2012-09-10(Mon)
TARI TARI #11 満ちたり 欠けたり
シロサイへ向けて盛り上がる合唱部。

美女たちと蛙(仮)の運命や如何に!?

今回のアバンは朝食準備をしながら曲を浮かべて譜面書き書きの和奏から。レタスを千切りながら鼻歌を浮かべ、サッと振り返って指を振りながら曲を紡ぐ表情はとても楽しそう。その様子や仕草は生前のまひるさんに生き写しで…そんな和奏を見た父ちゃんの表情が早くも私の涙腺を刺激しやがります。
そして始まったAパートはいつの間にか別の番組が始まっていました(笑。鬱蒼とした山森に囲まれたいかにも異世界な崖っぷちにて交わされる女剣士(?)の会話、そこへ弓を携えたビキニアーマーが馬に乗って登場…唐突に始まったこの西洋流鏑馬映像(違)は来夏の構想によるシロサイでの合唱部演し物「美女たちと蛙(仮)」のイメージ映像でした。いきなり何事かと。

引き続き「美女たち(略」のイメージ映像。サブレから降りる紗羽をあえて後から映すアングルは気が利きすぎ(笑。それにしても紗羽のコスチュームの肌色比率ったら…ホントにこのコスでステージに立ったら客が殺到しそう、というか教頭先生が卒倒しそうです。タイトルどおり美女三人の優遇に比べて野郎二人の扱いも笑えます。来夏の男子に対する意識が表れてる?
なーんて壮大な構想をドヤ顔で話す来夏かわいい。しかし実際に制作するとなると実現ははなかなか厳しく…そもそもあの大道具を田中一人で作れってのか!(笑。和奏の一斬にて手のひら返した紗羽が田中のツッコミに台本ビターン!の表情も良し。

曲作りの重責を髪をくるくるして紛らわせる和奏もかわいかった。こういうちょっとした表情や仕草の描写が細かいんだよね。絵が苦手らしく大道具係に及び腰の田中は迫る来夏に迫力負け。前回の和奏イライラシーンもそうでしたが、女子に対する賢い(?)立ち回りは姉持ちの悲しき習性だろうか。弟が姉に敵わないって事は来夏の弟くんで実証されてますし(笑。そんな中で常にマイペース、常に直球勝負のウィーンは来夏の手にも負えません。迫力で押してた来夏が逆に押される構図には笑った。
てなドタバタの傍で部室を抜け出して闇取引の女子二名。振り付けの構想用に制作途中の曲を手渡す和奏…CD-Rで渡す辺り今どきだなあ。ディスクに書かれている曲名は「radiant melody (仮)」、直訳すれば「輝く旋律」か「光の旋律」か。「アイドントマネー」とか言ってた子が賢くなったものです。何話も続いた補習授業は無駄じゃなかった!
キャッキャウフフと盛り上がりながら話題の中心は来夏の事。この二人を繋いだのは紛れもなく来夏であり、良くも悪くも真っ直ぐな来夏によって二人は救われ、成長し、掛け替えのない絆も得た。暴走したり空回ったりしながらも合唱部の中心は来夏なんだよね。てな会話から噂の当人をパッと映すカットも気が利いてます。

