2012-09-17(Mon)
TARI TARI #12 重ねたり 響いたり
次々と迫るハードルに諦めない負けない。

シロサイに向けて突っ走れ!

「やろうよ、白祭!」
和奏の強い思いによってスイッチが入り気勢を上げる合唱部のみなさん、とはいえ係る問題は山積のまま「白祭中止」の状況は変わりません。部室のホワイトボードによれば「白祭まであと17日」、前回の妄想寸劇時には「残り26日」でその後の準備風景や中止発表後の重苦しい描写などから本来のシロサイ開催予定日を過ぎているかと思いきや意外と時間が経っていないようです。つまり和奏はほぼ宣言の期限どおり曲を完成させたのだなあ。「誰か助けて!」だった衣装担当がいつの間にかウィーンになってて笑う。他の変更点として歌の部分が和奏の作曲完了を受けて「他候補」が消え「パートごとに和奏が特訓」に変わっています。ってかサイはもういいから!
「卒業してバラバラになってもこの歌を聴く度にみんなの事を思い出すよね」
生まれたての曲をみんなで聴きながら語る和奏の思いはまひるさんが和奏に残した思いそのものでした。まひるさんの音楽に対する哲学はきちんと受け継がれているのです。ううむ、この時点で涙腺が仕事しすぎて困る。作品タイトルに直結する「~たり」「~たり」で紡がれる合唱部の思い出語りは、様々な経験や感情のぶつかり合いによって少年少女たちの成長を描いてきた本作を象徴するシーンでした。「戦ったり負けたり」と田中に振るいたずらっぽい紗羽の表情が極上、それを受ける田中の表情も甘酸っぱすぎてニマニマが止まりません。と思ったらこれはまだまだ序の口です。
和奏の思いに共鳴したみなさんはシロサイへ向けてパワー満タン!エネルギーチャージだ! 肉レッドの気合に続いてせっかく良い事言ったのに「かっこいい~」と囃し立てられて膨れるシラスホワイトかわいい。愛されてるなあ。田中ってナニゲに美味しいポジションだよね(笑

前回の盗撮チャレンジを反省したか今回の田中は直球勝負で写真をお願い。一人振り付けを考えながら踊る紗羽のカットも覗き見演出が秀逸だった前回と違って白昼堂々としていました。しかしいざ頼む段になると譜面台を中央に絶妙な距離感を感じさせ、いろんな意味で頼みづらい田中の心境が痛いほど伝わってきます。正面から向き合いながら目を逸らして言葉を濁し濁し頼む表情も良し。一方紗羽は没頭中にいきなり声を掛けられて驚くリアクションや、写真を頼まれて戸惑う表情変化も絶妙でした。そりゃいきなり「写真撮らせて」なんて言われたらいろいろ考えちゃうよねえ。正直に理由を話した田中へ応えてあげる懐の広さも良い良い。
オンナノコをかわいく撮るには上からが基本(笑。というわけで体をキュッと捻って横ピースのポーズはかわいさフルゲージなれど体勢的に苦しいのか「早く」と急かす声、一方あまりのかわいさに見とれながら「この笑顔を他人に渡したくない」のかシャッターを押せない田中の気持ちも判る判る。写真写りをきっちり確認する紗羽のカットはオンナノコの部分と男前な部分が同居していて実に紗羽っぽい。撮影前の距離から一気に近付いたツーショットは両者のココロの距離を象徴していたりして。
結局撮影終了後の別れ際にパチリと撮った後姿を渡す田中。これはこれで良い写真(笑)ですが…ああもうニマニマが止まらない! あまずっぺー!

