2012-07-30(Mon)
TARI TARI #05 捨てたり 捨てられなかったり
母との思い出を捨て去る和奏の葛藤。

浅井義之氏の演出も光っていました。

毎度おなじみ幼少アバン。今回はウィーンの番でしたがいつものような幼少時ではなくウィーンを離れる時のヤンとのお別れシーン? 大きな背もたれに隠れたヤンの顔も風体も判らず…てな中で判るのはウィーンがヤンを「守る」役目だったという事。別れ際に「ガンバレッド」を手渡すウィーン、だから第一話で映した部屋にレッドだけ無かったのね。フィギュアを受け取る白くて細い手は女の子?に見えない事もないけれど、病弱な男の子と言われればそうかもなのでまだナントモ。
そんなアバンから引き続いて戦隊寸劇も痛々しいバドミントン応援団へ(笑。何かに追い詰められた末に解放された最終兵器は「優勝!! おめでとう!!」と大書された横断幕、これから一回戦が始まるってタイミングでこれはちょっと照れるかも。お祭り騒ぎの来夏&ウィーンから離れて田中へ話しかけた紗羽は競馬騎手への夢を語ります。高卒後しかも女子で競馬騎手を目指す険しさはおそらく紗羽自身も判っていて、さらに言えばその夢が世間的に異端である事も判っているのでしょう。田中がプロバドミントン選手を目指しているのと同じくらいに。しかしモジモジしてキモい田中(笑)と違って紗羽は大きな胸を張って夢を語り、だから田中は素直に「かっこいいな」と全肯定を返し…その意外な反応に嬉しさを隠せない紗羽がかわいすぎ。これはズッキュンバッキュンドッキュン!?

そしてお祭り騒ぎに巻き込まれる和奏。声も高らかに戦隊ソングを歌う二人は揃いのポーズで「はいっ!」と和奏のマラカスを待ちます。来夏&ウィーンは息が合ってるなあ。しかし和奏は固まったまま。いやいやいや、それ和奏じゃなくても固まるって(笑。その異常なノリに着いていけない和奏はそのまま会場を後に。どうやら前回ラストの例の手紙が和奏のココロに影響しているようです。
坂井宅の土産物屋は始終閑古鳥かと思いきやさすが観光シーズンは大急がしの様子。土産物だけではなくカフェまで営業していたのか。店内外を忙しく駆け回っている所へ帰って来た和奏はニッコリ笑って夕飯準備を申し出て…この表情は3年前の同シーンと良い対比になっていましたね。でもあれほど忙しそうなのだから夕飯準備より店を手伝ってあげればいいのに、とちょっと思ったけれど。土産小物のピンクだ赤だの話は冒頭のウィーン戦隊話に掛かってるのかも?
シーン戻ってバドミントン大会。コートを駆ける田中と場違いすぎるチアダンス?を交互に映す試合描写は妙な臨場感があって面白かった。来夏&紗羽は合唱の練習もせずダンスを合わせていたのか!? 突然入ったチアダンスがあまりにぬるぬる動いて何事かと…そういや創部時の活動内容に「歌や踊り」とあったけど本当に踊るとは(笑。スコアボードによるとかなりの僅差で田中はベストエイト敗退のようで、あと一歩どころかあと数mmの所で全日本大会に届かなかった悔しさはどれほどのものだろう。