シロサイ準備のため測量を始めた生徒会の面々。ミニスカ女子高生が巻き尺を転がすカットはなかなか眼福でありました(そういう所ばかり見る。それはそうと側で工事関係者らしきおっさんたちを見つけた弟くん、生徒会長に訊いても詳細は判らず…どうやら理事長プロジェクトについては生徒会にすら伝えられていなかったようで、これから起きる惨事を知らぬまま準備を進める生徒たちが切ない。
作曲、振り付け、大道具、小道具と自宅にて準備を進めるみなさんの様子をパッパと映し、しんがりの部長様は例によってシャチぐるみを蹴飛ばしながら思案中。そりゃもうナマの方が良いに決まってます! というわけで上野さんへ伴奏をお願いする前振りをさりげなく。
「もう二度と絵描かないで」
明けて翌日の部室にて男子二人が成果を発表。ここでウィーンの小道具ミニチュアの出来を一同絶賛し、次の田中への期待値を高めて突き落とす演出が憎い(笑。苦手を乗り越え田中なりに一生懸命描いてそれなりの自信があったイメージ画でしたが、どうやらそれは視聴者にお見せできないレベルだったようです。というかあえて視聴者に見せないのがこれまた憎い。絵を見た三人のリアクションから田中の画力を無限に想像できますもの。
突き落とされた田中は美術室を通り掛かって一案。シロサイ準備に追われる美術部部長にカキワリの下絵を依頼するも無下に却下され、ここで止めときゃいいのに「小学生みたいな絵で十分」とか…田中としては来夏に言われたマンマの事を言ったのだろうけど美術部部長にその言い草は無いよねえ。合唱部女子にも再三言われていますが、田中はもう少しデリカシーを学んだ方がよろしい(笑
ちなみにこのメガネの美術部部長さんは「花咲くいろは」19-20話で登場した水野さんのそっくりさん(笑)でした。いや名字は同じ「水野」で中の人(寿 美菜子さん)も同じという、両作ファンにはちょっとニヤマリな仕込みでした。美術部を追い出された田中は窓にもたれて溜息、すると隣で校長先生が溜息を吐いていました。何という悲哀のシンクロ。二人ともいい感じに背中で人生を語っています。
「沖田の写真と交換な」
捨てる神あれば拾う神あり。という表現が適当かどうか判りませんが、もはや打つ手が無い田中を惑わす美術部男子の甘言ががが! しかし世の中物事には対価が必要で、カキワリを描いてやる代わりに紗羽の写真をくれとか。まああれだけ美人でスタイル良くて性格もサッパリしてりゃ健康な高校生男子が放っとくはずがありません。いやこの男子はルックスしか見てない?
美術部男子の申し出に戸惑いながら部室に向かう田中。どうするどうする? すると田中は音楽室で一人振り付けを考えている紗羽を見つけるとコッソリとカメラを向けるのでした。極端な話が「自分の不出来の穴埋めのために紗羽を売る」ようなものなので正面からは頼めず、また依頼者の使用目的(笑)を考えればますます頼めないし、仮に頼んでも「クズ!」の連打を浴びて再起不能に陥りそう。

音楽室に一人佇む紗羽のカットはいかにも「覗き見」風のアングルが田中の罪悪感を想像させます。ここのダンスシーンは紗羽の真剣な表情としなやかな肢体がじつに眩しかった。静かな音楽室で踊る紗羽は神秘的ですらあります。その美しさに盗撮するのを忘れて思わず見とれてしまう田中…これまで近すぎて判らなかった紗羽の美しさに気付いた瞬間か(ベタな言い方
バッと振り返ってからのバク転シーンはスローのタイミングとアングル取り・カット割りの妙で躍動感増し増し、思わぬタイミングでスカートの中を見てしまった田中のリアクションも良かったです。この表情が衝撃度を物語っていますね(笑

