2016-10-14(Fri)
アイカツスターズ! #27 小さなドレスの物語
「憧れ」から一歩踏み出す「目標」の模索。

ひめ先輩はひめ先輩、私は私。

ファーストカットはファッション雑誌を眺めて秋物の話題に盛り上がる三人娘。見ていると欲しくなるのは世の常でローラはさっそく週末のお買い物に話題を振るも、その日はちょうどマイリトルハートのオータムコレクションの日で――
「憧れちゃうよね、S4しか着られない特別なドレス」
オンナノコらしい自然なトークから今回のネタ振りへ。ここは雑誌を眺める表情から、背表紙を差し出すゆめの仕草から、プレミアムドレスに憧れる小春ちゃんの表情から、全てのカットがかわいらしく、また描線が整っているだけではなくちょっとした仕草や表情変化もきっちり動いていて、アバン早々っから作画の気合いが伝わってきます。こういう絵を見ると見る方も気合いが入るってもの。
それはそうとさりげなく語られた「プレミアムドレスはS4しか着られない」という発言に驚きつつも妙に納得したり。これまで2クールに渡って描かれた一年生組(メインキャラ)のお話に作品(販促)の肝である「プレミアムドレス」が全く絡まなかった、いや絡む兆候すら見せなかったのはこういう事だったのかと。そもそもトップが君臨する作中世界にてオーダーメイドの一品物であるプレミアムドレスを一年生のヒヨッコたちがそうそう着られるはずもなく、アイドルピラミッドの頂点を象徴する特別なドレスの位置付けとしてむしろこの方が正当のような気がする。販促的にはどうなんだろ?とは思うけれど。
さてCM明けてAパート冒頭は珍しいアングルからドレスメイクを始めるゆめ。作品的には結構重要な販促画面のはずなのに何だか久しぶりに映ったような? 新ドレスを出す時などマメにこの画面操作を映し込めば説得力的にも販促的にも良いような気がするのにね。ともあれこの筐体内視点の演出を始めとして、今回はアングル取りや細部演出が凝りに凝っていて、どのシーンを見ても画面構成が面白くて仕方なかった。
「ゆめちゃん! うふふ…」
ドレスメイクに頭を捻るゆめは不意に掛けられた声の主を探してキョロキョロ、するとメイクルームの二階からひめ様が笑顔を湛えて手招きしていました。いちいち「二階へ上がってらっしゃい」などと口にせず仕草だけで招く演出は妙にリアルで気が利いてます。そして初めて上がった二階に驚くゆめ。そういやメイクルームの二階は今回初披露? 雰囲気からして誰でも気軽に入れるような場所では無さげで、特に仕切りは無いにせよ実質S4(&幹部)専用室っぽい? ここで話題が「ドレスデザインの打ち合わせ」へ移り、ってなトコへリリエンヌが現れて、何だかんだで歌組三世代が揃って打ち合わせへゴー。ここもまた細かい表情描写や動きやアングル取りへの拘りが見えて思わず見入り。登場シーンの寒波から「たとえ火の中 水の…」と倒れるリリエンヌもいい味出しまくりですが…もはや倒れ芸になってて笑う。グッ!