その頃来夏は生徒会のクラブ会議にて「白祭中止の中止」を熱く提案していました。しかし熱くなっているのは来夏だけで、他クラブの部長たちは大人たちの決定に諦めムードで押し黙っている辺り今どきの子っぽい。
「上の人から言われたからって間違ってる事にそのままただ従うような残念な大人に私はなりたくありません!」
来夏の熱い語りが廊下の校長先生に突き刺さっているカットは見ていて辛い。彼としてもこの理不尽はもちろん本意では無く、立場上抗えないまま音叉を鳴らしてココロを落ち着かせる日々を過ごし、何やかんやで誤魔化し切れない所まで来てしまった。てな所で若者の熱い情熱を突き付けられたらこんな顔にもなっちゃいますよ。子供たちの手本になるべき自分が「残念な大人」の醜態を晒し、しかし現実は厳しい。未熟な子供たちを見守り導く志保さんなどの大人ポジションに加え、校長先生や理事長などの「好ましくない大人」を描く事で作劇に深みを見せていますね。これは個人的な好みかもだけど、大人が大人としてきちんと機能している作品は名作が多いと思う。逆に現役の若者はこういう描写(大人視線(上から目線)からあれこれ言ってくるような)が鬱陶しいと思われ、だから本作はイマイチ若者受けしないのかも。
採決の段でも熱気が薄い部長たちの中で何となく賛成するファッション部の部長、他にも美術部部長その他がちらほらと挙手…来夏ほどの熱意は無くともやれるものならやりたいとは思っているのでしょう。とはいえ結局過半数には達さず否決、それでも来夏は諦めない負けない!
その裏側で起きていた小道具騒動はこれまた理不尽極まりない話でしたが、合唱部の置かれた立場・現状を上手く暗示した小エピソードと言えるでしょう。子供たちがコツコツと積み重ねた努力を呆気なく叩きつぶす大人の理不尽な力。全身を汚しながら必死に集めた残骸のもの悲しさも凄い。てな所へ駆け付けた来夏の言葉から始まる責任の押し付け合い・険悪な空気も理不尽へのイライラが別ベクトルに向う若者たちの生々しさ。そんな場面を収めたのがヒーロー体験によって「諦めない気持ち」「仲間への感謝」を心に刻んだウィーンってのも気が利いてます。ここまで描かれたエピソードによる各キャラの成長をこの終盤に一気に集約して見せる上手さ。

Bパート冒頭は和奏のお墓参りシーンから。まひるさんの命日は受験云々の時期で、お盆はもちろんお彼岸も過ぎている(作中では10月)のでおそらく月命日か何かでしょう。一緒に行くべく父ちゃんが店の忙しさで行けないというテイはこの後の和奏&教頭先生のツーショットを自然に見せる振りか。芸が細かいね。
「やっぱり、音楽に愛されていたのは、まひるだったね」
というわけでまひるさんのお墓に先客あり。墓中のまひるさんへの語りは「一人では形にする事ができなかった」と…あの歌も旧合唱部も「まひる一人で作った」と思い込んでいる教頭先生は、そのコンプレックスを乗り越えるためあえて自分一人で「声楽部」を作り、まひるさん以上の結果を残す事で「自分も音楽に愛されている」と証明したかったのでしょう。なのに声楽部(学校)の顛末はご存知のとおりで、なるほど教頭先生の電池が切れてしまったのも無理はありません。初期の居丈高な態度は純粋さの裏返しで、その鉄仮面が外れた素顔はまるで少女のまま、まひるさんに振り回されていた高校時代のなおちゃんマンマです。
てな所へ和奏が現れると一瞬の戸惑い顔からサッとメガネに手を添えて教師(大人)の顔へ。凛とした表情に豹変してサッサと帰ろうとする教頭先生でしたが和奏の目は誤魔化せず…きっと和奏はこのままではいけないと思ったのでしょう、教頭先生を呼び止めると完成したばかりの歌をきっかけに「歌を作るために必要な事」を語り始めます。「楽しむ」というアドバイスはまひるさんからの受け売りで実際は自分が言われていた事と自嘲する教頭先生、けれど実際は楽しむだけでは歌は作れない。楽しむ事と同じくらい友人の力が必要で、苦しい時に声を掛けてくれて、一生懸命で、率直で、ケンカしたり力を合わせたり……
「母にもそういう友人がいたんじゃないでしょうか」
まひるさんが曲を作る時に一緒に楽しんで悩んでくれた人。ここで高校時代の回想がパッと入る演出はベタながら私の涙腺を暴発させるに十二分の破壊力がありました。こりゃ反則ですよ(笑。全てまひるさん一人で作ったと思い込んでいた教頭先生は事あるごとに言われていた「そんな事ないよ」の意味をようやく理解し、長きに渡って囚われていた対抗心・劣等感を洗い流すように落ちる涙、その直後に一瞬見せた穏やかな表情も良かった。