理事長プロジェクトを知らずにシロサイの準備を進める生徒たち。上でも書いたけど事の成り行きを知った後でこのシーンを見るとじつに切ないです。準備風景からカメラが引いて学校全景が映るとクロスフェードで建築模型に変化し、ついにプロジェクトの全貌が明らかにされました。このシーンは生徒会のシロサイ図面が実際の風景に移り変わるカットと対になってるのだね。芸コマ。
というわけでここまで引っ張った理事長の謎プロジェクトの正体は、まあ学科統廃合くらいだろう?という私の予想を大きく上回るまさかの廃校展開でした。少子化云々の説明はさもありなん、学校経営よりも高所得退職者向けの高級マンションの方が儲かる、ってのも時流を映したシビアなシナリオです。見慣れた校舎がマンション模型に覆い被されるカットは喪失感・理事長の無慈悲さを強調している感じ。なるほどこんな無慈悲な計画では教頭先生の電池が切れるのも無理はありません。模型を前に深い溜息の校長先生も辛いトコです。この段階になるまで生徒はおろか教師たちにも黙っていたヘタレっちゃヘタレですが、きっと彼は彼なりにこの学校を愛していて、その思い故に誰にも言い出せず一人で抱えてしまったとも思えます。上から下から中間管理職は辛い。
まあ現実的に考えるとこんな暴挙がまかり通るか?と問われれば少々眉唾なのだけれど…アニメの演出としてはギリギリセーフかな。でもそれならば相応の前振り(空き教室が目立つとか、昇降口の下駄箱が一部閉鎖されてるとか)が有れば説得力を増したかも。部室を声楽部に占領されたエピソード辺りでそういう描写も入れられたような。逆に言えばそういう描写が無かった事で生徒数減少云々が「理事長の詭弁」である根拠にもなり得るか。
ともあれそんな事とは露知らない来夏は音楽劇の伴奏を上野さんに頼むべく待ち伏せ。ほどなく教室から出てきた上野さんに声を掛けるといきなり火花が!…振り返った声楽部部長に反応した俯瞰の距離感は来夏vs部長の距離を感じさせますね。一方いきなり噛み付いてきた部長を完全スルーして上野さんへ話しかける来夏のアクションは上野さんとの親密さを感じさせ、アクション自体も小気味よくて気持ち良かった。ほんとこういう描写が絶妙よね。

「馬鹿じゃない!」
それはそうと来夏が小っさすぎてちょっと笑った。これじゃ小学生だよ(笑。上野さんとの会話中、部長にチクチク噛み付かれようが睨むだけでスルーを決め込んでいた来夏でしたが、和奏の作曲を馬鹿にされた瞬間スイッチが入った。熱いな! 教頭先生に頼り切りの姿勢を指摘されると何も言い返せない部長は自分でも判っているのかも。現に教頭先生がいない部室はサル山状態で…これは部長の人望の無さが突き付けられたようで少々辛いシーンでもありました。
緊急職員会議にてようやく廃校の件を話し始めた校長先生。その空気を察した教頭先生が席を立って出て行ったのは「現実」を認めたくないからでしょう。渡り廊下で落ち込みMAXの教頭先生が見たまひるさんの幻、きっとなおちゃんを見つける度にこんな風に手を振っていたのだろうなあ。限りなくどよんどな教頭先生を「なお、がんばれ!」と応援しているようにも見えます。
立ち止まっていた教頭先生はまひるさんの幻を見ると力無い足取りながら音楽室へ向かい、そして生徒たちの顔を一通り眺めると辛い報告を…来夏何やってんだ!(笑。あからさまにバレバレなのに何も言わない教頭先生の辛すぎる胸中お察しします。
というわけで思わぬ所で廃校の件を知ってしまった来夏。ほんと見せ方がいちいち凝ってるよなあ。当然ながら遅かれ早かれこの件を知るわけだけど、普通に教室や貼り紙や伝聞で聞くような描写ではこの衝撃感は出ないでしょう。モロバレカニ歩きのユーモラスさからの落差も効いて、来夏が知った瞬間の衝撃が見事に伝わってくる演出でした。

ここから淡々と時間だけが流れていく描写も凄かった。参加者が押し黙っている説明回、シロサイの中止を伝える生徒会もお通夜のようです。やがて校内の工事が始まり、たくさんの生徒たちで賑やかだった学校は次第に重機に占領されていく。賑やかに準備をしていたシロサイ資材はシートが被されたまま生徒の姿も消え、楽しげに貼られていたポスターには中止のお知らせが貼られ、完成した小道具の出番はもう無い。何という切なさ、やり切れなさ。