というわけでロケがマイリトルハートの社屋へ移って新ドレスの打ち合わせシーンへ。大人たちの前に立ち開発コンセプトなどを説明するひめ様はさすが堂々としたもの、と思ったらリリエンヌ曰く「ブランドを作った本人」とのこと。歌組トップなのにドラマやファッションショーもこなし、さらにドレスブランド立ち上げまでこなしちまう…これではまるで「あいつ一人いればいいんじゃないかな?」状態ではなかろうか(笑。ひめ様といえばメタ的には「あの力」の現役第一人者みたいな見方もありますが、歌以外の才能がこれだけ溢れていると逆に「あの力」の神秘性が薄まってしまうような気がしなくなくも(略。そんな会議はひめ様の満面笑顔で締められ、次のカットは食堂にてカレーを食べてほっこりの二人。この表情のダイナミックレンジの広さも良い良い(笑。その一方で一人優雅にウインナコーヒーを啜るリリエンヌの超俗感が良いね。このテのキャラは人前で普通の食事をしてはいけないのです(笑。まあ第19話ではゆず先輩から差し入れられたクレープをぱくぱく食べていたので意外と大食いだったりして。人目が無くなると大盛りカツ丼をかっ込んでたりするのかも。
「ひめ先輩でも迷う事があるんですね」
「だってドレスには無限の可能性があるもの」
そんなランチタイムにてひめ様は新作ドレスに絡めて今回のキーワード、そして「人を笑顔にする」というコンセプトをさりげなく。あれこれ悩むのは決して悪い事ではなく、むしろ無限の可能性があればこそ人は悩んで大きくなるのです。ソッソッソクラテスかプラトンかっ。
「自らのドレスを作ってブランドを立ち上げる…そういうS4に私はなりたいのです!」
ひめ様のお悩みに絡めて明らかになったリリエンヌの目標は、ひめ様と同様に自らのブランドを立ち上げる事でした。これは諸設定を見てある程度知っていたとはいえ作中的には少々唐突なカミングアウトだったかも。病弱描写の合間にドレスへの特段の思いを数シーン入れておけばより説得力が増した感じ。またブランド立ち上げが最終目標なら美組の方が理に適っている気がするけれど…「自らのブランドドレスを着てステージで歌う」事を目標とするなら歌組で正解か。ちょっとした言い回しの違いで意味合いが変わってしまうのでニホンゴは難しい。そして今回テーマへの斬り込みへ。
「ゆめちゃんはどんなS4になりたいの?」
「私はひめ先輩みたいなS4になりたいです!」
「え?」
「ひめ先輩みたいにみんなを笑顔にして、ひめ先輩みたいに誰からも愛されて、ひめ先輩みたいに…」
「ゆめちゃん! 私を目標にしてくれて嬉しいわ。でも本当にそれでいいのかしら?」
リリエンヌの強い思いを呼び水に語られたゆめ自身の目標、それは「ひめ先輩みたいな」というものでした。最初のきっかけが「憧れ」である事はよくある話で、その存在を目標とするのもお約束、しかしそれを最終目標にしてしまっては「憧れ」以上のものに決してなれない。あなたが本当にやりたい事・目指したいものは何? 要するに「あなたは何故アイドルをやっているの?」という、言うてしまえばシリーズの定番たる問い掛けであります。このシーンは楽しそうに指を折るゆめの無邪気さと、対するひめ様の曇り顔、そして微妙なニュアンスをサッと読んで目を伏せるリリエンヌの三者三様が見どころ。各キャラの胸中がいい感じに伝わってきます。

説明中に示されたS4各位のブランド一覧。DCDをやらない私は作中描写がほとんど無い本作のブランドについてほとんど意識しておらず、これらブランドを知らなくとも現状何の不都合もない「扱いの薄さ」にイマサラながら驚いた。つまりメイン視聴者に対しブランドやプレミアムドレスへの憧れを引き出すに至らないと思われ、さらに言うなら売りであるはずの「ドレスメイク(グリッター)」の描写もほとんど見られず、要するにこの現状はゲームの販促アニメとしてやっぱりどうなの?と思わなくなくも(略

「みんなはどんなS4になりたいんだろう…」
ひめ様の言葉の意味が判らないゆめは学園に戻ると一人考え込んでしまいます。何せ目標だった本人から否定されてしまってはどうしていいのか判りません。するとゆめは自分同様S4を目指す仲間たちへ各々が抱く「目標」を聞いて回ることに。
「歌もダンスも完璧にこなせるウルトラS4よ!」
「香澄夜空とは違うタイプのトップモデルを目指してるの」
「べっ、別にすばるきゅんと共演したいからS4になる訳じゃありませんわよ!」
丸目連発(笑)のインタビューシーンで語られた各々の目標。どのカットもいちいちよく動き、また多彩な表情描写の効果もあり、短い列記にも関わらず各々の考え方がきっちり印象付けられます。ゆめのほっぺた良く伸びるなー(笑。ともあれみなさんそれぞれ確固たる目標を持っていて、ゆめのように「○○先輩みたいになりたい」というコピー願望の子は見当たらず――
「そうだな…私は夜空先輩みたいなS4になりたい」
その晩寮部屋での会話にてようやく自分と同じ考えを聞いて一瞬喜ぶゆめ。
「と思ってたんだけど…今は自分らしさを見つけたい」
ところが小春ちゃんもまた「憧れ」から一歩踏み出した考えを持っていたのです。ここは一連のフェイントに見事に乗った表情描写が絶品で、小春ちゃんの言葉に一喜一憂するゆめの心の動きが手に取るように伝わってきました。思考をぐるぐるさせて布団を被る表情も最高の上、かわいすぎるだろうこれは。