さて教頭先生問題が片付いた所でシロサイ関係は変わりません。部室に泊まり込みで小道具を作り直すウィーンは椅子を並べて仮眠中。このカットはどこのアニメスタジオでも描画資料に困らないでしょう(笑。ホワイトボードのカウントダウンは「あと11日」となり、しかし衣装担当のウィーンは小道具作りに追われて衣装作りのメドが立たず、ここで田中が名乗り出るも周囲は全くアテにしていません。特に女子二名は遠回しに拒否しているような。まあ大道具での実績(笑)を考えると当然のリアクションかも。そんな中でやはりウィーンだけは田中を信じ、信頼に応えるべく田中は衣装のデザイン画を持ってファッション部の門を叩きます。このデザイン画は来夏が描いたのかな。センターの来夏キャラだけ音符が舞って妙にかわいいし(笑
「だから私がやってやるって言ってんの!」
糸通しすらろくに出来ないほど使い慣れないミシンと格闘し、それでも熱意だけは全力全壊の田中。不器用な発言からほとんど門前払いを食らった美術部の時からずいぶん成長したものです。そもそもあの時とは必死さ一生懸命さが段違いで、シロサイへ向けての熱い思いはファッション部部長にも伝わり、やがて部全体を巻き込む大きなうねりに育っていく。やはり真剣な思いは他人を動かすのだなあ。結局全部人任せで田中は対価を払うだけってのも彼らしいオチでした、と言ってしまったら気の毒か。それはそうと音楽科の子がファッション部にいたのはちょっと意外だったかも。学校生活は授業も部活も音楽ベッタリって訳ではないのね。

成長に伴うキャラの行動変化は紗羽も同様で、世間知らずのわがまま娘は「どうしようも無くて諦めなければならない事」を体験して一回り大きくなりました。諦めなくても良い事を諦めたくない、大人の事情で煮え切らない商店街の人たちへ深々と頭を下げて協力を懇願する紗羽。その様子を見て娘の成長に目を細める志保さん、廊下で黙って聞いてる父ちゃんの相変わらずな不器用っぷりも良かった。そりゃ誰より応援しちゃうって。
合唱劇の伴奏を上野さんにお願いする来夏もまた成長の跡が見えました。それはともかくまさか上野さんをこれほど引っ張るとは。楽譜を笑顔で受け取る上野さん天使すぎる。てな所へ現れた声楽部部長は相変わらずイヤミ全開で、しかし来夏は垣根をひょいと乗り越え「歌うのが好き」な者同士で手を取り合い…以前の来夏だったら憎っくき声楽部に対してこんな事は言わなかった(言えなかった)だろうに、様々な経験によって音楽の楽しさ・素晴らしさを確信し自信を付けた事で誰にでも自分の気持ちを躊躇無く言えるようになった。傍目にはちょっとウザいかもだけど(笑
来夏を必死に否定する部長さんは逆に微笑ましかったり。きっと素顔の彼女は歌う事が大好きなのに、自分の立場や信念に囚われすぎて「楽しむ」事を封印してしまったのでしょう。だから自由に楽しんでいる来夏が内心羨ましくてやたら突っかかってしまう。あらかわいい。まるで顧問の先生のミニチュアを見ているみたいです。
てな騒動の所へ登場した教頭先生は上野さんが抱える楽譜を一瞥すると音楽室へ。もちろん教頭先生はあの楽譜が何なのか判っていて、それを上野さんが持っている意味も判っていて、なのに眉一つ動かさず通り過ぎたってのは要するに「合唱部(合唱劇)を認めた」という事。あくまで教師モードを貫く辺りさすが本作スタッフは判ってるなあ。まったく究極のデレシーンです。