大会が終わって会場外で田中を待つも来ず。って事で紗羽が様子を見に行く事になりました。負けず嫌いの紗羽だから田中の今の気持ちが判るのだろうね。ついでに焼きそばパン買ってこい(違)とパシリ扱いの来夏へ向けられた紗羽の視線が厳しすぎてビビる(笑。紗羽様どうかお鎮まりを。会場内でうな垂れる田中を見つけ「泣いてる?」とあえてイジる紗羽、しかし田中は次の試合で負けないためにイメトレ中でした。オトコノコだなあ! ここで会場内外で田中のバドミントンについてあれこれ、やはりいつぞやのアバンや田中宅で見せたように田中は姉ちゃんの背中を追っていたのだなあ。この設定がこの先どう生かされるのかわかりませんが、どうやら姉ちゃんも白浜坂高校出身らしいのでこの線からも話が膨らみそう? というかメインキャラの関係者は全員同校出身なのか。
浜に佇む和奏はサーフボードを豪快にブチ割った志保さんと偶然行き会い、足のケガも痛々しい志保さんをサポートすべくサーフボードの成れの果てを抱えながら二人で沖田宅へ。その道中の会話にて紗羽との仲良し親子っぷりを感じ取った和奏の表情と、微妙に気まずそうな志保さんの表情描写が絶品でした。いちいちセリフ(モノローグ)で説明せず絵でキャラの心境をきちんと感じさせる作りは素晴らしいと思う。最近の作品(特にラノベアニメ)は何でもかんでもセリフで説明しちゃうので浸み入る隙がありません。まあ最近の視聴者層に合わせているのだろうけれども(言葉を選んでいます。
というわけで明らかになったさらなる先輩。紗羽の母ちゃんも白浜坂出身でしかも合唱部だったとか。並んだ制服を見るに当時の合唱部は意外と普通科の子が多かったのだなあ。パッと見たところ若かりし志保さんは後列右から二人目の普通科の子かな。当時の写真のド真ん中にまひるさん&教頭先生、本作全ての登場キャラの中でツートップと言っていいほどかわいいじゃないか(笑。教頭のフルネームは「高倉直子」で、前回の校長との病室シーンで「高倉先生」と呼ばれていたので未だ独身を貫いているのでしょう。

その高倉さんの手に「心の旋律」の譜面。拡大してよくよく見たら以前検証したとおり「まひる」のサインが書いてありました。

その写真から遺影にクロスフェードするとシーンは3年前のまひるさんの葬儀へ。葬儀当日に届いた白浜坂高校の合格通知を見てどよんどMAXの和奏、この紙切れ一枚のために失った物の大きさに今さら気付いて落ち込むばかり。というか多感真っ盛りな中三少女にこの十字架は重すぎる。
ここからは絶妙なカット割りで現在と三年前を交互に映し、生前のまひるさんの様子、そして思春期&受験生のナイーブさからいろんなものがささくれ立ってる和奏とのすれ違いを見事に描いてくれました。閑散な土産物屋で暇そうな父ちゃんへ「晩ご飯作ろうか?」、そしてコーヒー零してシーンチェンジの後「またすぐ退院できるんでしょ?」と…つまりこの時からまひるさんはちょくちょく入院して家を空けていたのでしょう。入院中も退院後もやたら明るいまひるさん。これは天然成分も多分にありそうだけれど、きっと娘に弱った自分を見せたくない親心なのだろうなあ。まひるさんが音楽と和奏をどれほど愛していたか判るシーンでしたね。
でも娘はそんな親心など全く気付かずイラ付くばかり、さらにその一方で父ちゃんのリアクションがいちいち深刻さを想像させて、お約束と判っちゃいても見ていて辛い。入院中のベッドでチラリと見せた書きかけの譜面。親子の似顔絵、「和奏のメロディから」「静かな優しさ」「和奏らしく!」と、これまた和奏への思いが溢れる譜面は後々の最終兵器になりそう。とはいえ音楽科の入試対策中にピアノで遊び始めちゃったらそりゃ怒るだろう。まひるさんノリノリすぎです(笑
「音楽がいつも和奏の傍にいられるように、音楽の事大好きな気持ちを忘れな…」
「もういい! 受験に受からなかったら意味無いでしょ!」
優しく語るまひるさんにピアノの鍵盤蓋をバン!と閉めて立ち去る和奏。これは音楽に対する姿勢の違い以前に、「大好きな気持ち(楽しさ)」と「周囲の評価」がシンクロしている天才音楽家ならではの考え方を一介の音楽科受験生(一般人)が理解できるはず無いということかも。まひるさんにとって音楽とは勉強して身に付ける道具では無くあくまで自然体で「楽しい」もの、ところが受験を控えた和奏は「楽しい」だけではどうにもならないと焦る。楽しいだけで合格できれば苦労はしないよ!と。この辺の感覚差はまひるさんvs教頭先生のアレコレにも繋がっていそう。
閑話休題。そんな理想論を語るのは自分を常に受け止めてくれる人(母親)で、良くない事と判りながらも反発を止められない。どれほど酷い反発をしても絶対に自分を一人にはしないとココロの奥底で信じているからです。その人がある日突然いなくなるなんて想像すらしない。青いな痛いな。でもそれが中学生らしい。でもね。親はいつかいなくなるのです。遅いか早いかだけの違いで。

