2016-06-15(Wed)
ばくおん!! #11 じてんしゃ!!
スズキを怖がらなくていい。もっとスズキを好きになっていい。

この終盤で禁断のエピソード連発!?

前回の教習所騒動から一転(?)して今回アバンは千雨が無事取得した普自二の免許アップから。ちさにゃん免許(笑)にマジレスするのも何だけど今回は有効期間が1ヶ月短く(正しくは平成27年07月06日まで)、また「二・小・原」の取得年月日が「平成23年06月03日」と羽音マンマで苦笑い。おそらく羽音の免許データからコピペ改変でしょうが、交付日はきちんと「平成24年06月07日」に直してあるのだから他もきちんとチェックすればと思わなくなくも。ちなみに序盤の凛と羽音の免許証画像は特にツッコミ所なし、対して第8話での聖の免許は同話前出のフルビット免許含めて結構記載ミスが多い。やはり話数が進むといろんなトコに余裕が無くなってくるのだろうか。
「ロードレーサーは最高だ!」
そんな千雨とすれ違った自転車野郎の叫びから原作第33話「じてんしゃ!!」に突入。これは原作連載時にちょっとした騒ぎになったエピソード(「クソ虫ペダル」でググればすぐ判明します)なのでオミット必至、現に今回のアニメシリーズでも当然のようにカットされていたためアニメ化の目は無いだろう…と思っていただけに、ナニゲに普通に始まってちょっと笑ってしまった。ちなみにコミックス収録版は雑誌連載版に比べて大幅にマイルド表現に改変されており、今回のアニメ化もコミックス版準拠(あえて言えばコミックス版をさらにマイルド化)となっています。それでもよくこのエピソードをアニメ化したなあ。


「車なら馬力、バイクなら排気量、自転車でそれに相当するのは自転車に掛けた金額」
というわけで自転車話。私は自転車乗りでは無いので「自転車に掛けた金額でヒエラルキーが決まる」という文化に直面した事はありませんが、いろんな趣味を見回してみればどのジャンルにもそういう層が一定数存在するのも確か。何にせよ良いモノは高いのが通例、どうせなら財布が許す限り良いモノを使いたいのも人情で、その金額分を有効活用し本人が満足していれば何の問題も無いのですが…それが「これだけカネ掛けちゃってる俺様スゲー!」に転化しちゃうと傍目には結構痛々しい。そしてその「モノ」がその「人」にそぐわない事が露呈してしまうと一気にみっともない事になる。だから芸能人格付けチェックみたいな成金晒しが盛り上がるのでしょう。ちなみに単車乗りでもそういう人はそれなりにいるでしょうが、貧乏人枠に所属している私はむしろ「カネ掛けてない自慢(安く買った自慢)」の方が多かった気がする。
「おい!そこのスズキのアルト! その車値段はいくらだ!?」
今回の自転車話は小ネタのオミットが多々ありながらも基本的に原作マンマ。見切り発進の自転車野郎をスイっと抜いてニンマリする恩紗の表情はアニメ効果でいい感じに小憎らしく(笑。通りすがりのアルトに値段を訊くカットは原作(スイフト)から改変ですが、今のスイフトはビミョーに高いので100万自慢にそぐわなかった? 続く70万の中古雀は新車ならいい値段(初期型でも新車130万円くらい?)なので金額ヒエラルキーとして傍目にはビミョーかも。まあそこを中古車価格で力技判定しちゃう辺り純粋(?)に「使った金額至上主義」って事なのでしょう。金額パワーで恩紗をドーン!と蹴散らし、自転車に掛けた金額と交通弱者の鎧を纏ってロードキングの称号を憚らない自転車野郎でしたが、しかし本物のブルジョア様には敵わなかったというオチ。