一方その頃TV局では仕事終わりのひめ様とすばる君が偶然行き会い、流れのままS4リムジンにて一緒に帰る事に。車中にて渡された「Autum Collection」のチケットをよく見ると開催日が「9月15日」になっていてちょっと笑った。これって第23話で描かれたゆず様ライブと同じ日なのよね。コピペ改変ミス?
「確かお前も一年の頃そんな事あったよな?」
そんなこんなで車中では虹野ナントカ(笑)の予想を超えたステージングについて、さらにそれに絡めたひめ様自身の過去ステージについてすばるきゅんの突撃が始まります。作中ではほとんど崇拝対象であるひめ様と思いっきりフランクに話す様子は何だか新鮮で、というかひめ様を「お前」呼ばわりできるのは彼くらいでしょう(笑。同学年のトップ同士だから気安いのかも。ともあれ以前図書館ライブラリにて確認した歌組オーディションでのアレについて訊く絶好のチャンスとばかりに、極々自然な会話からいきなり核心を突くすばる君のセリフには見ているこっちもドキドキものでした。またこの時のひめ様の表情芝居、迂闊に答えられない事を訊かれて困惑する横顔が非常に素晴らしかった。ほんと今回は作画&演出が良い。はたして何と答える!? と思ったらひめ様の答えを待つ一瞬の間の後すぐに学園へ到着してしまって緊張の問答はとりあえず幕引き。ううう! なんと焦らしやがる!
「結城すばる。キミに頼みがある」
ところが気を持たせた先のシーンは前振りで、リムジンから降りたすばる君を迎えた意外な人物の言動こそがこの一連の肝であった事が判ります。神妙な表情で対峙した学園長はいったい何を頼むのか? といった所でAパート引き。こりゃ気になるわー。

CM明けてBパート冒頭は超満員のセンターステージに立つゆめ。そんな大舞台にて今回の課題たる「どんなS4に?」の質問へ「白鳥ひめ先輩みたいな」と答えてシラける客席→焦って叫び、しかしそれは授業中の居眠り夢だったというお約束の一連にニマニマほっこり。「人に訊くな!」→「人の話を聞け!」の流れも面白かった(笑。それほどまでに思い詰めてるゆめを見るローラの表情も良く、授業後も引き続き思い悩んでいる相方へ素っ気なくも親身になって寄り添うシーンへ上手く繋がっています。「考えるのやめたら?」と言われてふて腐れるゆめの表情も良かった(笑。落ち込むゆめと励ますローラの立場を視覚的にきっちり示すアングル取りも絶妙。

「じゃあさ、歴代のS4を調べてみるのも面白いじゃない?」
煮詰まったゆめへのカンフル剤として過去のS4を掘り起こすローラ。そのライブラリ画面にまず現れたのは第16話ラストにて学園長の机に置かれた写真の主でした。制服どおり彼女は四ツ星の元S4で、名前は「雪乃ほたる」…この子の存在は「あの力」に関する大きな鍵になりそうです。ここで彼女の経歴が少しは明かされる?と思ったけれどサッサと画面が切り替わってしまって少々拍子抜け。ううむ引っ張るねえ。若かりし日のアンナ先生や桃子先生も顔を連ね…玉五郎先生クリソツなタマエさんとはいったい?
「こうして見るとみんなすごい個性的」
「きっと歴代のS4の中に、誰かみたいになりたいって目標の人はいなかったんじゃない?」
お歴々の強烈な個性にアテられたゆめへローラから会心の一撃。誰かのコピーを目指しているようではダメ=個性の大切さに改めて気付いたゆめでしたが。

コピーではダメな事に気付いたはいいけれどどうしていいのか判らない。するとゆめはそのヒントだけでも掴もうと個性の塊であるリリエンヌの部屋を訪れます。リリエンヌの部屋は下っ端と違って一人部屋っぽく、大きな本棚が設えられ、それっぽい調度品が置かれたインテリアを見ればいかにもツンドラ歌姫の部屋っぽい。ゆめがパジャマ姿で訪れた辺り建物自体は同じ寮なのかな。
「リリィ先輩はどうしてオリジナルブランドを立ち上げたいと思ったんですか?」
目標を見失って戸惑うゆめが強い信念を持つ先輩の話を聞く、というテイで語られるリリエンヌの過去。なるほど新キャラの掘り下げをヒロインの意識改革に絡めた上手いやり方であります。
「運命を引き寄せるのも抗うのもあなた次第」
幼い頃にゆずからもらった本に衝撃を受け、それをきっかけにドレスに目覚めたリリエンヌは「自らが愛するドレスを着てステージに立ちたい」と思い至った。つまりゆずがこの本を持ってこなかったら今の自分は存在しない、だからこれは紛れもなく運命である…ゆめがアイドルを目指した根本的なきっかけが未だ描かれていない辺り、ひょっとしたらその辺に何かしらの答えがあるのかもしれない。ゆめが持つ憧れの本質というか、ひめ様の何処に惹かれたのか?…その要素の究極点こそがゆめが目指すべき道なのでしょう。

