2009-09-18(Fri)

東京マグニチュード8.0 #11 悠貴へ…

弟くんの死を認識した未来は一人自宅へ。

tokyom80917_00.jpg

家族との再会、そして再起へ。

tokyom80917_01.jpg

わかっていたけど認められない、信じたくない残酷な出来事を封印していた未来はついに本人(?)から「死」を告げられ一人帰宅の途へ。夕日が照らす中を魂の抜けた表情でとぼとぼ歩く様子は見ているこっちも辛いです。一緒にいながら弟くんを死なせてしまった自責に囚われる未来、しかもその原因が自分にあると思い込んでいるため両親に合わす顔がありません。するとそこへ弟くん登場し「帰ろう」と。

今回の弟くんは今までと違い死が確定しているせいか影は無く、また逆光でも体に影が落ちないライティングで「実体では無い」ことを強調していました。約束どおり手を繋ごうとしても握った手は透けてしまい、それでも未来は弟くんの励ましによって自宅へ。本来ならば弟くんと揃って帰宅でハッピーエンドのゴールシーンでしょうに…まさかこんな展開になるとは。

母親の気配を感じて家へ入るも姿は無く、未来の目には震災によって変わり果てた部屋の様子が映るのみでした。反抗期でイライラしあれほど居心地が悪かった家、しかし必死の思いで帰宅した後に震災の爪痕をリアルに突き付けられたのはショックだったでしょう。それでも夕日の差し込む自室を見ると「帰って来た実感」が湧いたのか緊張の色も薄まり…ついに弟くんとの別れがやってきました。二段ベッドの上段に座った弟くんは家へ帰れたこと、そして未来を無事に家まで導けたことで役割を終えたのか。

「やだよ…悠貴、いなくなっちゃうの?」
「いなくならないよ」
「何? 何て言ったの?」
「ずっと…ここにいる」
「何? 聞こえない、聞こえないよ…悠貴」
「お姉ちゃん、大好き…」

存在が薄まり消え入りそうな弟くんの声に涙声で答える未来。言ってしまうと少々ベタな演出・脚本でしたが、穏やかな表情で天に召されていく弟くんを見るとさすがに涙腺にキますね。

tokyom80917_02.jpg

するとそこへ母親が登場。現れた母親は未来の姿を見つけると一も二も無く全力で抱き締め…その様子を見届けた弟くんは今度こそ本当にお別れです。おそらく家から離れていた母親を弟くんが導いたのでしょう、最後まで家族思いのいい子でした。消えゆく弟くんを見送る未来の表情が悲しすぎ。

父親の入院する病院にて親子三人の再会。父親は足をケガしていますがクラッシュ症候群とは無縁のようで一安心です。クリステル予告が未来両親へ発動せずよかったよかった。両親を前に未来は弟くんを死なせてしまったことで自分を責め…しかし父親の優しい手、母親の抱擁によって独りで抱え込んでいた重責から解放。張り詰めた糸が切れたように思いの丈を吐き出し、もはや遠慮なく涙を落とす未来はようやく弟くんの死を認められたのではあるまいか。

tokyom80917_03.jpg

思った通りBパートは後日談。震災から1ヶ月経った未来は魂が抜けたように寝転がるのみ。二段ベッドの上段を足で押してもそこに弟くんの姿は無く、しかし机を眺めるとそこに「いる」ような気がしてならない。親しい人、特に家族を突然亡くしても全く実感が湧かず「ひょっこり戻ってくる」ような想像を働かせてしまうのは無理もありません。特に未来はまだ中一です。人の死に対しほとんど体験が無い子供に気持ちの切り替えを強いるのは無理というもの。母親にしてもそう簡単にはいかないようで…弟くんの食事まで用意してしまう気持ちはわかるけれども、いつまで続けていても状況は好転しないのでキリを付けないと。まあそんな事はわかっていてもなかなか踏ん切りが付かないんですよね…。

そんな所へ久しぶりの真理さんと再会。避難中のワイルドな装いから変わってのスーツ姿はいかにも大人の女性です。依然魂が抜けたままの未来に対し旦那を亡くした時の喪失感を語り、弟くんの言葉どおり「悠貴くんは未来ちゃんの中にちゃんといるよ」と。しかしそんな言葉を聞いたところで未来はまだピンと来ない様子でした。