そこからシーンがパッと変わって雨天の朝の駅。凛も恩紗もさすがに雨降りの日は電車通学に切り替えるようで…というわけで原作第30話「びょーき!!」が始まります。これも内容的にアニメ化は難しいと思っていたエピソードなので普通に始まって驚き。ちなみにこのエピソードは原作第4巻(千雨受験回の直後)収録ですが時系列にほとんど無関係なためこのタイミングでも違和感は無く、千雨参戦を一気に見せた後のインターミッションとして上手く入れ替えたと思います。というかこの馬鹿すぎるエピソードのアニメ化自体が信じられん(笑
「凛、私がヨダレ垂らして寝こけてたなんてクラスのみんなに言いふらさないでくれよ」
お話の発端はシートで寝ていた恩紗が手に落ちた凛のヨダレをペロリと舐めてしまった事。落としたヨダレを舐められた凛の気まずさ、一方自分のヨダレと勘違いして舐めてしまった恩紗の気まずさ…などなどビミョーな雰囲気で終えた通学シーンがまさかあんな大惨事に繋がるとは原作時にも全く予想できませんでした。原作ではここでオサムちゃん人形を肴に「スズキに惚れ込む凛のバイクライフスタイル」を恩紗が褒めるシーンがあり、それが今回のヤマ場に繋がるのですが、アニメではまるっとオミットされてしまったため、恩紗に迫る凛の言葉が弱くなってしまって少々残念。参考までにカットされたセリフを下に書いときます。興味がある人は反転してどうぞ。
恩紗:バイクってのはさ、どのメーカーのどのバイクに乗るかより、どうやって乗るかの方が大事だろ? その点そうやってグッズまで集めて惚れ込んで乗ってる凛が正直…羨ましいよ

「何か汚いモノを口にしたとか無かった?」
さてその日の授業中に面白い顔色でぶっ倒れた恩紗は即救急車で運ばれてしまいます。ほんとに面白い顔色で笑う。搬送されていく恩紗を見送りながら汚いモノ(笑)に心当たりがある凛は羽音の言葉にドキリ、しかし三日経っても学校に来ない理由が「原因不明の奇病」と聞き、その間 凛自身には何も起きていない事からホッと一息。私から何か伝染ったなら私が奇病に罹ってるって事、でも私は病気じゃない、そう、モジャの病気は全くもって私のせいじゃないのよ!
「私のせいだったー!」
恩紗が倒れた理由を知った凛は「お見舞いには絶対行かないでください」という通達を華麗にスルーし、自分の目で確かめるべく恩紗宅へ見舞いに走ります。自分に何の症状が無い事を拠り所に、それでも「私のせいじゃない!」と自分に言い聞かせるように呟き、ニコイチに着くと小走りでツナギを脱ぎ、急くように階段を駆け上がり…しかし恩紗の部屋へ入った瞬間やっぱり自分のせいだった事を瞬間的に理解するのでした。あははは。この一連のテンポ&声演技は絶品でした。また「部屋に持ち込んだカタナを舐め回す女子高生」なんて絵面は本作以外では決して見られますまい(笑


「急性スズキ愛好症?」
「この世の中にはいろんな愛好症がありますからね。排泄物愛好症とか」
「何でそれと一緒にされるのよ!?」
というわけで恩紗が罹った奇病とは「急性スズキ愛好症」、要するに凛の持病(笑)がヨダレを介して伝染ってしまったのでした。慢性の凛には自覚症状が無く、一方恩紗は伝染直後の拒否反応で一時的に面白い顔色になったものの今や立派な鈴菌保持者…ではなく「ホンダ菌」でしたね(笑。排泄物と一括りのセリフには笑った。どんな扱いだ。
そしてここから暫し奇病への恐怖というテイでスズキ車dis(笑)が続きます。「GSX750F KATANA」「Tempter」「Savage」そして「FanFan」…ファミリーバイクブーム全盛期に発売されたヤマハの女子向けソフトバイク「ポップギャル」に対抗して発売されたスズキファンファン、こんなの覚えてる人は相当なベテランですよ(笑。750Fは恩紗が言うほど格好悪いとは思わないけど少なくともカタナじゃないわなあ。そんなスズキdisの数々をムッと聞いてる凛が始終いい味出しまくり。