電子レンジの上で舌を出して伸びているドラ。前カットで映っていたドラが親戚と電話をする父ちゃんに隠され、俯瞰アングルでも伸びている姿を片隅に映してドラの先行きに不安を感じさせます。芸コマな前振りです。そして何やら親戚宅へ手伝いに出掛ける事になった父ちゃん。和奏は「お寿司とっちゃおっかなー」なんて軽口も親子仲の良さが窺えますが、その後暫しの沈黙で和奏が無理に明るく振る舞っている事を感じさせ…例の手紙にもの思う和奏の胸中が滲み出ているのと同時に、まひるさんが居ない食卓の寂しさもじわじわと感じさせる憎さ。
「部屋のピアノ片付けようと思うんだけど」
お母さんとの思い出が詰まっているピアノを片付けたい。その事についていろいろ理由付けていましたが、本心からの言葉じゃないのは宙に向いた視線が語っていますね。普通に考えると「あの手紙」を読んだ後で何故?と思うけれど、読んだからこそ知った母の思いに罪悪感がフルスロットルになってしまって、部屋に佇むピアノを見る度に辛さに身を切られる思いなのかも。だからその痛みから逃げるためピアノや音楽関係の品を全て片付けてしまいたい。
そして翌朝ドラは姿を消しました。和奏が呼んでも呼んでも姿を見せず、家猫がいなくなるってのは…そういう事なのでしょう。
というわけで和奏の部屋に積まれていた段ボール箱・空っぽの棚は引っ越し云々では全くなく、まひるさん関連の品々を片付けたせいでした。「要らないもの」と貼られた箱が切ない。そして部屋を出がけにふと気付いた例のマスコット。まひるさん謹製の手作りマスコットは…くじらのつもりだったのか! 金魚と言われて膨れるまひるさんかわいい! 銀河ネットワークで以下略。これを貰った当時の幼い和奏は素直な気持ちでまひるさんと触れ合い、きっと音楽に対する感覚も「楽しい」以外に無かった頃。でももうあの頃には戻れない。例のマスコットは和奏にとってまひるさんを思い出すスイッチ、すなわち罪悪感のスイッチになってしまったのか。

さて補習に向かう表情も元気が無く、補習中のボーッとした表情や黒板までの距離を強調した教室のカット・真っ白なノートなど和奏のココロここに在らず状態を演出していました。補習が終わって声を掛けてきたウィーンに気付かずボーッとしたまま、合唱部の練習というか田中のベストエイト祝いに誘われても断ってサッサと出て行ってしまいます。
その後来夏&紗羽に誘われても逃げるように帰ってしまう和奏。ケーキの誘惑にも負けない和奏の意思は固い? 苺嫌いなのかな? とピント外れな心配をする来夏に一喝の紗羽がいい味で、さらに
「もしかして私、ウザがられてる!?」
「それはちょっとあるかもねー」
などと容赦ありません(笑。紗羽の言葉に小っちゃい体全身でシュンとしちゃう来夏もかわいかった。ほんとこの二人の会話はいい味出しすぎ、作られた会話ではなくごくごく自然な会話っぽいやり取りは毎度感心です。間と演技が絶妙なのだなあ。
強まる風に起きた波と追いかけっこしながら自転車を飛ばして帰宅した和奏。こういう描写もいちいち芸コマです。自室に上がった和奏はすっかり片付いてしまった様子に立ち尽くし…焼けた畳の跡が母のピアノと過ごした年月を感じさせ、母との思い出の品が全て無くなってしまった部屋を呆然と眺めるカットも辛い辛い。本当にそれでいいの?