そんなこんなでマイリトルハートのオータムコレクション当日へ。まずはレアドレスの披露が始まり、新作デザインを見てストレートに盛り上がる三人娘…の一方で真剣にメモを取るリリエンヌが印象的であります。そして照明がドンと落とされミューズたるひめ様の登場へ。
「みなさんこんにちは、白鳥ひめです。こんなに多くの方とお会いできて嬉しいです」
「私も嬉しいです!」
感激のあまりTVと会話するお婆ちゃん状態になってるゆめかわいい(笑。ランウェイを歩きながら「笑顔」をキーワードに話すひめ先輩、その思いがピンポイントに込められた視線と、ひめ様の思いを受け止めるゆめの表情描写の細かさに感心。悩める後輩へのエールとしてこれ以上のものは無いでしょう。
「無限の可能性の中から生まれたプレミアムレアドレス、どうぞご覧ください!」
次の瞬間スポットライトから館内照明へパッと変わって「PREMIUM Rare」の文字が浮かぶ演出も劇的で格好良かった。そして新作プレミアムレア「シークレットダイアリーコーデ」のカードを手に気合いマシマシのひめ様がフィッティングシステムへ飛び込み、新プレミアムドレスのお披露目ステージが始まります。

始まった曲は新EDの「So Beautiful Story」が早くも登場、歌唱はキャラどおりるかさんのソロです。映像は絵本調のEDムービーからDCD準拠?の本棚ステージとなり、歌組トップの渾身ライブを堪能させてくれます。新作ごとに進化が続くムービークオリティは今回も例外ではなく、歌詞に合わせて絶妙に変化する表情や伸びやかなモーションに釘付け。作品初期の衝撃(笑)から半年でここまで取り戻したか。しっとりとした曲調に合わせた忙しすぎないカメラワークも好印象で、それだけにサビ入りにてパァッと弾ける白羽のインパクトがよく効きます。ただ取って付けたように入ったSpAからの超短いアウトロには驚き。曲調を考えるともう少し余韻が欲しかったかも。あとやっぱりウインクが多い。かわいい娘にウインクさせたい気持ちは判りますが、ウインクはキメの一発二発にした方が効くと思う。

今回のひめ様かわいいなあ、と思ってコーデチェンジのキメ顔を比較してみました。画像左列から第11話、第22話、そして今回第27話。以前と比べると口の開きが若干修正され、また前髪のボリュームが少し増してかわいくなった感じ。

「やっぱりひめ先輩は凄いなあ…」
「そうですね」
「リリィ先輩! いつの間に!?」
素晴らしいライブに圧倒されて俯くゆめの背後に突然現れるリリエンヌ。何という神出鬼没! ド派手なアクションで驚くゆめを全く気にせず言葉を続けるマイペースっぷりも良い良い(笑
「確かにひめ先輩は素晴らしい」
「はい。だからずっと憧れてました。でも…ひめ先輩はひめ先輩、私は私ですよね」
ひめ様を讃えるリリエンヌの言葉を聞いてシュンと項垂れるゆめ。しかし次の瞬間顔を上げ笑顔で自分なりの答えを伝えるのでした。ひめ様の凄さを理解しながら、それ以上に大切な「自分らしさ」を心に刻み――
「私、ひめ先輩みたいになりたいなんてもう言いません」
「どんなS4になるかこれからちゃんと考えていきます」
ってなトコへ現れたひめ様へ憧れからの脱却を宣言し、本当の意味でS4への第一歩を踏み出したゆめ。一皮剥けた後輩を温かく見守る先輩たちの笑顔も優しい締めでした。そんな前向き全開なゆめの一方で、Aパート引きの続き=学園長からの頼みを思い出して踵を返すすばる君のヒトコマが重い。回想にて「虹野の事をこれ以上嗅ぎ回らないでくれ」「全ては虹野のため」と深く頭を下げる学園長、M4とはいえ一介の生徒に対しこれほどまで低姿勢でお頼み申す辺り事態の深刻さが窺えます。いかにも悪役だったこれまでの描写は善人のフェイクってのは九分九厘判っていたものの、唐突に描かれた学園長の真意と真摯さには驚くばかり。また今回の所は素直に引き下がったすばる君でしたが、事態の重さを察すればこのまま黙っているとも思えず…「虹野を嗅ぎ回るな」ってのがミソで、つまり妙に仲良さげ(笑)だったひめ様を通じて謎が明かされていく布石のような気がしてならない。明らかにキーパーソンであろう「雪乃ほたる」について触れ始めた事もあり、溜めに溜めた本筋の進行にドキワクが止まらない今日この頃でございます。
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ひめ先輩はひめ先輩、私は私。