一方自身の運命を呪い、涙ながらに部屋へ駆け込んだ恩紗はベッドに泣き崩れ、すると凛はそんな恩紗へ一気に捲し立てます。
「さっきから聞いてりゃスズキ乗りをゾンビとか吸血鬼みたいに! じゃああんたはいったい何様なのよ!」
「日頃からライダーは平等、バイクに貴賤はないだとか言ってたわよね? あれはただ言ってただけ?」
「心の広いヤツだとアピールして優越感に浸ってただけでしょ?」
「表向きは他人を認めるふりして、他人の価値観を馬鹿にしてたのよ!」
「モジャ、あんたが一番バイクを差別してるのよ!」
恩紗は普段からスズキを小馬鹿にしていたような気が…だからこそ今エピソード冒頭の電車シーンでカットされたセリフが効いてくるんですよね。それをカットしてしまったためここの会話がイマイチ噛み合わない=平等どころかスズキdisのイメージの方が強いため凛のセリフが唐突に感じられてしまった。ともあれ凄い剣幕で捲し立てられた恩紗は何も言い返せずひたすら「ごめんよ…」と涙するのみ、すると凛は聖母の如く微笑み、恩紗を優しく抱き締め――
「モジャ、大丈夫。スズキを怖がらなくていい。もっとスズキを好きになっていい」
奇病の恐怖と罪悪感との狭間で取り乱した恩紗を収めるこの流れには何だか天才的なモノを感じます(笑。抱き締められた恩紗は安らかな表情でムネに顔を埋めて一件落着…ってないい話(?)で終わらないのが本作の面白いトコ。

「恩紗、どうやらお前を救ってあげることができそうだ」
禁断の現場(笑)へ突撃してきた父ちゃん&弟たちは「逆境を拗らせたゆえの奇病」に最も効く治療法「褒め殺し」を始めます。
「スズキってかっこいい!」
「スズキが好きだ!」
「乗るならスズキ!」
「これからはバイクの事をスズキと呼ぼう!」
お姉ちゃんを助けるため心にもない褒め言葉(笑)を立て続けに叫ぶヤン坊ハー坊、一方期せずしてそんなん聞かされた凛はたまりません。この一連シーンはメインのはずの恩紗より隣で呆ける凛の表情につい目が行ってしまった。いい顔してるなあ(笑。ほどなく荒療治の甲斐あってホンダ菌の駆逐に成功し自分を取り戻した恩紗、すると無言のまま部屋を出た凛は黙々とツナギに着替え、Sマークのムネを揺らしてオチ。
「あんたたちなんかにスズキの良さが判ってたまるもんですか!」
拗らせすぎた真性スズキ愛好症患者にはもはや褒め殺しも効かない。

「バイク、何買えばいいですかね?」
Bパート冒頭は今回冒頭で免許証を晒した千雨の問い掛け、というわけでお話は一気に飛んで原作第42話「おすすめ!!」へ。原作時系列だと聖の卒検→新車両納車がこれより前なのですがその辺の辻褄合わせはどうすんだろ。また他にも羽音の初コケ(?)やラーツー話など結構重要かつ面白い話が飛ばされちゃって少々残念。興味がある人は原作コミックを読んでください(ステマ。それはともかく千雨のバイク選びにいきなりテンション全開のバイク部面々…初心者がポロッとこぼした相談事に全力で食い付く教えたがり、そしていつしか相談主を放置し盛り上がってしまうのはバイク乗りの習性か。
「実力があった上にイケメンだったから『王子』なんて呼ばれて…でも俺たちメカニックは『黒子』って呼んでたんだけどな!」
そんなこんなでみなさん揃ってニコイチへ。店に着くとさっそく千雨を父ちゃんに紹介し、すると父ちゃんは中野欽矢の元メカニックだった経歴を話し…手伝いでもGPライダーのマシンをいじっていたとは結構な腕前、さすが水没車を直して売ってるだけの事はあります(笑。そして「王子」に纏わる「黒子」がまさかの前振りだったという。



「そっちはバイクじゃなくてスクーター。スクーターはただの移動の手段さ。レーサーの千雨には向かないな」
カタナの在庫が妙に豊富(笑)な店内をチラリと見回して千雨のバイク選びスタート。SB2まで置いてるとかニコイチあなどれん。そして奧のエリアに並ぶスクーターを切って捨てるこのセリフが車両選びの決定打になるとは。ちなみにここでチラッと映った異形二灯のヘッドライトは世界一格好いいスクーターであるSUZUKI Genma、スクーターには全く興味が無い私ですらこれには乗ってみたいと思った。もう何も言わんでもスズキ製って判る、というかこのデザインはスズキ以外じゃ作れんですよ。スズキってかっこいい! 乗るならスズキ! これからはバイクの事をスズキと呼ぼう!(病人
「このバイクの真価は変幻自在のカスタムベースという所にあるのだ!」
ここから暫し各キャラによるお勧めバイクの演説が始まります。まずは恩紗によるSR400のススメ…って好きで乗ってるSRオーナーにシツレイすぎる口上に笑う。SRがカスタムベースってのは否定しませんがエンブレムまで付け替えちゃうとジョークマシンになってしまう。とはいえこれが結構ギャグじゃないってのがまた。ってな恩紗の演説に食い付く羽音&聖、険しい表情の凛、呆れ果ててる千雨などなどキャラごとのリアクションもそれっぽい。あはは。そんなこんなで各々がお勧めバイクを語り始め、当の千雨を差し置いて各々一歩も引かず火花バチバチ!→決着は!?