朝入れておいたエサも手つかずのまま、つまりドラは本当にいなくなってしまったようです。和奏は家の内外を探し回るも見つからず、やがて降り出した雨にまたしても三年前の記憶がフラッシュバック。受験当日のカッパ騒動から出掛けのやり取りはこれまたいい感じに中学生で、あれこれ気に掛けてくれる両親に顔も向けずに出掛ける準備、「行ってらっしゃい、がんばってね!」の声にも一瞥くれて出て行ってしまいます。ああもう!
現在のドラ探しと中学生和奏のカットを巧みに繋げた演出も効果的でした。いなくなった猫を探す今の和奏、いなくなってしまう人を置き去りにする中学生和奏。きっと今の和奏はあの時に何もしなかった後悔に追われ、土砂降りにも関わらず必死にドラを探していたのかもしれない。傘も差さずに追いかけてきたまひるさんは学業成就の御守りを手渡し、しかし和奏は冷たくあしらってそのまま受験へ。そんな娘を黙って見送るまひるさん。彩度が落とされた雨の風景、少しずつズームアウトしていく映像はまさに今にも消え入りそう。
結局ドラは見つからないまま家に戻った和奏。濡れた体を拭きながら例の手紙を見つめ、その後暗い部屋でTVを眺めても頭に響く母の声・母の思い。

これからは娘と、和奏と一緒に歩きたいの
その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も
そんな歌が和奏と一緒なら作れる気がする
私にとって歌は、愛を伝える言葉だから
そして和奏は私に、大切な事を教えてくれたから
和奏に伝えたい思いが歌になって、それを一緒に歌う事ができたら
そして和奏の歌を聴く事ができたら
私の人生は百点満点です
例の手紙の内容をまひるさんが朗読しながら映される受験当日の様子。セリフが一切無く、映像だけで見せる一連シーンは、緊迫した画面とまひるの優しい思いが見事に溶け合い、和奏の傷の深さをまざまざと感じさせるものでした。
面接は教頭先生も参加していたのですね。「まひるの娘」と判りながらの面接はどんな思いだったのだろう。それはそうと家での様子から一変してハキハキしたイイ子ちゃんの和奏がこれまた中学生っぽくてよろしい。てな所へ駆け込んできた産休先生…まだ妊婦ではありません。駆け付けた病室にて対面した母の姿に呆然の和奏、あまりの事を信じられず必死に揺り起こそうとするカットも辛い。しかしまひるさんは何も答えず、おそらくこのまま亡くなってしまったのでしょう。そして後に知った母の思い。これほど深い愛情に包まれていたのに、それを当たり前のように受け、さんざん悲しい思いをさせたまま永遠のお別れ。
「もう一緒に歌えない…ごめんなさい」
どうあっても母の望みは叶わない。一緒に歌えないのだからピアノもCDも、音楽を続ける事も意味が無い。先の罪悪感に加えて、これは和奏が完全に音楽から離れる意思を固めるに十分な理由かもしれません。例によってハッキリ言えなかったけれど、今回は合唱部メンバーと距離を置いて退部を匂わせていましたし、このままだと音楽完全撤退は近い? もちろんまひるさんは和奏が音楽を止める事など望むわけがなく、和奏自身も一連の罪悪感さえ解消されれば…だって「音楽は辞められない」のだから。
↓記事が役立ったら一票どうぞ。