ファーストカットはファッション雑誌を眺めて秋物の話題に盛り上がる三人娘。見ていると欲しくなるのは世の常でローラはさっそく週末のお買い物に話題を振るも、その日はちょうどマイリトルハートのオータムコレクションの日で――
「憧れちゃうよね、S4しか着られない特別なドレス」
オンナノコらしい自然なトークから今回のネタ振りへ。ここは雑誌を眺める表情から、背表紙を差し出すゆめの仕草から、プレミアムドレスに憧れる小春ちゃんの表情から、全てのカットがかわいらしく、また描線が整っているだけではなくちょっとした仕草や表情変化もきっちり動いていて、アバン早々っから作画の気合いが伝わってきます。こういう絵を見ると見る方も気合いが入るってもの。
それはそうとさりげなく語られた「プレミアムドレスはS4しか着られない」という発言に驚きつつも妙に納得したり。これまで2クールに渡って描かれた一年生組(メインキャラ)のお話に作品(販促)の肝である「プレミアムドレス」が全く絡まなかった、いや絡む兆候すら見せなかったのはこういう事だったのかと。そもそもトップが君臨する作中世界にてオーダーメイドの一品物であるプレミアムドレスを一年生のヒヨッコたちがそうそう着られるはずもなく、アイドルピラミッドの頂点を象徴する特別なドレスの位置付けとしてむしろこの方が正当のような気がする。販促的にはどうなんだろ?とは思うけれど。
さてCM明けてAパート冒頭は珍しいアングルからドレスメイクを始めるゆめ。作品的には結構重要な販促画面のはずなのに何だか久しぶりに映ったような? 新ドレスを出す時などマメにこの画面操作を映し込めば説得力的にも販促的にも良いような気がするのにね。ともあれこの筐体内視点の演出を始めとして、今回はアングル取りや細部演出が凝りに凝っていて、どのシーンを見ても画面構成が面白くて仕方なかった。
「ゆめちゃん! うふふ…」
ドレスメイクに頭を捻るゆめは不意に掛けられた声の主を探してキョロキョロ、するとメイクルームの二階からひめ様が笑顔を湛えて手招きしていました。いちいち「二階へ上がってらっしゃい」などと口にせず仕草だけで招く演出は妙にリアルで気が利いてます。そして初めて上がった二階に驚くゆめ。そういやメイクルームの二階は今回初披露? 雰囲気からして誰でも気軽に入れるような場所では無さげで、特に仕切りは無いにせよ実質S4(&幹部)専用室っぽい? ここで話題が「ドレスデザインの打ち合わせ」へ移り、ってなトコへリリエンヌが現れて、何だかんだで歌組三世代が揃って打ち合わせへゴー。ここもまた細かい表情描写や動きやアングル取りへの拘りが見えて思わず見入り。登場シーンの寒波から「たとえ火の中 水の…」と倒れるリリエンヌもいい味出しまくりですが…もはや倒れ芸になってて笑う。グッ!