「何故相撲!?」
今や千雨のバイク選びは各々のアイデンティティ=バイク乗りの意地を賭けた闘いに発展し…などなどバイクが絡むと本人不在でアツくなっちゃう辺りも判る気がする。そういう人結構いるものね。とはいえ私は他人の趣味に口を出さないのが信条なので、自分の趣味を押し付けるような野暮はしないしされたくない。結果「好きなのに乗れば?」という何のアドバイスにもならない答えを返すしかないのだなあ。一方千雨は先輩方の並々ならぬ意気込みに恐れをなして三十六計逃げるが勝ち。
「姫が選んだバイクに誰が文句を付けられようか」
その晩の中野家では「王子」から「姫」へ王位継承が執り行われます。原作でもここから先の千雨には泣きぼくろが付くので黒子継承は単なる一発ギャグではないのだけれど…その継承を感慨深げに見守る母ちゃんの表情といい、いったいどこまでがファンタジーなのかよう判りません(笑。まあバイクが喋ったり永遠の女子高生が存在する世界だから些細なコトを気にしても仕方ないか。
明けて翌朝 千雨姫の王家の力が効いたのか、信号待ちのみなさんは千雨の選択に任せる事で合意。ちなみに原作のこのシーンに聖はいませんがアニメでは例のカブに乗って参加してます。つまりアニメの聖はこの時点でカブに代わる新車が納車されていないって事です。自転車やホンダ菌も面白かったけれど、全体の構成を考えたらその尺で聖の卒検→納車→自走での初ツーリングエピソードをやった方がバイクライフアニメとしてすっきり収まった気がする。次回最終回にその尺は無さそうですし…あと1話あればなあ。ううむ。
「スクーターはバイクじゃないので公道を走ってもいいですよね」
というわけでバイク部のみなさんのトコへ颯爽と現れた千雨のバイクはHONDA PCX150でした。現役レーサー千雨がスクーターを選んだのは先の恩紗の前振りもあって意外な結末ですが、OPで既に公開されちゃってるためイマサラっちゃイマサラ感が漂ってしまわなくなくも。様々な条件さえ許せばPCX無しの羽音タンデムバージョンで第9~11話のOPを作り、次回第12話のみPCXバージョンで作ればカンペキでしょうがなかなかそこまで出来ない事情も判るのでナントモ難しい。しかし本作に限らずメンバー追加型の作品に於いてOPが最大のネタバレになってしまうのは世の常とはいえどうにかならんかね。HPやその他情報源は意識してシャットアウトすればいいけどOPはそうもいかないし。ともあれ千雨初出の頃から言い続けていた「バイクは公道なんかで乗るものじゃない」というポリシーと上手く両立(?)させた綺麗なオチ、これにて晴れて全員バイク乗りとなりみんな揃ってツーリング!…の尺が無いのがホントもったいない。
例によって今回もかなりオミットされていましたが記事中で指摘した部分以外はほぼ違和感を覚えず、全体的に本作が持つギャグテイストをテンポ良くまとめたと思います。ようやく調子が出てきた? と思ったら次回はもう最終回。何だかんだ言いながら楽しんでいたので終わってしまうのはじつに寂しい。というか1クールがあっという間すぎて怖いですよ。

アイキャッチは「最新バイク+各メーカー担当キャラ」で通したこれまでから大きく変わってヘルメット。今回ようやくアイキャッチ当番が回ってきた千雨がホンダユーザーって事で羽音と被った苦肉の策? Arai RX-7と言えばシールドにホックが付いていた時代からAraiのフラッグシップモデルで、1980年当時に40,000円もした事を考えると最新モデルで54,000円というプライスは割安かもしれない(当時の広告)。黒オレンジの帽体が結構ド派手な左側のメットはKabuto KAZAMI、パッと見フルフェイスですが前部がガバッと開くいわゆるシステムヘルメットであります。解放感と安全性を両立させた新機軸ですが…システムメットって思った以上に重いので選択肢には無いなあ。おっさん的にはやはり普通のフルフェイスが一番です。
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この終盤で禁断のエピソード連発!?

