荘を愛しているのなら最後の時まで一筋であるべきで、「自分優先」の安全策を選んだ時点で女将さんが拘ってきた「喜翆荘の精神」はもう失われている。エニシングを始めとして従業員たちは自分のエゴだけで動いている。この予約殺到で確かに表面上は賑やかさを取り戻したように見えますが、喜翆荘創業時の賑やかさとは本質がまるで違うのです。
それでも食い下がるエニシングをピシャリと止める女将さんかっこいい! すれ違いどころか話の土俵がまるで違うのでこれ以上の会話は無駄であり、「これ以上の予約を取るんじゃないよ」と念を押してサッサと出て行ってしまいます。このシーンを従業員視点から見たら確かに「横暴で意固地になってる頭が固い婆さん」にしか見えないだろうね(笑
若手代表の三人娘はもちろんそういう視点です。その理不尽感はいつも穏やかな菜子が怒り出すほどのもので、あの小動物が大怪獣へ物申す!の勢いで湯船から立ち上がり、怒りを叫びます。ここはカメラアングルが絶妙すぎて歯軋りが止まらない。ギギギ。

すると風呂場へ現れた大怪獣。菜子の叫びを脱衣所で聞いていただろうに一瞥だけでもの言わず、重厚なBGMに乗り超絶速度で体を洗い終えると東京湾もとい湯船へ迫ってまいりました。ゴジラ襲来か!(笑。その静かな迫力に湯船の隅へ追いやられた三人娘、しかし菜子は勇気を出して立ち上がった!
「ア、アノー、ケサノコトデスケド…」
あはははは! あまりの緊張に声が裏返ってカタコトになっちゃう菜子がかわいい(笑。そんな菜子を完全スルーで湯船を出た女将さんはピタゴラ装置の如く風呂道具を一瞬で片付けて風呂場を後に…女将さんの入浴は手早く体を洗うだけで、しかも入る前より風呂場を綺麗にして出て行く。ここはあくまで「お客様のお風呂」であって従業員が寛ぐ場所ではなく、また入るついでに片付けるのは当たり前のこと。女将さんの歳ならばのんびり湯船に浸かって疲れを取りたいだろうに、その欲求よりも「喜翆荘の人間としての精神」を優先する。風呂場でさえ女将さんは女将さんなのです。若い三人にそれが伝わったかどうか。
「ぼんぼり祭り? それどころじゃない!」
明けて翌日のエニシングは相も変わらず自己中心でした。降って湧いた忙しさから周囲への気配りを忘れ、そしてこういう狭いコミュニティで「祭りの準備に人を出さない」ことが何を意味するのかわかっていない体たらく。さらに「取るな」と言われていた先の予約を受けてしまう暴走…「こうなったらわからせるしかない」とエニシングは語気を荒げるけれど、その言葉が現在進行形で自分自身に掛かっていることを気付いていないのか。裏返しになった「喜翆荘」の文字が現在の状況を雄弁に語っていますね。