というわけでロケがマイリトルハートの社屋へ移って新ドレスの打ち合わせシーンへ。大人たちの前に立ち開発コンセプトなどを説明するひめ様はさすが堂々としたもの、と思ったらリリエンヌ曰く「ブランドを作った本人」とのこと。歌組トップなのにドラマやファッションショーもこなし、さらにドレスブランド立ち上げまでこなしちまう…これではまるで「あいつ一人いればいいんじゃないかな?」状態ではなかろうか(笑。ひめ様といえばメタ的には「あの力」の現役第一人者みたいな見方もありますが、歌以外の才能がこれだけ溢れていると逆に「あの力」の神秘性が薄まってしまうような気がしなくなくも(略。そんな会議はひめ様の満面笑顔で締められ、次のカットは食堂にてカレーを食べてほっこりの二人。この表情のダイナミックレンジの広さも良い良い(笑。その一方で一人優雅にウインナコーヒーを啜るリリエンヌの超俗感が良いね。このテのキャラは人前で普通の食事をしてはいけないのです(笑。まあ第19話ではゆず先輩から差し入れられたクレープをぱくぱく食べていたので意外と大食いだったりして。人目が無くなると大盛りカツ丼をかっ込んでたりするのかも。
「ひめ先輩でも迷う事があるんですね」
「だってドレスには無限の可能性があるもの」
そんなランチタイムにてひめ様は新作ドレスに絡めて今回のキーワード、そして「人を笑顔にする」というコンセプトをさりげなく。あれこれ悩むのは決して悪い事ではなく、むしろ無限の可能性があればこそ人は悩んで大きくなるのです。ソッソッソクラテスかプラトンかっ。
「自らのドレスを作ってブランドを立ち上げる…そういうS4に私はなりたいのです!」
ひめ様のお悩みに絡めて明らかになったリリエンヌの目標は、ひめ様と同様に自らのブランドを立ち上げる事でした。これは諸設定を見てある程度知っていたとはいえ作中的には少々唐突なカミングアウトだったかも。病弱描写の合間にドレスへの特段の思いを数シーン入れておけばより説得力が増した感じ。またブランド立ち上げが最終目標なら美組の方が理に適っている気がするけれど…「自らのブランドドレスを着てステージで歌う」事を目標とするなら歌組で正解か。ちょっとした言い回しの違いで意味合いが変わってしまうのでニホンゴは難しい。そして今回テーマへの斬り込みへ。
「ゆめちゃんはどんなS4になりたいの?」
「私はひめ先輩みたいなS4になりたいです!」
「え?」
「ひめ先輩みたいにみんなを笑顔にして、ひめ先輩みたいに誰からも愛されて、ひめ先輩みたいに…」
「ゆめちゃん! 私を目標にしてくれて嬉しいわ。でも本当にそれでいいのかしら?」
リリエンヌの強い思いを呼び水に語られたゆめ自身の目標、それは「ひめ先輩みたいな」というものでした。最初のきっかけが「憧れ」である事はよくある話で、その存在を目標とするのもお約束、しかしそれを最終目標にしてしまっては「憧れ」以上のものに決してなれない。あなたが本当にやりたい事・目指したいものは何? 要するに「あなたは何故アイドルをやっているの?」という、言うてしまえばシリーズの定番たる問い掛けであります。このシーンは楽しそうに指を折るゆめの無邪気さと、対するひめ様の曇り顔、そして微妙なニュアンスをサッと読んで目を伏せるリリエンヌの三者三様が見どころ。各キャラの胸中がいい感じに伝わってきます。

説明中に示されたS4各位のブランド一覧。DCDをやらない私は作中描写がほとんど無い本作のブランドについてほとんど意識しておらず、これらブランドを知らなくとも現状何の不都合もない「扱いの薄さ」にイマサラながら驚いた。つまりメイン視聴者に対しブランドやプレミアムドレスへの憧れを引き出すに至らないと思われ、さらに言うなら売りであるはずの「ドレスメイク(グリッター)」の描写もほとんど見られず、要するにこの現状はゲームの販促アニメとしてやっぱりどうなの?と思わなくなくも(略

「みんなはどんなS4になりたいんだろう…」
ひめ様の言葉の意味が判らないゆめは学園に戻ると一人考え込んでしまいます。何せ目標だった本人から否定されてしまってはどうしていいのか判りません。するとゆめは自分同様S4を目指す仲間たちへ各々が抱く「目標」を聞いて回ることに。
「歌もダンスも完璧にこなせるウルトラS4よ!」
「香澄夜空とは違うタイプのトップモデルを目指してるの」
「べっ、別にすばるきゅんと共演したいからS4になる訳じゃありませんわよ!」
丸目連発(笑)のインタビューシーンで語られた各々の目標。どのカットもいちいちよく動き、また多彩な表情描写の効果もあり、短い列記にも関わらず各々の考え方がきっちり印象付けられます。ゆめのほっぺた良く伸びるなー(笑。ともあれみなさんそれぞれ確固たる目標を持っていて、ゆめのように「○○先輩みたいになりたい」というコピー願望の子は見当たらず――
「そうだな…私は夜空先輩みたいなS4になりたい」
その晩寮部屋での会話にてようやく自分と同じ考えを聞いて一瞬喜ぶゆめ。
「と思ってたんだけど…今は自分らしさを見つけたい」
ところが小春ちゃんもまた「憧れ」から一歩踏み出した考えを持っていたのです。ここは一連のフェイントに見事に乗った表情描写が絶品で、小春ちゃんの言葉に一喜一憂するゆめの心の動きが手に取るように伝わってきました。思考をぐるぐるさせて布団を被る表情も最高の上、かわいすぎるだろうこれは。