前回の教習所騒動から一転(?)して今回アバンは千雨が無事取得した普自二の免許アップから。ちさにゃん免許(笑)にマジレスするのも何だけど今回は有効期間が1ヶ月短く(正しくは平成27年07月06日まで)、また「二・小・原」の取得年月日が「平成23年06月03日」と羽音マンマで苦笑い。おそらく羽音の免許データからコピペ改変でしょうが、交付日はきちんと「平成24年06月07日」に直してあるのだから他もきちんとチェックすればと思わなくなくも。ちなみに序盤の凛と羽音の免許証画像は特にツッコミ所なし、対して第8話での聖の免許は同話前出のフルビット免許含めて結構記載ミスが多い。やはり話数が進むといろんなトコに余裕が無くなってくるのだろうか。
「ロードレーサーは最高だ!」
そんな千雨とすれ違った自転車野郎の叫びから原作第33話「じてんしゃ!!」に突入。これは原作連載時にちょっとした騒ぎになったエピソード(「クソ虫ペダル」でググればすぐ判明します)なのでオミット必至、現に今回のアニメシリーズでも当然のようにカットされていたためアニメ化の目は無いだろう…と思っていただけに、ナニゲに普通に始まってちょっと笑ってしまった。ちなみにコミックス収録版は雑誌連載版に比べて大幅にマイルド表現に改変されており、今回のアニメ化もコミックス版準拠(あえて言えばコミックス版をさらにマイルド化)となっています。それでもよくこのエピソードをアニメ化したなあ。


「車なら馬力、バイクなら排気量、自転車でそれに相当するのは自転車に掛けた金額」
というわけで自転車話。私は自転車乗りでは無いので「自転車に掛けた金額でヒエラルキーが決まる」という文化に直面した事はありませんが、いろんな趣味を見回してみればどのジャンルにもそういう層が一定数存在するのも確か。何にせよ良いモノは高いのが通例、どうせなら財布が許す限り良いモノを使いたいのも人情で、その金額分を有効活用し本人が満足していれば何の問題も無いのですが…それが「これだけカネ掛けちゃってる俺様スゲー!」に転化しちゃうと傍目には結構痛々しい。そしてその「モノ」がその「人」にそぐわない事が露呈してしまうと一気にみっともない事になる。だから芸能人格付けチェックみたいな成金晒しが盛り上がるのでしょう。ちなみに単車乗りでもそういう人はそれなりにいるでしょうが、貧乏人枠に所属している私はむしろ「カネ掛けてない自慢(安く買った自慢)」の方が多かった気がする。
「おい!そこのスズキのアルト! その車値段はいくらだ!?」
今回の自転車話は小ネタのオミットが多々ありながらも基本的に原作マンマ。見切り発進の自転車野郎をスイっと抜いてニンマリする恩紗の表情はアニメ効果でいい感じに小憎らしく(笑。通りすがりのアルトに値段を訊くカットは原作(スイフト)から改変ですが、今のスイフトはビミョーに高いので100万自慢にそぐわなかった? 続く70万の中古雀は新車ならいい値段(初期型でも新車130万円くらい?)なので金額ヒエラルキーとして傍目にはビミョーかも。まあそこを中古車価格で力技判定しちゃう辺り純粋(?)に「使った金額至上主義」って事なのでしょう。金額パワーで恩紗をドーン!と蹴散らし、自転車に掛けた金額と交通弱者の鎧を纏ってロードキングの称号を憚らない自転車野郎でしたが、しかし本物のブルジョア様には敵わなかったというオチ。