女将さんと緒花は亡き爺ちゃんの墓参りへ。緒花をここへ連れてきたのは「身内」として認めているということでしょう。キツい登り坂の墓地はこの後に女将さんが疲れて倒れる前振りか。芸コマ。
「あの人が生きてたらがっかりするだろうね」
亡き夫の墓前にて女将さんは昔を懐かしみ、喜翆荘の現状を嘆く。右も左も判らずに無我夢中で走りながら培ってきた「喜翆荘の精神」は次代へ受け継がれず、またそれを含めた「喜翆荘そのもの」がしがらみとなってしまった。器に囚われて未来を縛るのは決して好ましいことではなく、各々が各々の「まっさらな道」を歩むべき。
対して「まだまだ先はわからない」と言い返し、「しがらみ」を単にお金の話と思い、さらに「喜翆荘がみんなの夢になるかもしれない」と叫ぶ緒花は若々しさに溢れていますね。逆光で叫ぶ緒花の若さが眩しいよ。
疲れから倒れてしまった女将さんは身内にしか話せないであろう本心を緒花に語ります。喜翆荘を閉じるのは最後の親心から、しかし緒花はそんな女将さんを「お年寄りですね」と一斬…せっかくしみじみと語ったのにまるでわかっていない緒花に呆れ、と同時に女将さんは「自分がいつの間にか年寄りになってしまったこと」を実感したのでしょう。そんな孫娘に思わず笑い出してしまう女将さんは確かに「お婆ちゃん」の顔、じつに素敵な笑い顔でした。一方の緒花は女将さんの言葉を理解できなくとも気持ちは伝わったようで「最後までぼんぼります!」と宣言、その言葉に満足そうな女将さんの表情がこれまた良かったです。
そんな祖母&孫娘が喜翆荘へ戻るとエニシングvs組合連中が一触即発の真っ最中でした。祭りの準備に人を出せと迫る組合側を突っぱねるエニシング…さすがにこれには呆れるというか、エニシングはこの地で旅館を続ける気があるのか?と疑ってしまいます。昨日今日仕事を始めたわけでもあるまいし、こういう態度が今後どう影響するか想像つかないのか。これはもう「旅館経営に向かない」というレベルじゃないでしょう。
頑なな態度は従業員たちも同様で、女将さんに促されても動く者は無く、意固地に閉館を進める女将さんへの反発が最悪の形で表面化してしまいました。空気を読めない緒花が空気を読んで準備に向かうも「ダメ」「行っておいで」と板挟み、というか巴さんまでそんな。
エニシング派と女将さん派を分かつ喜翆荘の扉、はたして緒花はこの抗争を丸く収められるのか? そして喜翆荘の明日はどっちだ?
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祖母と孫娘の語らいは可笑しくも暖かい。

まずは前回引きの歩道橋ステージにてドラマチックに再会した孝ちゃんとのあれこれから。公園へ移動しベンチに並ぶ二人を照らす夕陽、ビルの隙間に沈み行く夕陽は都会の象徴であると同時に、その都会の喧噪からぽつんと離れた二人のシーンを強調するスポットライト効果も感じさせる面白い絵面です。以前は無理に取っていたコーンスープの残り粒を今は取らない孝ちゃん、つまり心の片隅に残った「思い」を無理に取ることはないと悟った。例え残ったままでも決して腐らない、それどころか日増しに存在感を増していく。
つまらないと思ったことなど無かった都会の景色。しかしそれは景色の中にいつも緒花がいたから。逆に初めて見た景色さえも緒花さえいれば輝いて見える。第一話での別れ際に無理に取ったはずのコーン粒はしっかり残っていたのです。なーんて空気を読めない緒花ですら丸判りのこの後の展開、「その時」が近付いていることを示すように照明(夕陽)が落とされ、さあいよいよ!と動き始めた遊具を必死に止める緒花…続く言葉を孝ちゃんに言わせてはいけない、その言葉は自分が言わなければいけない。孝ちゃんに飛び付いて口を押さえ、
「わたし孝ちゃんが…孝ちゃんが…孝ちゃんに…孝ちゃんにぼんぼり祭り来てほしい!」
なのに土壇場で言えなくなっちゃう緒花がかわいい。ぼんぼりをイメージさせる街灯を見切らせるフレーミングの妙が憎いね。ぼんぼれ緒花!
つまらないと思っていた景色に孝ちゃんがいるととても綺麗に見えた。その事にもう少し早く気付けば面倒くさいことにならなかったけれど、離れてみて初めて判ることもあるのです。いっぱいいっぱいの緒花が落とす涙はまるでこれまでのモヤモヤを洗い流すように溢れて止まらない。

その頃喜翆荘のフロントでは時間を持て余した仲居二人が先行きの不安を話し、そんな所へ掛かってきた電話に目を丸くする巴さん。まさかこの電話がエニシング暴走の号砲になるとは。
喜翆荘閉館後の身の振り方を考えねばならないのは板場も同様で、とはいえ引く手数多な板前である蓮さん徹さんは既に次の職場が決まっており、しかし未成年の追い回しに仕事は無い。あらら。まあ現実的に考えれば高校在学中の未成年女子をそう気安く連れて行けるわけがないけれど、一人置いてけぼりの民子はショックだろうね。割った皿を拾いながら思わず涙を落とす民子を勘違いして手を握る徹さん、先ほどの緒花&孝ちゃんと似たような絵面なのに状況が180度違う切なさ。
「男一匹、包丁一本。どんな場所でも修行でござんす!」
気まずさ全開の空気を変えようと立ち上がった徹さんが叫んだセリフは「流れ包丁 鉄平」というマンガの名ゼリフらしい。すると民子も立ち上がり、このマンガの影響で板前を目指すようになったと告白…正直言ってしょうもないきっかけだけれど、職業に対する憧れなんて案外こんなものかもしれません。何度も読み返されたであろう年季の入ったコミックスは民子の思い入れを感じさせますね。って、どう見ても「包丁人 味平」じゃないかこれ。「鉄平」の原作が次郎丸ってのは「味平」原作者の牛次郎氏をもじったのか…「鉄平」が「味平」と同時期設定とすればかなり古いマンガだけど次郎丸ってどんだけベテラン、いったい何歳なんだ? ちなみに牛次郎氏は1940年生まれの当年71歳のようです(笑