一方その頃TV局では仕事終わりのひめ様とすばる君が偶然行き会い、流れのままS4リムジンにて一緒に帰る事に。車中にて渡された「Autum Collection」のチケットをよく見ると開催日が「9月15日」になっていてちょっと笑った。これって第23話で描かれたゆず様ライブと同じ日なのよね。コピペ改変ミス?
「確かお前も一年の頃そんな事あったよな?」
そんなこんなで車中では虹野ナントカ(笑)の予想を超えたステージングについて、さらにそれに絡めたひめ様自身の過去ステージについてすばるきゅんの突撃が始まります。作中ではほとんど崇拝対象であるひめ様と思いっきりフランクに話す様子は何だか新鮮で、というかひめ様を「お前」呼ばわりできるのは彼くらいでしょう(笑。同学年のトップ同士だから気安いのかも。ともあれ以前図書館ライブラリにて確認した歌組オーディションでのアレについて訊く絶好のチャンスとばかりに、極々自然な会話からいきなり核心を突くすばる君のセリフには見ているこっちもドキドキものでした。またこの時のひめ様の表情芝居、迂闊に答えられない事を訊かれて困惑する横顔が非常に素晴らしかった。ほんと今回は作画&演出が良い。はたして何と答える!? と思ったらひめ様の答えを待つ一瞬の間の後すぐに学園へ到着してしまって緊張の問答はとりあえず幕引き。ううう! なんと焦らしやがる!
「結城すばる。キミに頼みがある」
ところが気を持たせた先のシーンは前振りで、リムジンから降りたすばる君を迎えた意外な人物の言動こそがこの一連の肝であった事が判ります。神妙な表情で対峙した学園長はいったい何を頼むのか? といった所でAパート引き。こりゃ気になるわー。

CM明けてBパート冒頭は超満員のセンターステージに立つゆめ。そんな大舞台にて今回の課題たる「どんなS4に?」の質問へ「白鳥ひめ先輩みたいな」と答えてシラける客席→焦って叫び、しかしそれは授業中の居眠り夢だったというお約束の一連にニマニマほっこり。「人に訊くな!」→「人の話を聞け!」の流れも面白かった(笑。それほどまでに思い詰めてるゆめを見るローラの表情も良く、授業後も引き続き思い悩んでいる相方へ素っ気なくも親身になって寄り添うシーンへ上手く繋がっています。「考えるのやめたら?」と言われてふて腐れるゆめの表情も良かった(笑。落ち込むゆめと励ますローラの立場を視覚的にきっちり示すアングル取りも絶妙。

「じゃあさ、歴代のS4を調べてみるのも面白いじゃない?」
煮詰まったゆめへのカンフル剤として過去のS4を掘り起こすローラ。そのライブラリ画面にまず現れたのは第16話ラストにて学園長の机に置かれた写真の主でした。制服どおり彼女は四ツ星の元S4で、名前は「雪乃ほたる」…この子の存在は「あの力」に関する大きな鍵になりそうです。ここで彼女の経歴が少しは明かされる?と思ったけれどサッサと画面が切り替わってしまって少々拍子抜け。ううむ引っ張るねえ。若かりし日のアンナ先生や桃子先生も顔を連ね…玉五郎先生クリソツなタマエさんとはいったい?
「こうして見るとみんなすごい個性的」
「きっと歴代のS4の中に、誰かみたいになりたいって目標の人はいなかったんじゃない?」
お歴々の強烈な個性にアテられたゆめへローラから会心の一撃。誰かのコピーを目指しているようではダメ=個性の大切さに改めて気付いたゆめでしたが。

コピーではダメな事に気付いたはいいけれどどうしていいのか判らない。するとゆめはそのヒントだけでも掴もうと個性の塊であるリリエンヌの部屋を訪れます。リリエンヌの部屋は下っ端と違って一人部屋っぽく、大きな本棚が設えられ、それっぽい調度品が置かれたインテリアを見ればいかにもツンドラ歌姫の部屋っぽい。ゆめがパジャマ姿で訪れた辺り建物自体は同じ寮なのかな。
「リリィ先輩はどうしてオリジナルブランドを立ち上げたいと思ったんですか?」
目標を見失って戸惑うゆめが強い信念を持つ先輩の話を聞く、というテイで語られるリリエンヌの過去。なるほど新キャラの掘り下げをヒロインの意識改革に絡めた上手いやり方であります。
「運命を引き寄せるのも抗うのもあなた次第」
幼い頃にゆずからもらった本に衝撃を受け、それをきっかけにドレスに目覚めたリリエンヌは「自らが愛するドレスを着てステージに立ちたい」と思い至った。つまりゆずがこの本を持ってこなかったら今の自分は存在しない、だからこれは紛れもなく運命である…ゆめがアイドルを目指した根本的なきっかけが未だ描かれていない辺り、ひょっとしたらその辺に何かしらの答えがあるのかもしれない。ゆめが持つ憧れの本質というか、ひめ様の何処に惹かれたのか?…その要素の究極点こそがゆめが目指すべき道なのでしょう。