シロサイ開催に向けて突っ走る生徒たちの一方で上から下から板挟みの校長先生はついに動きを見せました。校長先生的によほど効いたのかクラブ会議での来夏のセリフまんまを恐る恐る理事長にぶつけ、しかし理事長は完全スルーでワインのビンを手渡して釘射し。このワインは最終回で活躍しそうな気がする(笑。さらに商店街に貼られたポスターを苦々しく見せ付け「地域のみなさんと良好な関係云々」とか…ここで力ずくで中止するほうがよほど波風が立つだろうに。またシロサイ中止を徹底すべく放課後の居残りや休日の立ち入りを厳しく制限、反すれば停学とか、それではもう通常の部活動すらできず学校としての体を為していません。そう言い放って出て行く理事長へ何も言えず俯くだけの校長先生は必殺技ゲージがいい感じに上がっている? 最後の最後に男を見せてくれるか!?
苦境に立たされながらも合唱部は練習を続け、美術部の彼は大判ベニヤにカキワリを描き…水野さんも気にしている様子? 何だかんだで部員総動員で衣装作りに突っ走るファッション部、寺の掲示板を白祭ポスターで埋める父ちゃんなどなど、合唱部の熱意は周囲を巻き込み、白祭をやりたい人たちの思いと重なり、やがて大きな響きとなる。それはそうと上着を脱いだ和奏のブラウス姿が新鮮でした。音楽科の夏服はジャンスカだからね。

和奏の楽譜を眺める声楽部部長、そこへ駆け寄ってきた上野さんとヒトコトフタコトの後譜面を押し付けたり、セリフは判らないけれど相当デレている雰囲気だけは伝わってきますね(笑。ここで現れた教頭先生が改まって何か話しているカットは…おそらくそういう事なのでしょう。こりゃ最終回のステージが楽しみです。
さてホワイトボードのカウントダウンも「いよいよ明日!」となった白祭前日。窓の外は土砂降りで雨女の来夏は明日の客足を案じて「晴れろ!晴れろ!」と必死にお願い。そういや第2話の発表会も雨だったっけ(笑。すると和奏は「この雨で来てくれる人は本物」とじつにポジティブです。あはは。ここから回しセリフで各々の思いを語るシーンは重すぎず軽すぎず、出来る事をやりきった清々しさが溢れる好演出でした。
「止まない雨は無いよ!」
短いCパートにて土砂降りの前で立ち尽くす姿はいかにも次回の波乱を予感させますが、またしてもウィーンのヒーロー思考に救われます。ここでこのセリフを言えちゃうウィーンってば格好いいなあ。はたしてウィーンの言葉どおり雨は止むのか? どんな形で理事長の妨害を突破するのか? その他気になるポイントは山積なれど、次回を見ちゃったらその次が無いと思うと寂しさMAXであります。1クール作でこんな気分になるのは久しぶりかも。
というわけで次回最終回です。ううう。
↓記事が役立ったら一票どうぞ。

シロサイに向けて突っ走れ!

「やろうよ、白祭!」
和奏の強い思いによってスイッチが入り気勢を上げる合唱部のみなさん、とはいえ係る問題は山積のまま「白祭中止」の状況は変わりません。部室のホワイトボードによれば「白祭まであと17日」、前回の妄想寸劇時には「残り26日」でその後の準備風景や中止発表後の重苦しい描写などから本来のシロサイ開催予定日を過ぎているかと思いきや意外と時間が経っていないようです。つまり和奏はほぼ宣言の期限どおり曲を完成させたのだなあ。「誰か助けて!」だった衣装担当がいつの間にかウィーンになってて笑う。他の変更点として歌の部分が和奏の作曲完了を受けて「他候補」が消え「パートごとに和奏が特訓」に変わっています。ってかサイはもういいから!
「卒業してバラバラになってもこの歌を聴く度にみんなの事を思い出すよね」
生まれたての曲をみんなで聴きながら語る和奏の思いはまひるさんが和奏に残した思いそのものでした。まひるさんの音楽に対する哲学はきちんと受け継がれているのです。ううむ、この時点で涙腺が仕事しすぎて困る。作品タイトルに直結する「~たり」「~たり」で紡がれる合唱部の思い出語りは、様々な経験や感情のぶつかり合いによって少年少女たちの成長を描いてきた本作を象徴するシーンでした。「戦ったり負けたり」と田中に振るいたずらっぽい紗羽の表情が極上、それを受ける田中の表情も甘酸っぱすぎてニマニマが止まりません。と思ったらこれはまだまだ序の口です。
和奏の思いに共鳴したみなさんはシロサイへ向けてパワー満タン!エネルギーチャージだ! 肉レッドの気合に続いてせっかく良い事言ったのに「かっこいい~」と囃し立てられて膨れるシラスホワイトかわいい。愛されてるなあ。田中ってナニゲに美味しいポジションだよね(笑