浅井義之氏の演出も光っていました。

毎度おなじみ幼少アバン。今回はウィーンの番でしたがいつものような幼少時ではなくウィーンを離れる時のヤンとのお別れシーン? 大きな背もたれに隠れたヤンの顔も風体も判らず…てな中で判るのはウィーンがヤンを「守る」役目だったという事。別れ際に「ガンバレッド」を手渡すウィーン、だから第一話で映した部屋にレッドだけ無かったのね。フィギュアを受け取る白くて細い手は女の子?に見えない事もないけれど、病弱な男の子と言われればそうかもなのでまだナントモ。
そんなアバンから引き続いて戦隊寸劇も痛々しいバドミントン応援団へ(笑。何かに追い詰められた末に解放された最終兵器は「優勝!! おめでとう!!」と大書された横断幕、これから一回戦が始まるってタイミングでこれはちょっと照れるかも。お祭り騒ぎの来夏&ウィーンから離れて田中へ話しかけた紗羽は競馬騎手への夢を語ります。高卒後しかも女子で競馬騎手を目指す険しさはおそらく紗羽自身も判っていて、さらに言えばその夢が世間的に異端である事も判っているのでしょう。田中がプロバドミントン選手を目指しているのと同じくらいに。しかしモジモジしてキモい田中(笑)と違って紗羽は大きな胸を張って夢を語り、だから田中は素直に「かっこいいな」と全肯定を返し…その意外な反応に嬉しさを隠せない紗羽がかわいすぎ。これはズッキュンバッキュンドッキュン!?

そしてお祭り騒ぎに巻き込まれる和奏。声も高らかに戦隊ソングを歌う二人は揃いのポーズで「はいっ!」と和奏のマラカスを待ちます。来夏&ウィーンは息が合ってるなあ。しかし和奏は固まったまま。いやいやいや、それ和奏じゃなくても固まるって(笑。その異常なノリに着いていけない和奏はそのまま会場を後に。どうやら前回ラストの例の手紙が和奏のココロに影響しているようです。
坂井宅の土産物屋は始終閑古鳥かと思いきやさすが観光シーズンは大急がしの様子。土産物だけではなくカフェまで営業していたのか。店内外を忙しく駆け回っている所へ帰って来た和奏はニッコリ笑って夕飯準備を申し出て…この表情は3年前の同シーンと良い対比になっていましたね。でもあれほど忙しそうなのだから夕飯準備より店を手伝ってあげればいいのに、とちょっと思ったけれど。土産小物のピンクだ赤だの話は冒頭のウィーン戦隊話に掛かってるのかも?
シーン戻ってバドミントン大会。コートを駆ける田中と場違いすぎるチアダンス?を交互に映す試合描写は妙な臨場感があって面白かった。来夏&紗羽は合唱の練習もせずダンスを合わせていたのか!? 突然入ったチアダンスがあまりにぬるぬる動いて何事かと…そういや創部時の活動内容に「歌や踊り」とあったけど本当に踊るとは(笑。スコアボードによるとかなりの僅差で田中はベストエイト敗退のようで、あと一歩どころかあと数mmの所で全日本大会に届かなかった悔しさはどれほどのものだろう。