紗羽は一人弓道場で弓を引き、田中は一人でバドミントンの練習を黙々と続け、ウィーンは一人でサンドイッチを食べ、来夏は一人で鼻歌を歌っている。シロサイに向けてあれほど盛り上がっていた仲間たちは合唱部ができる前の場所に戻ってしまった。みなさん一様に感情が抜け落ちた表情なのが見ていて辛い辛い。階段を降りてきた来夏と紗羽が出会って立ち話、そこへ田中とウィーンが加わって久しぶりにメンバーが揃っても気の抜けた会話を続けるばかりで、お互い「合唱部」や「シロサイ」についてあえて触れないように気遣ってるみたい?
「できたよ、歌」
そんな所に現れた和奏。廊下の奥に現れた影はやがて近付き、四人に気付くと笑顔で駆け寄り書き上げた楽譜を見せ…
『radiant molody』
作詞 作曲
坂井まひる、和奏
楽譜に書かれたこの連名を見た瞬間に涙が溢れて止まりませんでした。他の四人が不本意ながらも全て諦めていた間、和奏だけは諦めず作曲を続けていた。和奏にとって「合唱部」「シロサイ」は終わっていなかったのです。作曲自体はもちろんまひるさんとの約束でもあるのだけれど、今の和奏にとっては「みんなで歌う」事も同じくらい大切な約束で、きっとその思いも含めて曲を作っていったんだと思う。完成した譜面を誇らしげに掲げ「みんなで歌いたい!」と続ける和奏、その勢いに押されながら少しずつ輝きを取り戻していく四人の表情変化も良かった。
さてこれにて残り二話。まだまだ課題は山積みですが、もはや神がかっているとしか思えない橋本監督の手腕を持ってすればきっと綺麗にまとめてくれるでしょう。ここからの逆転劇の鍵になりそうな人物はヤンを含めたウィーンのバックか、それとも第二話のスイカおばさん(笑)か、それとも他に隠し球があるのか。教頭先生のアレコレを含めて残り二話が楽しみであり寂しくもあり。
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美女たちと蛙(仮)の運命や如何に!?

今回のアバンは朝食準備をしながら曲を浮かべて譜面書き書きの和奏から。レタスを千切りながら鼻歌を浮かべ、サッと振り返って指を振りながら曲を紡ぐ表情はとても楽しそう。その様子や仕草は生前のまひるさんに生き写しで…そんな和奏を見た父ちゃんの表情が早くも私の涙腺を刺激しやがります。
そして始まったAパートはいつの間にか別の番組が始まっていました(笑。鬱蒼とした山森に囲まれたいかにも異世界な崖っぷちにて交わされる女剣士(?)の会話、そこへ弓を携えたビキニアーマーが馬に乗って登場…唐突に始まったこの西洋流鏑馬映像(違)は来夏の構想によるシロサイでの合唱部演し物「美女たちと蛙(仮)」のイメージ映像でした。いきなり何事かと。

引き続き「美女たち(略」のイメージ映像。サブレから降りる紗羽をあえて後から映すアングルは気が利きすぎ(笑。それにしても紗羽のコスチュームの肌色比率ったら…ホントにこのコスでステージに立ったら客が殺到しそう、というか教頭先生が卒倒しそうです。タイトルどおり美女三人の優遇に比べて野郎二人の扱いも笑えます。来夏の男子に対する意識が表れてる?
なーんて壮大な構想をドヤ顔で話す来夏かわいい。しかし実際に制作するとなると実現ははなかなか厳しく…そもそもあの大道具を田中一人で作れってのか!(笑。和奏の一斬にて手のひら返した紗羽が田中のツッコミに台本ビターン!の表情も良し。