そこからシーンがパッと変わって雨天の朝の駅。凛も恩紗もさすがに雨降りの日は電車通学に切り替えるようで…というわけで原作第30話「びょーき!!」が始まります。これも内容的にアニメ化は難しいと思っていたエピソードなので普通に始まって驚き。ちなみにこのエピソードは原作第4巻(千雨受験回の直後)収録ですが時系列にほとんど無関係なためこのタイミングでも違和感は無く、千雨参戦を一気に見せた後のインターミッションとして上手く入れ替えたと思います。というかこの馬鹿すぎるエピソードのアニメ化自体が信じられん(笑
「凛、私がヨダレ垂らして寝こけてたなんてクラスのみんなに言いふらさないでくれよ」
お話の発端はシートで寝ていた恩紗が手に落ちた凛のヨダレをペロリと舐めてしまった事。落としたヨダレを舐められた凛の気まずさ、一方自分のヨダレと勘違いして舐めてしまった恩紗の気まずさ…などなどビミョーな雰囲気で終えた通学シーンがまさかあんな大惨事に繋がるとは原作時にも全く予想できませんでした。原作ではここでオサムちゃん人形を肴に「スズキに惚れ込む凛のバイクライフスタイル」を恩紗が褒めるシーンがあり、それが今回のヤマ場に繋がるのですが、アニメではまるっとオミットされてしまったため、恩紗に迫る凛の言葉が弱くなってしまって少々残念。参考までにカットされたセリフを下に書いときます。興味がある人は反転してどうぞ。
恩紗:バイクってのはさ、どのメーカーのどのバイクに乗るかより、どうやって乗るかの方が大事だろ? その点そうやってグッズまで集めて惚れ込んで乗ってる凛が正直…羨ましいよ

「何か汚いモノを口にしたとか無かった?」
さてその日の授業中に面白い顔色でぶっ倒れた恩紗は即救急車で運ばれてしまいます。ほんとに面白い顔色で笑う。搬送されていく恩紗を見送りながら汚いモノ(笑)に心当たりがある凛は羽音の言葉にドキリ、しかし三日経っても学校に来ない理由が「原因不明の奇病」と聞き、その間 凛自身には何も起きていない事からホッと一息。私から何か伝染ったなら私が奇病に罹ってるって事、でも私は病気じゃない、そう、モジャの病気は全くもって私のせいじゃないのよ!
「私のせいだったー!」
恩紗が倒れた理由を知った凛は「お見舞いには絶対行かないでください」という通達を華麗にスルーし、自分の目で確かめるべく恩紗宅へ見舞いに走ります。自分に何の症状が無い事を拠り所に、それでも「私のせいじゃない!」と自分に言い聞かせるように呟き、ニコイチに着くと小走りでツナギを脱ぎ、急くように階段を駆け上がり…しかし恩紗の部屋へ入った瞬間やっぱり自分のせいだった事を瞬間的に理解するのでした。あははは。この一連のテンポ&声演技は絶品でした。また「部屋に持ち込んだカタナを舐め回す女子高生」なんて絵面は本作以外では決して見られますまい(笑


「急性スズキ愛好症?」
「この世の中にはいろんな愛好症がありますからね。排泄物愛好症とか」
「何でそれと一緒にされるのよ!?」
というわけで恩紗が罹った奇病とは「急性スズキ愛好症」、要するに凛の持病(笑)がヨダレを介して伝染ってしまったのでした。慢性の凛には自覚症状が無く、一方恩紗は伝染直後の拒否反応で一時的に面白い顔色になったものの今や立派な鈴菌保持者…ではなく「ホンダ菌」でしたね(笑。排泄物と一括りのセリフには笑った。どんな扱いだ。
そしてここから暫し奇病への恐怖というテイでスズキ車dis(笑)が続きます。「GSX750F KATANA」「Tempter」「Savage」そして「FanFan」…ファミリーバイクブーム全盛期に発売されたヤマハの女子向けソフトバイク「ポップギャル」に対抗して発売されたスズキファンファン、こんなの覚えてる人は相当なベテランですよ(笑。750Fは恩紗が言うほど格好悪いとは思わないけど少なくともカタナじゃないわなあ。そんなスズキdisの数々をムッと聞いてる凛が始終いい味出しまくり。


一方自身の運命を呪い、涙ながらに部屋へ駆け込んだ恩紗はベッドに泣き崩れ、すると凛はそんな恩紗へ一気に捲し立てます。
「さっきから聞いてりゃスズキ乗りをゾンビとか吸血鬼みたいに! じゃああんたはいったい何様なのよ!」
「日頃からライダーは平等、バイクに貴賤はないだとか言ってたわよね? あれはただ言ってただけ?」
「心の広いヤツだとアピールして優越感に浸ってただけでしょ?」
「表向きは他人を認めるふりして、他人の価値観を馬鹿にしてたのよ!」
「モジャ、あんたが一番バイクを差別してるのよ!」
恩紗は普段からスズキを小馬鹿にしていたような気が…だからこそ今エピソード冒頭の電車シーンでカットされたセリフが効いてくるんですよね。それをカットしてしまったためここの会話がイマイチ噛み合わない=平等どころかスズキdisのイメージの方が強いため凛のセリフが唐突に感じられてしまった。ともあれ凄い剣幕で捲し立てられた恩紗は何も言い返せずひたすら「ごめんよ…」と涙するのみ、すると凛は聖母の如く微笑み、恩紗を優しく抱き締め――
「モジャ、大丈夫。スズキを怖がらなくていい。もっとスズキを好きになっていい」
奇病の恐怖と罪悪感との狭間で取り乱した恩紗を収めるこの流れには何だか天才的なモノを感じます(笑。抱き締められた恩紗は安らかな表情でムネに顔を埋めて一件落着…ってないい話(?)で終わらないのが本作の面白いトコ。