1ヶ月ぶりに電源を入れたケータイにはたくさんのメッセージが届いています。行方不明と言われたユカは無事だったようで何より。次々とメールを確認すると何故か真理さんからのメールが届いており…それは真理さんのケータイを使った弟くんからのメールでした。初めて使うであろう他人のケータイで小学三年生が上手いことメール文を作成するなあと思いますがそれはそれ、基地局が機能せず通信が途絶えていたのにどうやってメールサーバに繋げたのだろうと思いますがそれはそれ、弟くんの思いの詰まったメッセージに涙が溢れる未来、黙って抱き締める真理さんの優しさに見ているこっちも目頭が危険水域です。こんなん言うと不謹慎かもですが、この作品はシンプルな線のキャラデザが効いているのか表情描写のデフォルメが逆にリアルで、特に今回見せた泣き顔の表現は素晴らしかったです。

tokyom80917_04.jpg

両親との再会で死を認め、真理さんに感情をぶつけたことで気持ちに整理を付けた未来。いつまでも元気のない未来を心配する両親の前に立ち、母親にあの日買ったプレゼントを渡し、あの日に描いた絵を渡し…1話で渡しそびれた絵をこんな形で再登場させますか。未来の前では気丈に振る舞っていた両親もこれには落涙、家族の絆を思い出させる一枚の絵にはもういない弟くんの思いが詰まっています。

亡くなった人を忘れることは難しい。いや無理に忘れる必要は無いし、むしろ忘れてはいけない。悲しく寂しくなったら話しかければいい。「心の中で生きている」というのはベタで陳腐で使い古された表現ですが実際の話それが真実なのです。どれほど泣いても亡くなった人は帰ってこない、ならば弟くんの言葉どおり「がんばって歩く」ことが何よりの供養となるでしょう。

ほどなく学校は再開され、弟くんのクラスにも犠牲者が多数いたようで机の花が何本も飾られていました。机の脚にテニスボールが付けられているのは震災で耳に障害を受けた生徒がいるのかもしれません。

亡くなった弟くんに代わってマロニエの木に水をやり、歩き続けることを誓う未来で締め。なかなか綺麗な終わり方でした。EDで映る写真は最終回仕様に差し替え。弟くんを助けたコンビニ姉ちゃんは無事に復帰し、ロボオタクの少年も無事、仮設住宅の真理さんたちは丸いケーキを囲み、未来宅でも丸いケーキでお誕生日のお祝いをしていました。これら本編で描いた部分の細かいフォローに感心です。

開始当初は壊滅した首都を3人がいかにして帰宅するか、それを通じて震災時の対処法などを盛り込んだ内容かと思いきや…もちろん前半はそんな描写も多々ありましたが、弟くんのアレコレが始まって以来はそちらがメインになってしまい正直言って少々消化不良だった気もします。1話の始まり方からして未来の成長物であることも予想できましたけれども…まさかこれほどの試練とは。

確かに震災の恐ろしさを表現するにあたり「身内の死」を描くのは間違いではなく、平時にはどうしても「他人事」とタカをくくって危機感を感じないことに警鐘を鳴らすには効果的ではありましょう。しかし弟くんが亡くなった後に死を認められない未来の表現は現実に起こりえる事とは言え少々ファンタジーが過ぎたような。死因についても脳挫傷から1日後に突然発症→搬送即黒タグとはこれも現実的ではありますが、東京タワーの倒壊による二次災害が原因というのは過剰演出でした。冒頭テロップによって「リアル感」を売りにしているのだから、もう少し現実味のある死に方(?)で描いて欲しかったかも。というか東京タワーが倒れるレベルなのにフジテレビが無傷で当日から普通に稼働しているってのはあまりにご都合すぎ(笑。などなどツッコミを入れれば一晩でも話せそうですが、それを越えた魅力があったのも事実であり、一気に駆け抜けた11話はどの回も30分が早かったです。

というわけで激動の東京マグニチュード8.0はこれにておしまい。おつかれさまでした。

  

関連記事
スポンサーサイト




↓記事が役立ったら一票どうぞ。
にほんブログ村 アニメブログ 深夜アニメ

trackback url


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

trackback

前半は、地震についての知識と人間模様。後半は、PTSD気味になってしまった未来の立ち直れるまでの物語……がテーマかな?? 東京マグニチュード8.0最終第11話『悠貴へ…』

 悠貴の死を思い出してしまった未来。  あの後、レスキューに助けられたものの、樹はどうやら泣き疲れてすっかり母親に抱かれて睡眠中。 ...

東京マグニチュード8.0 第11話 「悠貴へ・・・」 (終)

自宅にたどり着き家族との再会を果たした「東京マグニチュード8.0」の第11話。 未来と母親の再会を見送って安心したかのように消えていく悠...

東京マグニチュード8.0  全11話

さて、いまさらですがこの作品について総括的な感想を描きたいと思いますまずはこの作品東京マグニチュード8.0というタイトルであり、最初にテロップでの注釈など地震のことをリアルに描いてくれるアニメになるのかなぁと期待していた部分がありますその点についてはちょ...