大会が終わって会場外で田中を待つも来ず。って事で紗羽が様子を見に行く事になりました。負けず嫌いの紗羽だから田中の今の気持ちが判るのだろうね。ついでに焼きそばパン買ってこい(違)とパシリ扱いの来夏へ向けられた紗羽の視線が厳しすぎてビビる(笑。紗羽様どうかお鎮まりを。会場内でうな垂れる田中を見つけ「泣いてる?」とあえてイジる紗羽、しかし田中は次の試合で負けないためにイメトレ中でした。オトコノコだなあ! ここで会場内外で田中のバドミントンについてあれこれ、やはりいつぞやのアバンや田中宅で見せたように田中は姉ちゃんの背中を追っていたのだなあ。この設定がこの先どう生かされるのかわかりませんが、どうやら姉ちゃんも白浜坂高校出身らしいのでこの線からも話が膨らみそう? というかメインキャラの関係者は全員同校出身なのか。
浜に佇む和奏はサーフボードを豪快にブチ割った志保さんと偶然行き会い、足のケガも痛々しい志保さんをサポートすべくサーフボードの成れの果てを抱えながら二人で沖田宅へ。その道中の会話にて紗羽との仲良し親子っぷりを感じ取った和奏の表情と、微妙に気まずそうな志保さんの表情描写が絶品でした。いちいちセリフ(モノローグ)で説明せず絵でキャラの心境をきちんと感じさせる作りは素晴らしいと思う。最近の作品(特にラノベアニメ)は何でもかんでもセリフで説明しちゃうので浸み入る隙がありません。まあ最近の視聴者層に合わせているのだろうけれども(言葉を選んでいます。
というわけで明らかになったさらなる先輩。紗羽の母ちゃんも白浜坂出身でしかも合唱部だったとか。並んだ制服を見るに当時の合唱部は意外と普通科の子が多かったのだなあ。パッと見たところ若かりし志保さんは後列右から二人目の普通科の子かな。当時の写真のド真ん中にまひるさん&教頭先生、本作全ての登場キャラの中でツートップと言っていいほどかわいいじゃないか(笑。教頭のフルネームは「高倉直子」で、前回の校長との病室シーンで「高倉先生」と呼ばれていたので未だ独身を貫いているのでしょう。

その高倉さんの手に「心の旋律」の譜面。拡大してよくよく見たら以前検証したとおり「まひる」のサインが書いてありました。

その写真から遺影にクロスフェードするとシーンは3年前のまひるさんの葬儀へ。葬儀当日に届いた白浜坂高校の合格通知を見てどよんどMAXの和奏、この紙切れ一枚のために失った物の大きさに今さら気付いて落ち込むばかり。というか多感真っ盛りな中三少女にこの十字架は重すぎる。
ここからは絶妙なカット割りで現在と三年前を交互に映し、生前のまひるさんの様子、そして思春期&受験生のナイーブさからいろんなものがささくれ立ってる和奏とのすれ違いを見事に描いてくれました。閑散な土産物屋で暇そうな父ちゃんへ「晩ご飯作ろうか?」、そしてコーヒー零してシーンチェンジの後「またすぐ退院できるんでしょ?」と…つまりこの時からまひるさんはちょくちょく入院して家を空けていたのでしょう。入院中も退院後もやたら明るいまひるさん。これは天然成分も多分にありそうだけれど、きっと娘に弱った自分を見せたくない親心なのだろうなあ。まひるさんが音楽と和奏をどれほど愛していたか判るシーンでしたね。
でも娘はそんな親心など全く気付かずイラ付くばかり、さらにその一方で父ちゃんのリアクションがいちいち深刻さを想像させて、お約束と判っちゃいても見ていて辛い。入院中のベッドでチラリと見せた書きかけの譜面。親子の似顔絵、「和奏のメロディから」「静かな優しさ」「和奏らしく!」と、これまた和奏への思いが溢れる譜面は後々の最終兵器になりそう。とはいえ音楽科の入試対策中にピアノで遊び始めちゃったらそりゃ怒るだろう。まひるさんノリノリすぎです(笑
「音楽がいつも和奏の傍にいられるように、音楽の事大好きな気持ちを忘れな…」
「もういい! 受験に受からなかったら意味無いでしょ!」
優しく語るまひるさんにピアノの鍵盤蓋をバン!と閉めて立ち去る和奏。これは音楽に対する姿勢の違い以前に、「大好きな気持ち(楽しさ)」と「周囲の評価」がシンクロしている天才音楽家ならではの考え方を一介の音楽科受験生(一般人)が理解できるはず無いということかも。まひるさんにとって音楽とは勉強して身に付ける道具では無くあくまで自然体で「楽しい」もの、ところが受験を控えた和奏は「楽しい」だけではどうにもならないと焦る。楽しいだけで合格できれば苦労はしないよ!と。この辺の感覚差はまひるさんvs教頭先生のアレコレにも繋がっていそう。
閑話休題。そんな理想論を語るのは自分を常に受け止めてくれる人(母親)で、良くない事と判りながらも反発を止められない。どれほど酷い反発をしても絶対に自分を一人にはしないとココロの奥底で信じているからです。その人がある日突然いなくなるなんて想像すらしない。青いな痛いな。でもそれが中学生らしい。でもね。親はいつかいなくなるのです。遅いか早いかだけの違いで。