「恩紗、どうやらお前を救ってあげることができそうだ」
禁断の現場(笑)へ突撃してきた父ちゃん&弟たちは「逆境を拗らせたゆえの奇病」に最も効く治療法「褒め殺し」を始めます。
「スズキってかっこいい!」
「スズキが好きだ!」
「乗るならスズキ!」
「これからはバイクの事をスズキと呼ぼう!」
お姉ちゃんを助けるため心にもない褒め言葉(笑)を立て続けに叫ぶヤン坊ハー坊、一方期せずしてそんなん聞かされた凛はたまりません。この一連シーンはメインのはずの恩紗より隣で呆ける凛の表情につい目が行ってしまった。いい顔してるなあ(笑。ほどなく荒療治の甲斐あってホンダ菌の駆逐に成功し自分を取り戻した恩紗、すると無言のまま部屋を出た凛は黙々とツナギに着替え、Sマークのムネを揺らしてオチ。
「あんたたちなんかにスズキの良さが判ってたまるもんですか!」
拗らせすぎた真性スズキ愛好症患者にはもはや褒め殺しも効かない。

「バイク、何買えばいいですかね?」
Bパート冒頭は今回冒頭で免許証を晒した千雨の問い掛け、というわけでお話は一気に飛んで原作第42話「おすすめ!!」へ。原作時系列だと聖の卒検→新車両納車がこれより前なのですがその辺の辻褄合わせはどうすんだろ。また他にも羽音の初コケ(?)やラーツー話など結構重要かつ面白い話が飛ばされちゃって少々残念。興味がある人は原作コミックを読んでください(ステマ。それはともかく千雨のバイク選びにいきなりテンション全開のバイク部面々…初心者がポロッとこぼした相談事に全力で食い付く教えたがり、そしていつしか相談主を放置し盛り上がってしまうのはバイク乗りの習性か。
「実力があった上にイケメンだったから『王子』なんて呼ばれて…でも俺たちメカニックは『黒子』って呼んでたんだけどな!」
そんなこんなでみなさん揃ってニコイチへ。店に着くとさっそく千雨を父ちゃんに紹介し、すると父ちゃんは中野欽矢の元メカニックだった経歴を話し…手伝いでもGPライダーのマシンをいじっていたとは結構な腕前、さすが水没車を直して売ってるだけの事はあります(笑。そして「王子」に纏わる「黒子」がまさかの前振りだったという。



「そっちはバイクじゃなくてスクーター。スクーターはただの移動の手段さ。レーサーの千雨には向かないな」
カタナの在庫が妙に豊富(笑)な店内をチラリと見回して千雨のバイク選びスタート。SB2まで置いてるとかニコイチあなどれん。そして奧のエリアに並ぶスクーターを切って捨てるこのセリフが車両選びの決定打になるとは。ちなみにここでチラッと映った異形二灯のヘッドライトは世界一格好いいスクーターであるSUZUKI Genma、スクーターには全く興味が無い私ですらこれには乗ってみたいと思った。もう何も言わんでもスズキ製って判る、というかこのデザインはスズキ以外じゃ作れんですよ。スズキってかっこいい! 乗るならスズキ! これからはバイクの事をスズキと呼ぼう!(病人
「このバイクの真価は変幻自在のカスタムベースという所にあるのだ!」
ここから暫し各キャラによるお勧めバイクの演説が始まります。まずは恩紗によるSR400のススメ…って好きで乗ってるSRオーナーにシツレイすぎる口上に笑う。SRがカスタムベースってのは否定しませんがエンブレムまで付け替えちゃうとジョークマシンになってしまう。とはいえこれが結構ギャグじゃないってのがまた。ってな恩紗の演説に食い付く羽音&聖、険しい表情の凛、呆れ果ててる千雨などなどキャラごとのリアクションもそれっぽい。あはは。そんなこんなで各々がお勧めバイクを語り始め、当の千雨を差し置いて各々一歩も引かず火花バチバチ!→決着は!?