曲作りの重責を髪をくるくるして紛らわせる和奏もかわいかった。こういうちょっとした表情や仕草の描写が細かいんだよね。絵が苦手らしく大道具係に及び腰の田中は迫る来夏に迫力負け。前回の和奏イライラシーンもそうでしたが、女子に対する賢い(?)立ち回りは姉持ちの悲しき習性だろうか。弟が姉に敵わないって事は来夏の弟くんで実証されてますし(笑。そんな中で常にマイペース、常に直球勝負のウィーンは来夏の手にも負えません。迫力で押してた来夏が逆に押される構図には笑った。
てなドタバタの傍で部室を抜け出して闇取引の女子二名。振り付けの構想用に制作途中の曲を手渡す和奏…CD-Rで渡す辺り今どきだなあ。ディスクに書かれている曲名は「radiant melody (仮)」、直訳すれば「輝く旋律」か「光の旋律」か。「アイドントマネー」とか言ってた子が賢くなったものです。何話も続いた補習授業は無駄じゃなかった!
キャッキャウフフと盛り上がりながら話題の中心は来夏の事。この二人を繋いだのは紛れもなく来夏であり、良くも悪くも真っ直ぐな来夏によって二人は救われ、成長し、掛け替えのない絆も得た。暴走したり空回ったりしながらも合唱部の中心は来夏なんだよね。てな会話から噂の当人をパッと映すカットも気が利いてます。

シロサイ準備のため測量を始めた生徒会の面々。ミニスカ女子高生が巻き尺を転がすカットはなかなか眼福でありました(そういう所ばかり見る。それはそうと側で工事関係者らしきおっさんたちを見つけた弟くん、生徒会長に訊いても詳細は判らず…どうやら理事長プロジェクトについては生徒会にすら伝えられていなかったようで、これから起きる惨事を知らぬまま準備を進める生徒たちが切ない。
作曲、振り付け、大道具、小道具と自宅にて準備を進めるみなさんの様子をパッパと映し、しんがりの部長様は例によってシャチぐるみを蹴飛ばしながら思案中。そりゃもうナマの方が良いに決まってます! というわけで上野さんへ伴奏をお願いする前振りをさりげなく。
「もう二度と絵描かないで」
明けて翌日の部室にて男子二人が成果を発表。ここでウィーンの小道具ミニチュアの出来を一同絶賛し、次の田中への期待値を高めて突き落とす演出が憎い(笑。苦手を乗り越え田中なりに一生懸命描いてそれなりの自信があったイメージ画でしたが、どうやらそれは視聴者にお見せできないレベルだったようです。というかあえて視聴者に見せないのがこれまた憎い。絵を見た三人のリアクションから田中の画力を無限に想像できますもの。
突き落とされた田中は美術室を通り掛かって一案。シロサイ準備に追われる美術部部長にカキワリの下絵を依頼するも無下に却下され、ここで止めときゃいいのに「小学生みたいな絵で十分」とか…田中としては来夏に言われたマンマの事を言ったのだろうけど美術部部長にその言い草は無いよねえ。合唱部女子にも再三言われていますが、田中はもう少しデリカシーを学んだ方がよろしい(笑
ちなみにこのメガネの美術部部長さんは「花咲くいろは」19-20話で登場した水野さんのそっくりさん(笑)でした。いや名字は同じ「水野」で中の人(寿 美菜子さん)も同じという、両作ファンにはちょっとニヤマリな仕込みでした。美術部を追い出された田中は窓にもたれて溜息、すると隣で校長先生が溜息を吐いていました。何という悲哀のシンクロ。二人ともいい感じに背中で人生を語っています。
「沖田の写真と交換な」
捨てる神あれば拾う神あり。という表現が適当かどうか判りませんが、もはや打つ手が無い田中を惑わす美術部男子の甘言ががが! しかし世の中物事には対価が必要で、カキワリを描いてやる代わりに紗羽の写真をくれとか。まああれだけ美人でスタイル良くて性格もサッパリしてりゃ健康な高校生男子が放っとくはずがありません。いやこの男子はルックスしか見てない?
美術部男子の申し出に戸惑いながら部室に向かう田中。どうするどうする? すると田中は音楽室で一人振り付けを考えている紗羽を見つけるとコッソリとカメラを向けるのでした。極端な話が「自分の不出来の穴埋めのために紗羽を売る」ようなものなので正面からは頼めず、また依頼者の使用目的(笑)を考えればますます頼めないし、仮に頼んでも「クズ!」の連打を浴びて再起不能に陥りそう。