東京から戻った緒花を待ち構える青鷺。喜翆荘で最後までぼんぼる覚悟の緒花は青鷺の妨害などに負けませぬ。そんな気合を感じたか青鷺も静かに見送り…地元に馴染み、喜翆荘に馴染んだ緒花を青鷺さんは認めている? それはつまり「余所者」だった緒花がいつしか「湯乃鷺の人」になったということ。
さて喜翆荘に戻った緒花は館内(事務室)の異変に何事かと! これは喜翆荘の紹介記事が載った旅行雑誌の影響、青鷺と閑古鳥の鳴き声しか聞こえなかった喜翆荘に予約電話の音が鳴り響き、従業員総出で対応にてんてこ舞いです。異変に気付いて事務室に現れた女将さんはこの記事の執筆者が誰なのかわかっているのだなあ。閉めるつもりの旅館に塩を送られた女将さんの胸中も複雑でしょうね。

ベタ褒めの記事を眺めて盛り上がる従業員たちの傍で目配せの二人。もちろんエニシングもこの記事の執筆者が誰なのかわかっていて、そのエニシングが「どうするのか」を女将さんは黙って見ている。今までいろいろ経営改善に奔走しながら全く効果が無かった自分に比べたった一本の記事で喜翆荘をこれほど盛り上げてしまった「姉さん」への劣等感・嫉妬、だからこそ負けられない男の意地…このワンカットだけで女将さんとエニシングが各々抱える「しがらみ」が見えます。スゲエ。
突然の予約殺到にこれにて商売繁盛→借金帳消し→喜翆荘存続のコンボ成立? と思いきやそう簡単な話ではありません。この異変をしても女将さんは頑なに「喜翆荘はぼんぼり祭りで閉める」と考えを変えません。また蓮さん、徹さん、そして巴さんなどが内定している次の職場に迷惑を掛けられないとも。こんな風に過剰とも思えるほどの「気配り」こそ喜翆荘の本質であって、女将さん以外の全員は残念ながらその事をわかっていない。
次の職場を早々に決めておきながら状況が変われば周囲の迷惑も顧みず「喜翆荘で働きたい」と手のひらを返す。もちろんその気持ち(喜翆荘への愛着)に嘘は無いのだろうけど、そもそもそれほど喜翆荘を愛しているのなら最後の時まで一筋であるべきで、「自分優先」の安全策を選んだ時点で女将さんが拘ってきた「喜翆荘の精神」はもう失われている。エニシングを始めとして従業員たちは自分のエゴだけで動いている。この予約殺到で確かに表面上は賑やかさを取り戻したように見えますが、喜翆荘創業時の賑やかさとは本質がまるで違うのです。
それでも食い下がるエニシングをピシャリと止める女将さんかっこいい! すれ違いどころか話の土俵がまるで違うのでこれ以上の会話は無駄であり、「これ以上の予約を取るんじゃないよ」と念を押してサッサと出て行ってしまいます。このシーンを従業員視点から見たら確かに「横暴で意固地になってる頭が固い婆さん」にしか見えないだろうね(笑
若手代表の三人娘はもちろんそういう視点です。その理不尽感はいつも穏やかな菜子が怒り出すほどのもので、あの小動物が大怪獣へ物申す!の勢いで湯船から立ち上がり、怒りを叫びます。ここはカメラアングルが絶妙すぎて歯軋りが止まらない。ギギギ。