電子レンジの上で舌を出して伸びているドラ。前カットで映っていたドラが親戚と電話をする父ちゃんに隠され、俯瞰アングルでも伸びている姿を片隅に映してドラの先行きに不安を感じさせます。芸コマな前振りです。そして何やら親戚宅へ手伝いに出掛ける事になった父ちゃん。和奏は「お寿司とっちゃおっかなー」なんて軽口も親子仲の良さが窺えますが、その後暫しの沈黙で和奏が無理に明るく振る舞っている事を感じさせ…例の手紙にもの思う和奏の胸中が滲み出ているのと同時に、まひるさんが居ない食卓の寂しさもじわじわと感じさせる憎さ。
「部屋のピアノ片付けようと思うんだけど」
お母さんとの思い出が詰まっているピアノを片付けたい。その事についていろいろ理由付けていましたが、本心からの言葉じゃないのは宙に向いた視線が語っていますね。普通に考えると「あの手紙」を読んだ後で何故?と思うけれど、読んだからこそ知った母の思いに罪悪感がフルスロットルになってしまって、部屋に佇むピアノを見る度に辛さに身を切られる思いなのかも。だからその痛みから逃げるためピアノや音楽関係の品を全て片付けてしまいたい。
そして翌朝ドラは姿を消しました。和奏が呼んでも呼んでも姿を見せず、家猫がいなくなるってのは…そういう事なのでしょう。
というわけで和奏の部屋に積まれていた段ボール箱・空っぽの棚は引っ越し云々では全くなく、まひるさん関連の品々を片付けたせいでした。「要らないもの」と貼られた箱が切ない。そして部屋を出がけにふと気付いた例のマスコット。まひるさん謹製の手作りマスコットは…くじらのつもりだったのか! 金魚と言われて膨れるまひるさんかわいい! 銀河ネットワークで以下略。これを貰った当時の幼い和奏は素直な気持ちでまひるさんと触れ合い、きっと音楽に対する感覚も「楽しい」以外に無かった頃。でももうあの頃には戻れない。例のマスコットは和奏にとってまひるさんを思い出すスイッチ、すなわち罪悪感のスイッチになってしまったのか。

さて補習に向かう表情も元気が無く、補習中のボーッとした表情や黒板までの距離を強調した教室のカット・真っ白なノートなど和奏のココロここに在らず状態を演出していました。補習が終わって声を掛けてきたウィーンに気付かずボーッとしたまま、合唱部の練習というか田中のベストエイト祝いに誘われても断ってサッサと出て行ってしまいます。
その後来夏&紗羽に誘われても逃げるように帰ってしまう和奏。ケーキの誘惑にも負けない和奏の意思は固い? 苺嫌いなのかな? とピント外れな心配をする来夏に一喝の紗羽がいい味で、さらに
「もしかして私、ウザがられてる!?」
「それはちょっとあるかもねー」
などと容赦ありません(笑。紗羽の言葉に小っちゃい体全身でシュンとしちゃう来夏もかわいかった。ほんとこの二人の会話はいい味出しすぎ、作られた会話ではなくごくごく自然な会話っぽいやり取りは毎度感心です。間と演技が絶妙なのだなあ。
強まる風に起きた波と追いかけっこしながら自転車を飛ばして帰宅した和奏。こういう描写もいちいち芸コマです。自室に上がった和奏はすっかり片付いてしまった様子に立ち尽くし…焼けた畳の跡が母のピアノと過ごした年月を感じさせ、母との思い出の品が全て無くなってしまった部屋を呆然と眺めるカットも辛い辛い。本当にそれでいいの?