音楽室に一人佇む紗羽のカットはいかにも「覗き見」風のアングルが田中の罪悪感を想像させます。ここのダンスシーンは紗羽の真剣な表情としなやかな肢体がじつに眩しかった。静かな音楽室で踊る紗羽は神秘的ですらあります。その美しさに盗撮するのを忘れて思わず見とれてしまう田中…これまで近すぎて判らなかった紗羽の美しさに気付いた瞬間か(ベタな言い方
バッと振り返ってからのバク転シーンはスローのタイミングとアングル取り・カット割りの妙で躍動感増し増し、思わぬタイミングでスカートの中を見てしまった田中のリアクションも良かったです。この表情が衝撃度を物語っていますね(笑

理事長プロジェクトを知らずにシロサイの準備を進める生徒たち。上でも書いたけど事の成り行きを知った後でこのシーンを見るとじつに切ないです。準備風景からカメラが引いて学校全景が映るとクロスフェードで建築模型に変化し、ついにプロジェクトの全貌が明らかにされました。このシーンは生徒会のシロサイ図面が実際の風景に移り変わるカットと対になってるのだね。芸コマ。
というわけでここまで引っ張った理事長の謎プロジェクトの正体は、まあ学科統廃合くらいだろう?という私の予想を大きく上回るまさかの廃校展開でした。少子化云々の説明はさもありなん、学校経営よりも高所得退職者向けの高級マンションの方が儲かる、ってのも時流を映したシビアなシナリオです。見慣れた校舎がマンション模型に覆い被されるカットは喪失感・理事長の無慈悲さを強調している感じ。なるほどこんな無慈悲な計画では教頭先生の電池が切れるのも無理はありません。模型を前に深い溜息の校長先生も辛いトコです。この段階になるまで生徒はおろか教師たちにも黙っていたヘタレっちゃヘタレですが、きっと彼は彼なりにこの学校を愛していて、その思い故に誰にも言い出せず一人で抱えてしまったとも思えます。上から下から中間管理職は辛い。
まあ現実的に考えるとこんな暴挙がまかり通るか?と問われれば少々眉唾なのだけれど…アニメの演出としてはギリギリセーフかな。でもそれならば相応の前振り(空き教室が目立つとか、昇降口の下駄箱が一部閉鎖されてるとか)が有れば説得力を増したかも。部室を声楽部に占領されたエピソード辺りでそういう描写も入れられたような。逆に言えばそういう描写が無かった事で生徒数減少云々が「理事長の詭弁」である根拠にもなり得るか。
ともあれそんな事とは露知らない来夏は音楽劇の伴奏を上野さんに頼むべく待ち伏せ。ほどなく教室から出てきた上野さんに声を掛けるといきなり火花が!…振り返った声楽部部長に反応した俯瞰の距離感は来夏vs部長の距離を感じさせますね。一方いきなり噛み付いてきた部長を完全スルーして上野さんへ話しかける来夏のアクションは上野さんとの親密さを感じさせ、アクション自体も小気味よくて気持ち良かった。ほんとこういう描写が絶妙よね。