前回の盗撮チャレンジを反省したか今回の田中は直球勝負で写真をお願い。一人振り付けを考えながら踊る紗羽のカットも覗き見演出が秀逸だった前回と違って白昼堂々としていました。しかしいざ頼む段になると譜面台を中央に絶妙な距離感を感じさせ、いろんな意味で頼みづらい田中の心境が痛いほど伝わってきます。正面から向き合いながら目を逸らして言葉を濁し濁し頼む表情も良し。一方紗羽は没頭中にいきなり声を掛けられて驚くリアクションや、写真を頼まれて戸惑う表情変化も絶妙でした。そりゃいきなり「写真撮らせて」なんて言われたらいろいろ考えちゃうよねえ。正直に理由を話した田中へ応えてあげる懐の広さも良い良い。
オンナノコをかわいく撮るには上からが基本(笑。というわけで体をキュッと捻って横ピースのポーズはかわいさフルゲージなれど体勢的に苦しいのか「早く」と急かす声、一方あまりのかわいさに見とれながら「この笑顔を他人に渡したくない」のかシャッターを押せない田中の気持ちも判る判る。写真写りをきっちり確認する紗羽のカットはオンナノコの部分と男前な部分が同居していて実に紗羽っぽい。撮影前の距離から一気に近付いたツーショットは両者のココロの距離を象徴していたりして。
結局撮影終了後の別れ際にパチリと撮った後姿を渡す田中。これはこれで良い写真(笑)ですが…ああもうニマニマが止まらない! あまずっぺー!

その頃来夏は生徒会のクラブ会議にて「白祭中止の中止」を熱く提案していました。しかし熱くなっているのは来夏だけで、他クラブの部長たちは大人たちの決定に諦めムードで押し黙っている辺り今どきの子っぽい。
「上の人から言われたからって間違ってる事にそのままただ従うような残念な大人に私はなりたくありません!」
来夏の熱い語りが廊下の校長先生に突き刺さっているカットは見ていて辛い。彼としてもこの理不尽はもちろん本意では無く、立場上抗えないまま音叉を鳴らしてココロを落ち着かせる日々を過ごし、何やかんやで誤魔化し切れない所まで来てしまった。てな所で若者の熱い情熱を突き付けられたらこんな顔にもなっちゃいますよ。子供たちの手本になるべき自分が「残念な大人」の醜態を晒し、しかし現実は厳しい。未熟な子供たちを見守り導く志保さんなどの大人ポジションに加え、校長先生や理事長などの「好ましくない大人」を描く事で作劇に深みを見せていますね。これは個人的な好みかもだけど、大人が大人としてきちんと機能している作品は名作が多いと思う。逆に現役の若者はこういう描写(大人視線(上から目線)からあれこれ言ってくるような)が鬱陶しいと思われ、だから本作はイマイチ若者受けしないのかも。
採決の段でも熱気が薄い部長たちの中で何となく賛成するファッション部の部長、他にも美術部部長その他がちらほらと挙手…来夏ほどの熱意は無くともやれるものならやりたいとは思っているのでしょう。とはいえ結局過半数には達さず否決、それでも来夏は諦めない負けない!
その裏側で起きていた小道具騒動はこれまた理不尽極まりない話でしたが、合唱部の置かれた立場・現状を上手く暗示した小エピソードと言えるでしょう。子供たちがコツコツと積み重ねた努力を呆気なく叩きつぶす大人の理不尽な力。全身を汚しながら必死に集めた残骸のもの悲しさも凄い。てな所へ駆け付けた来夏の言葉から始まる責任の押し付け合い・険悪な空気も理不尽へのイライラが別ベクトルに向う若者たちの生々しさ。そんな場面を収めたのがヒーロー体験によって「諦めない気持ち」「仲間への感謝」を心に刻んだウィーンってのも気が利いてます。ここまで描かれたエピソードによる各キャラの成長をこの終盤に一気に集約して見せる上手さ。