朝入れておいたエサも手つかずのまま、つまりドラは本当にいなくなってしまったようです。和奏は家の内外を探し回るも見つからず、やがて降り出した雨にまたしても三年前の記憶がフラッシュバック。受験当日のカッパ騒動から出掛けのやり取りはこれまたいい感じに中学生で、あれこれ気に掛けてくれる両親に顔も向けずに出掛ける準備、「行ってらっしゃい、がんばってね!」の声にも一瞥くれて出て行ってしまいます。ああもう!
現在のドラ探しと中学生和奏のカットを巧みに繋げた演出も効果的でした。いなくなった猫を探す今の和奏、いなくなってしまう人を置き去りにする中学生和奏。きっと今の和奏はあの時に何もしなかった後悔に追われ、土砂降りにも関わらず必死にドラを探していたのかもしれない。傘も差さずに追いかけてきたまひるさんは学業成就の御守りを手渡し、しかし和奏は冷たくあしらってそのまま受験へ。そんな娘を黙って見送るまひるさん。彩度が落とされた雨の風景、少しずつズームアウトしていく映像はまさに今にも消え入りそう。
結局ドラは見つからないまま家に戻った和奏。濡れた体を拭きながら例の手紙を見つめ、その後暗い部屋でTVを眺めても頭に響く母の声・母の思い。

これからは娘と、和奏と一緒に歩きたいの
その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も
そんな歌が和奏と一緒なら作れる気がする
私にとって歌は、愛を伝える言葉だから
そして和奏は私に、大切な事を教えてくれたから
和奏に伝えたい思いが歌になって、それを一緒に歌う事ができたら
そして和奏の歌を聴く事ができたら
私の人生は百点満点です
例の手紙の内容をまひるさんが朗読しながら映される受験当日の様子。セリフが一切無く、映像だけで見せる一連シーンは、緊迫した画面とまひるの優しい思いが見事に溶け合い、和奏の傷の深さをまざまざと感じさせるものでした。
面接は教頭先生も参加していたのですね。「まひるの娘」と判りながらの面接はどんな思いだったのだろう。それはそうと家での様子から一変してハキハキしたイイ子ちゃんの和奏がこれまた中学生っぽくてよろしい。てな所へ駆け込んできた産休先生…まだ妊婦ではありません。駆け付けた病室にて対面した母の姿に呆然の和奏、あまりの事を信じられず必死に揺り起こそうとするカットも辛い。しかしまひるさんは何も答えず、おそらくこのまま亡くなってしまったのでしょう。そして後に知った母の思い。これほど深い愛情に包まれていたのに、それを当たり前のように受け、さんざん悲しい思いをさせたまま永遠のお別れ。
「もう一緒に歌えない…ごめんなさい」
どうあっても母の望みは叶わない。一緒に歌えないのだからピアノもCDも、音楽を続ける事も意味が無い。先の罪悪感に加えて、これは和奏が完全に音楽から離れる意思を固めるに十分な理由かもしれません。例によってハッキリ言えなかったけれど、今回は合唱部メンバーと距離を置いて退部を匂わせていましたし、このままだと音楽完全撤退は近い? もちろんまひるさんは和奏が音楽を止める事など望むわけがなく、和奏自身も一連の罪悪感さえ解消されれば…だって「音楽は辞められない」のだから。
- 関連記事
-
- TARI TARI #07 空回ったり 見失ったり
- TARI TARI #06 笑ったり 想ったり
- TARI TARI #05 捨てたり 捨てられなかったり
- TARI TARI #04 怒ったり 踊ったり
- TARI TARI #03 振ったり 出会ったり
スポンサーサイト
↓記事が役立ったら一票どうぞ。