「何故相撲!?」
今や千雨のバイク選びは各々のアイデンティティ=バイク乗りの意地を賭けた闘いに発展し…などなどバイクが絡むと本人不在でアツくなっちゃう辺りも判る気がする。そういう人結構いるものね。とはいえ私は他人の趣味に口を出さないのが信条なので、自分の趣味を押し付けるような野暮はしないしされたくない。結果「好きなのに乗れば?」という何のアドバイスにもならない答えを返すしかないのだなあ。一方千雨は先輩方の並々ならぬ意気込みに恐れをなして三十六計逃げるが勝ち。
「姫が選んだバイクに誰が文句を付けられようか」
その晩の中野家では「王子」から「姫」へ王位継承が執り行われます。原作でもここから先の千雨には泣きぼくろが付くので黒子継承は単なる一発ギャグではないのだけれど…その継承を感慨深げに見守る母ちゃんの表情といい、いったいどこまでがファンタジーなのかよう判りません(笑。まあバイクが喋ったり永遠の女子高生が存在する世界だから些細なコトを気にしても仕方ないか。
明けて翌朝 千雨姫の王家の力が効いたのか、信号待ちのみなさんは千雨の選択に任せる事で合意。ちなみに原作のこのシーンに聖はいませんがアニメでは例のカブに乗って参加してます。つまりアニメの聖はこの時点でカブに代わる新車が納車されていないって事です。自転車やホンダ菌も面白かったけれど、全体の構成を考えたらその尺で聖の卒検→納車→自走での初ツーリングエピソードをやった方がバイクライフアニメとしてすっきり収まった気がする。次回最終回にその尺は無さそうですし…あと1話あればなあ。ううむ。
「スクーターはバイクじゃないので公道を走ってもいいですよね」
というわけでバイク部のみなさんのトコへ颯爽と現れた千雨のバイクはHONDA PCX150でした。現役レーサー千雨がスクーターを選んだのは先の恩紗の前振りもあって意外な結末ですが、OPで既に公開されちゃってるためイマサラっちゃイマサラ感が漂ってしまわなくなくも。様々な条件さえ許せばPCX無しの羽音タンデムバージョンで第9~11話のOPを作り、次回第12話のみPCXバージョンで作ればカンペキでしょうがなかなかそこまで出来ない事情も判るのでナントモ難しい。しかし本作に限らずメンバー追加型の作品に於いてOPが最大のネタバレになってしまうのは世の常とはいえどうにかならんかね。HPやその他情報源は意識してシャットアウトすればいいけどOPはそうもいかないし。ともあれ千雨初出の頃から言い続けていた「バイクは公道なんかで乗るものじゃない」というポリシーと上手く両立(?)させた綺麗なオチ、これにて晴れて全員バイク乗りとなりみんな揃ってツーリング!…の尺が無いのがホントもったいない。
例によって今回もかなりオミットされていましたが記事中で指摘した部分以外はほぼ違和感を覚えず、全体的に本作が持つギャグテイストをテンポ良くまとめたと思います。ようやく調子が出てきた? と思ったら次回はもう最終回。何だかんだ言いながら楽しんでいたので終わってしまうのはじつに寂しい。というか1クールがあっという間すぎて怖いですよ。

アイキャッチは「最新バイク+各メーカー担当キャラ」で通したこれまでから大きく変わってヘルメット。今回ようやくアイキャッチ当番が回ってきた千雨がホンダユーザーって事で羽音と被った苦肉の策? Arai RX-7と言えばシールドにホックが付いていた時代からAraiのフラッグシップモデルで、1980年当時に40,000円もした事を考えると最新モデルで54,000円というプライスは割安かもしれない(当時の広告)。黒オレンジの帽体が結構ド派手な左側のメットはKabuto KAZAMI、パッと見フルフェイスですが前部がガバッと開くいわゆるシステムヘルメットであります。解放感と安全性を両立させた新機軸ですが…システムメットって思った以上に重いので選択肢には無いなあ。おっさん的にはやはり普通のフルフェイスが一番です。
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