すると風呂場へ現れた大怪獣。菜子の叫びを脱衣所で聞いていただろうに一瞥だけでもの言わず、重厚なBGMに乗り超絶速度で体を洗い終えると東京湾もとい湯船へ迫ってまいりました。ゴジラ襲来か!(笑。その静かな迫力に湯船の隅へ追いやられた三人娘、しかし菜子は勇気を出して立ち上がった!
「ア、アノー、ケサノコトデスケド…」
あはははは! あまりの緊張に声が裏返ってカタコトになっちゃう菜子がかわいい(笑。そんな菜子を完全スルーで湯船を出た女将さんはピタゴラ装置の如く風呂道具を一瞬で片付けて風呂場を後に…女将さんの入浴は手早く体を洗うだけで、しかも入る前より風呂場を綺麗にして出て行く。ここはあくまで「お客様のお風呂」であって従業員が寛ぐ場所ではなく、また入るついでに片付けるのは当たり前のこと。女将さんの歳ならばのんびり湯船に浸かって疲れを取りたいだろうに、その欲求よりも「喜翆荘の人間としての精神」を優先する。風呂場でさえ女将さんは女将さんなのです。若い三人にそれが伝わったかどうか。
「ぼんぼり祭り? それどころじゃない!」
明けて翌日のエニシングは相も変わらず自己中心でした。降って湧いた忙しさから周囲への気配りを忘れ、そしてこういう狭いコミュニティで「祭りの準備に人を出さない」ことが何を意味するのかわかっていない体たらく。さらに「取るな」と言われていた先の予約を受けてしまう暴走…「こうなったらわからせるしかない」とエニシングは語気を荒げるけれど、その言葉が現在進行形で自分自身に掛かっていることを気付いていないのか。裏返しになった「喜翆荘」の文字が現在の状況を雄弁に語っていますね。

女将さんと緒花は亡き爺ちゃんの墓参りへ。緒花をここへ連れてきたのは「身内」として認めているということでしょう。キツい登り坂の墓地はこの後に女将さんが疲れて倒れる前振りか。芸コマ。
「あの人が生きてたらがっかりするだろうね」
亡き夫の墓前にて女将さんは昔を懐かしみ、喜翆荘の現状を嘆く。右も左も判らずに無我夢中で走りながら培ってきた「喜翆荘の精神」は次代へ受け継がれず、またそれを含めた「喜翆荘そのもの」がしがらみとなってしまった。器に囚われて未来を縛るのは決して好ましいことではなく、各々が各々の「まっさらな道」を歩むべき。
対して「まだまだ先はわからない」と言い返し、「しがらみ」を単にお金の話と思い、さらに「喜翆荘がみんなの夢になるかもしれない」と叫ぶ緒花は若々しさに溢れていますね。逆光で叫ぶ緒花の若さが眩しいよ。
疲れから倒れてしまった女将さんは身内にしか話せないであろう本心を緒花に語ります。喜翆荘を閉じるのは最後の親心から、しかし緒花はそんな女将さんを「お年寄りですね」と一斬…せっかくしみじみと語ったのにまるでわかっていない緒花に呆れ、と同時に女将さんは「自分がいつの間にか年寄りになってしまったこと」を実感したのでしょう。そんな孫娘に思わず笑い出してしまう女将さんは確かに「お婆ちゃん」の顔、じつに素敵な笑い顔でした。一方の緒花は女将さんの言葉を理解できなくとも気持ちは伝わったようで「最後までぼんぼります!」と宣言、その言葉に満足そうな女将さんの表情がこれまた良かったです。
そんな祖母&孫娘が喜翆荘へ戻るとエニシングvs組合連中が一触即発の真っ最中でした。祭りの準備に人を出せと迫る組合側を突っぱねるエニシング…さすがにこれには呆れるというか、エニシングはこの地で旅館を続ける気があるのか?と疑ってしまいます。昨日今日仕事を始めたわけでもあるまいし、こういう態度が今後どう影響するか想像つかないのか。これはもう「旅館経営に向かない」というレベルじゃないでしょう。
頑なな態度は従業員たちも同様で、女将さんに促されても動く者は無く、意固地に閉館を進める女将さんへの反発が最悪の形で表面化してしまいました。空気を読めない緒花が空気を読んで準備に向かうも「ダメ」「行っておいで」と板挟み、というか巴さんまでそんな。
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