Bパート冒頭は和奏のお墓参りシーンから。まひるさんの命日は受験云々の時期で、お盆はもちろんお彼岸も過ぎている(作中では10月)のでおそらく月命日か何かでしょう。一緒に行くべく父ちゃんが店の忙しさで行けないというテイはこの後の和奏&教頭先生のツーショットを自然に見せる振りか。芸が細かいね。
「やっぱり、音楽に愛されていたのは、まひるだったね」
というわけでまひるさんのお墓に先客あり。墓中のまひるさんへの語りは「一人では形にする事ができなかった」と…あの歌も旧合唱部も「まひる一人で作った」と思い込んでいる教頭先生は、そのコンプレックスを乗り越えるためあえて自分一人で「声楽部」を作り、まひるさん以上の結果を残す事で「自分も音楽に愛されている」と証明したかったのでしょう。なのに声楽部(学校)の顛末はご存知のとおりで、なるほど教頭先生の電池が切れてしまったのも無理はありません。初期の居丈高な態度は純粋さの裏返しで、その鉄仮面が外れた素顔はまるで少女のまま、まひるさんに振り回されていた高校時代のなおちゃんマンマです。
てな所へ和奏が現れると一瞬の戸惑い顔からサッとメガネに手を添えて教師(大人)の顔へ。凛とした表情に豹変してサッサと帰ろうとする教頭先生でしたが和奏の目は誤魔化せず…きっと和奏はこのままではいけないと思ったのでしょう、教頭先生を呼び止めると完成したばかりの歌をきっかけに「歌を作るために必要な事」を語り始めます。「楽しむ」というアドバイスはまひるさんからの受け売りで実際は自分が言われていた事と自嘲する教頭先生、けれど実際は楽しむだけでは歌は作れない。楽しむ事と同じくらい友人の力が必要で、苦しい時に声を掛けてくれて、一生懸命で、率直で、ケンカしたり力を合わせたり……
「母にもそういう友人がいたんじゃないでしょうか」
まひるさんが曲を作る時に一緒に楽しんで悩んでくれた人。ここで高校時代の回想がパッと入る演出はベタながら私の涙腺を暴発させるに十二分の破壊力がありました。こりゃ反則ですよ(笑。全てまひるさん一人で作ったと思い込んでいた教頭先生は事あるごとに言われていた「そんな事ないよ」の意味をようやく理解し、長きに渡って囚われていた対抗心・劣等感を洗い流すように落ちる涙、その直後に一瞬見せた穏やかな表情も良かった。

さて教頭先生問題が片付いた所でシロサイ関係は変わりません。部室に泊まり込みで小道具を作り直すウィーンは椅子を並べて仮眠中。このカットはどこのアニメスタジオでも描画資料に困らないでしょう(笑。ホワイトボードのカウントダウンは「あと11日」となり、しかし衣装担当のウィーンは小道具作りに追われて衣装作りのメドが立たず、ここで田中が名乗り出るも周囲は全くアテにしていません。特に女子二名は遠回しに拒否しているような。まあ大道具での実績(笑)を考えると当然のリアクションかも。そんな中でやはりウィーンだけは田中を信じ、信頼に応えるべく田中は衣装のデザイン画を持ってファッション部の門を叩きます。このデザイン画は来夏が描いたのかな。センターの来夏キャラだけ音符が舞って妙にかわいいし(笑
「だから私がやってやるって言ってんの!」
糸通しすらろくに出来ないほど使い慣れないミシンと格闘し、それでも熱意だけは全力全壊の田中。不器用な発言からほとんど門前払いを食らった美術部の時からずいぶん成長したものです。そもそもあの時とは必死さ一生懸命さが段違いで、シロサイへ向けての熱い思いはファッション部部長にも伝わり、やがて部全体を巻き込む大きなうねりに育っていく。やはり真剣な思いは他人を動かすのだなあ。結局全部人任せで田中は対価を払うだけってのも彼らしいオチでした、と言ってしまったら気の毒か。それはそうと音楽科の子がファッション部にいたのはちょっと意外だったかも。学校生活は授業も部活も音楽ベッタリって訳ではないのね。