「馬鹿じゃない!」
それはそうと来夏が小っさすぎてちょっと笑った。これじゃ小学生だよ(笑。上野さんとの会話中、部長にチクチク噛み付かれようが睨むだけでスルーを決め込んでいた来夏でしたが、和奏の作曲を馬鹿にされた瞬間スイッチが入った。熱いな! 教頭先生に頼り切りの姿勢を指摘されると何も言い返せない部長は自分でも判っているのかも。現に教頭先生がいない部室はサル山状態で…これは部長の人望の無さが突き付けられたようで少々辛いシーンでもありました。
緊急職員会議にてようやく廃校の件を話し始めた校長先生。その空気を察した教頭先生が席を立って出て行ったのは「現実」を認めたくないからでしょう。渡り廊下で落ち込みMAXの教頭先生が見たまひるさんの幻、きっとなおちゃんを見つける度にこんな風に手を振っていたのだろうなあ。限りなくどよんどな教頭先生を「なお、がんばれ!」と応援しているようにも見えます。
立ち止まっていた教頭先生はまひるさんの幻を見ると力無い足取りながら音楽室へ向かい、そして生徒たちの顔を一通り眺めると辛い報告を…来夏何やってんだ!(笑。あからさまにバレバレなのに何も言わない教頭先生の辛すぎる胸中お察しします。
というわけで思わぬ所で廃校の件を知ってしまった来夏。ほんと見せ方がいちいち凝ってるよなあ。当然ながら遅かれ早かれこの件を知るわけだけど、普通に教室や貼り紙や伝聞で聞くような描写ではこの衝撃感は出ないでしょう。モロバレカニ歩きのユーモラスさからの落差も効いて、来夏が知った瞬間の衝撃が見事に伝わってくる演出でした。

ここから淡々と時間だけが流れていく描写も凄かった。参加者が押し黙っている説明回、シロサイの中止を伝える生徒会もお通夜のようです。やがて校内の工事が始まり、たくさんの生徒たちで賑やかだった学校は次第に重機に占領されていく。賑やかに準備をしていたシロサイ資材はシートが被されたまま生徒の姿も消え、楽しげに貼られていたポスターには中止のお知らせが貼られ、完成した小道具の出番はもう無い。何という切なさ、やり切れなさ。

紗羽は一人弓道場で弓を引き、田中は一人でバドミントンの練習を黙々と続け、ウィーンは一人でサンドイッチを食べ、来夏は一人で鼻歌を歌っている。シロサイに向けてあれほど盛り上がっていた仲間たちは合唱部ができる前の場所に戻ってしまった。みなさん一様に感情が抜け落ちた表情なのが見ていて辛い辛い。階段を降りてきた来夏と紗羽が出会って立ち話、そこへ田中とウィーンが加わって久しぶりにメンバーが揃っても気の抜けた会話を続けるばかりで、お互い「合唱部」や「シロサイ」についてあえて触れないように気遣ってるみたい?
「できたよ、歌」
そんな所に現れた和奏。廊下の奥に現れた影はやがて近付き、四人に気付くと笑顔で駆け寄り書き上げた楽譜を見せ…
『radiant molody』
作詞 作曲
坂井まひる、和奏
楽譜に書かれたこの連名を見た瞬間に涙が溢れて止まりませんでした。他の四人が不本意ながらも全て諦めていた間、和奏だけは諦めず作曲を続けていた。和奏にとって「合唱部」「シロサイ」は終わっていなかったのです。作曲自体はもちろんまひるさんとの約束でもあるのだけれど、今の和奏にとっては「みんなで歌う」事も同じくらい大切な約束で、きっとその思いも含めて曲を作っていったんだと思う。完成した譜面を誇らしげに掲げ「みんなで歌いたい!」と続ける和奏、その勢いに押されながら少しずつ輝きを取り戻していく四人の表情変化も良かった。
さてこれにて残り二話。まだまだ課題は山積みですが、もはや神がかっているとしか思えない橋本監督の手腕を持ってすればきっと綺麗にまとめてくれるでしょう。ここからの逆転劇の鍵になりそうな人物はヤンを含めたウィーンのバックか、それとも第二話のスイカおばさん(笑)か、それとも他に隠し球があるのか。教頭先生のアレコレを含めて残り二話が楽しみであり寂しくもあり。
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