そんなこんなでマイリトルハートのオータムコレクション当日へ。まずはレアドレスの披露が始まり、新作デザインを見てストレートに盛り上がる三人娘…の一方で真剣にメモを取るリリエンヌが印象的であります。そして照明がドンと落とされミューズたるひめ様の登場へ。
「みなさんこんにちは、白鳥ひめです。こんなに多くの方とお会いできて嬉しいです」
「私も嬉しいです!」
感激のあまりTVと会話するお婆ちゃん状態になってるゆめかわいい(笑。ランウェイを歩きながら「笑顔」をキーワードに話すひめ先輩、その思いがピンポイントに込められた視線と、ひめ様の思いを受け止めるゆめの表情描写の細かさに感心。悩める後輩へのエールとしてこれ以上のものは無いでしょう。
「無限の可能性の中から生まれたプレミアムレアドレス、どうぞご覧ください!」
次の瞬間スポットライトから館内照明へパッと変わって「PREMIUM Rare」の文字が浮かぶ演出も劇的で格好良かった。そして新作プレミアムレア「シークレットダイアリーコーデ」のカードを手に気合いマシマシのひめ様がフィッティングシステムへ飛び込み、新プレミアムドレスのお披露目ステージが始まります。

始まった曲は新EDの「So Beautiful Story」が早くも登場、歌唱はキャラどおりるかさんのソロです。映像は絵本調のEDムービーからDCD準拠?の本棚ステージとなり、歌組トップの渾身ライブを堪能させてくれます。新作ごとに進化が続くムービークオリティは今回も例外ではなく、歌詞に合わせて絶妙に変化する表情や伸びやかなモーションに釘付け。作品初期の衝撃(笑)から半年でここまで取り戻したか。しっとりとした曲調に合わせた忙しすぎないカメラワークも好印象で、それだけにサビ入りにてパァッと弾ける白羽のインパクトがよく効きます。ただ取って付けたように入ったSpAからの超短いアウトロには驚き。曲調を考えるともう少し余韻が欲しかったかも。あとやっぱりウインクが多い。かわいい娘にウインクさせたい気持ちは判りますが、ウインクはキメの一発二発にした方が効くと思う。

今回のひめ様かわいいなあ、と思ってコーデチェンジのキメ顔を比較してみました。画像左列から第11話、第22話、そして今回第27話。以前と比べると口の開きが若干修正され、また前髪のボリュームが少し増してかわいくなった感じ。

「やっぱりひめ先輩は凄いなあ…」
「そうですね」
「リリィ先輩! いつの間に!?」
素晴らしいライブに圧倒されて俯くゆめの背後に突然現れるリリエンヌ。何という神出鬼没! ド派手なアクションで驚くゆめを全く気にせず言葉を続けるマイペースっぷりも良い良い(笑
「確かにひめ先輩は素晴らしい」
「はい。だからずっと憧れてました。でも…ひめ先輩はひめ先輩、私は私ですよね」
ひめ様を讃えるリリエンヌの言葉を聞いてシュンと項垂れるゆめ。しかし次の瞬間顔を上げ笑顔で自分なりの答えを伝えるのでした。ひめ様の凄さを理解しながら、それ以上に大切な「自分らしさ」を心に刻み――
「私、ひめ先輩みたいになりたいなんてもう言いません」
「どんなS4になるかこれからちゃんと考えていきます」
ってなトコへ現れたひめ様へ憧れからの脱却を宣言し、本当の意味でS4への第一歩を踏み出したゆめ。一皮剥けた後輩を温かく見守る先輩たちの笑顔も優しい締めでした。そんな前向き全開なゆめの一方で、Aパート引きの続き=学園長からの頼みを思い出して踵を返すすばる君のヒトコマが重い。回想にて「虹野の事をこれ以上嗅ぎ回らないでくれ」「全ては虹野のため」と深く頭を下げる学園長、M4とはいえ一介の生徒に対しこれほどまで低姿勢でお頼み申す辺り事態の深刻さが窺えます。いかにも悪役だったこれまでの描写は善人のフェイクってのは九分九厘判っていたものの、唐突に描かれた学園長の真意と真摯さには驚くばかり。また今回の所は素直に引き下がったすばる君でしたが、事態の重さを察すればこのまま黙っているとも思えず…「虹野を嗅ぎ回るな」ってのがミソで、つまり妙に仲良さげ(笑)だったひめ様を通じて謎が明かされていく布石のような気がしてならない。明らかにキーパーソンであろう「雪乃ほたる」について触れ始めた事もあり、溜めに溜めた本筋の進行にドキワクが止まらない今日この頃でございます。
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