成長に伴うキャラの行動変化は紗羽も同様で、世間知らずのわがまま娘は「どうしようも無くて諦めなければならない事」を体験して一回り大きくなりました。諦めなくても良い事を諦めたくない、大人の事情で煮え切らない商店街の人たちへ深々と頭を下げて協力を懇願する紗羽。その様子を見て娘の成長に目を細める志保さん、廊下で黙って聞いてる父ちゃんの相変わらずな不器用っぷりも良かった。そりゃ誰より応援しちゃうって。
合唱劇の伴奏を上野さんにお願いする来夏もまた成長の跡が見えました。それはともかくまさか上野さんをこれほど引っ張るとは。楽譜を笑顔で受け取る上野さん天使すぎる。てな所へ現れた声楽部部長は相変わらずイヤミ全開で、しかし来夏は垣根をひょいと乗り越え「歌うのが好き」な者同士で手を取り合い…以前の来夏だったら憎っくき声楽部に対してこんな事は言わなかった(言えなかった)だろうに、様々な経験によって音楽の楽しさ・素晴らしさを確信し自信を付けた事で誰にでも自分の気持ちを躊躇無く言えるようになった。傍目にはちょっとウザいかもだけど(笑
来夏を必死に否定する部長さんは逆に微笑ましかったり。きっと素顔の彼女は歌う事が大好きなのに、自分の立場や信念に囚われすぎて「楽しむ」事を封印してしまったのでしょう。だから自由に楽しんでいる来夏が内心羨ましくてやたら突っかかってしまう。あらかわいい。まるで顧問の先生のミニチュアを見ているみたいです。
てな騒動の所へ登場した教頭先生は上野さんが抱える楽譜を一瞥すると音楽室へ。もちろん教頭先生はあの楽譜が何なのか判っていて、それを上野さんが持っている意味も判っていて、なのに眉一つ動かさず通り過ぎたってのは要するに「合唱部(合唱劇)を認めた」という事。あくまで教師モードを貫く辺りさすが本作スタッフは判ってるなあ。まったく究極のデレシーンです。

シロサイ開催に向けて突っ走る生徒たちの一方で上から下から板挟みの校長先生はついに動きを見せました。校長先生的によほど効いたのかクラブ会議での来夏のセリフまんまを恐る恐る理事長にぶつけ、しかし理事長は完全スルーでワインのビンを手渡して釘射し。このワインは最終回で活躍しそうな気がする(笑。さらに商店街に貼られたポスターを苦々しく見せ付け「地域のみなさんと良好な関係云々」とか…ここで力ずくで中止するほうがよほど波風が立つだろうに。またシロサイ中止を徹底すべく放課後の居残りや休日の立ち入りを厳しく制限、反すれば停学とか、それではもう通常の部活動すらできず学校としての体を為していません。そう言い放って出て行く理事長へ何も言えず俯くだけの校長先生は必殺技ゲージがいい感じに上がっている? 最後の最後に男を見せてくれるか!?
苦境に立たされながらも合唱部は練習を続け、美術部の彼は大判ベニヤにカキワリを描き…水野さんも気にしている様子? 何だかんだで部員総動員で衣装作りに突っ走るファッション部、寺の掲示板を白祭ポスターで埋める父ちゃんなどなど、合唱部の熱意は周囲を巻き込み、白祭をやりたい人たちの思いと重なり、やがて大きな響きとなる。それはそうと上着を脱いだ和奏のブラウス姿が新鮮でした。音楽科の夏服はジャンスカだからね。

和奏の楽譜を眺める声楽部部長、そこへ駆け寄ってきた上野さんとヒトコトフタコトの後譜面を押し付けたり、セリフは判らないけれど相当デレている雰囲気だけは伝わってきますね(笑。ここで現れた教頭先生が改まって何か話しているカットは…おそらくそういう事なのでしょう。こりゃ最終回のステージが楽しみです。
さてホワイトボードのカウントダウンも「いよいよ明日!」となった白祭前日。窓の外は土砂降りで雨女の来夏は明日の客足を案じて「晴れろ!晴れろ!」と必死にお願い。そういや第2話の発表会も雨だったっけ(笑。すると和奏は「この雨で来てくれる人は本物」とじつにポジティブです。あはは。ここから回しセリフで各々の思いを語るシーンは重すぎず軽すぎず、出来る事をやりきった清々しさが溢れる好演出でした。
「止まない雨は無いよ!」
短いCパートにて土砂降りの前で立ち尽くす姿はいかにも次回の波乱を予感させますが、またしてもウィーンのヒーロー思考に救われます。ここでこのセリフを言えちゃうウィーンってば格好いいなあ。はたしてウィーンの言葉どおり雨は止むのか? どんな形で理事長の妨害を突破するのか? その他気になるポイントは山積なれど、次回を見ちゃったらその次が無いと思うと寂しさMAXであります。1クール作でこんな気分になるのは久しぶりかも。
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