東京マグニチュード8.0_第11話『悠貴へ・・・』感想 / テレビアニメ

 一言結論:家に着いた彼女だけれど、これからも歩いていく ネタバレありなので、以下は続きから。

[感想][アニメ]東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ・・・」視聴

姉弟 途中で死んでもなお姉の支えとなり続ける弟に感服今回で家に着いたしやっとミッションコンプリートってとこかここまでこれたのは姉弟だからこそかな 災害発生から1ヶ月たちみな安定を取り戻してきたそれでもまだいろいろ引きずったままの未来のまえにマリさんが訪れる

東京マグニチュード8.0 第11話 「悠貴へ…」 感想

東京マグニチュード8.0 最終話 「悠貴へ…」 感想 悠貴へ

東京マグニチュード8.0 #11(最終話) 「悠貴へ…」

「お姉ちゃん・・・大好き・・・」 夜中に大号泣。

東京マグニチュード8.0 第11話(終)

[関連リンク]http://www.tokyo-m8.com/第11話 悠貴へ…とうとう最終回悠貴が死んでいたことがわかってしまった未来でもそれでも悠貴に励まされ家に戻るそして親と再会する未来涙しながら抱...

東京マグニチュード8.0 最終話 「悠貴へ・・・」

最後の最後で泣かされました゜(゜´Д`゜)゜。 正直、最初始まったときは大地震なんて、すごく現実味のある内容だったので、 アニメとして...

東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ…」

「歩き続けなきゃ 悠貴が見てる――」 家族との再会、真理との再会! 真理が持って来てくれた携帯に残されていた悠貴からのメッセージ… ...

東京マグニチュード8.0 11話「悠貴へ…」

『ようやく到着した自宅。久しぶりの家族との再会。地震で多くを失った未来は心に空白を抱えたまま、時は過ぎていく。両親に挨拶に来た真理...

東京マグニチュード8.0 第11話 「悠貴へ…」

がんばってあるこうね――。 悠貴の幻は、未来が家に帰るまでいっしょにいてくれて。 未来と母の再会を見届けるように消えて行った…。 震...

東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ…」(最終回)

悠貴くんがいない(ノ_・。) 未来1人の絵はつらいなあ… なかなか家へ向かえない未来を励ます悠貴くんの思念。 魂になってもお姉ちゃんを思って…うりゅうりゅうりゅ(ノДT) …この時点で悠貴くんの手が半透明になってたり、影がなかったりとつらい描写の連続。 ...

東京マグニチュード8.0 第十一話 悠貴へ…

いよいよ最終話 そーいや悠貴死んじゃいましたね・・・ なんか空気重いですorz ゆうきいいいいいいい まあ今さら騙されませんがw 死ん...

東京マグニチュード8.0 第11話『悠貴へ・・・』最終回

第11話『悠貴へ・・・』悠貴の家族に対する想い、お姉ちゃんへの想い…そして未来の側の悠貴への想いには…泣けてきました……でも。。。えと、まずその泣けた方から書こうかな…。純粋に今回の話に入り込めば、確かに胸にきたんです。悠貴がいかに家族が大好きで、お姉?...

東京マグニチュード8.0 最終回

真夏に乱れ咲くシクラメン

(アニメ感想) 東京マグニチュード8.0 第11話(最終回) 「悠貴へ…」

東京マグニチュード8.0 (初回限定生産版) 第2巻 [BD] [Blu-ray]クチコミを見る ようやく到着した自宅。久しぶりの家族との再会。地震で多くを失った未来は心に空白を抱えたまま、時は過ぎていく。両親に挨拶に来た真理から、以前投げ捨てた携帯電話を手渡される未来。一?...

東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ・・・」

東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ・・・」の感想記事です。 ※この記事は、FC2などの一部ブログへのTB送信が出来ない本館に...

「東京マグニチュード8.0」第11話(終)

東京マグニチュード8.0 【初回限定生産版】 第1巻東京マグニチュード8.0第1巻【Blu-rayDiscVideo】第十一話「悠貴へ・・・」(終)ようやく到着した自宅。久しぶりの家族との再会。地震で多くを失った未来は心に空白を抱えたまま、時は過ぎていく。両親に挨拶に来た真...

東京マグニチュード8.0 第11話(最終回)「悠貴へ・・・」 感想。

(泣)

東京マグニチュード8.0 第11話(終) 「悠貴へ…」 【感想】

「悠貴、ありがとうね。お姉ちゃんの弟に生まれてきてくれて…」 震災以来、未来が悠貴から教わった事は数え切れない程あるんでしょうね...

[アニメ]東京マグニチュード8.0 #11

東京マグニチュード8.0 公式サイト 『悠貴へ…』 脚本:高橋ナツコ 脚本・構成協力:村田和也 演出・絵コンテ:野村和也作画監督:野崎あつこ 秋谷有紀恵 長谷部敦志作画監督補佐:李美英 レイアウト:菱沼由典 森川篤 袈裟丸絵美 ついに家へ帰ってきた未来(花村怜美)。だ

[アニメ]東京マグニチュード8.0:第11話(最終回)「悠貴へ・・・」

 力強く、今を生きていくこと。それだけが悠貴からの想い。

東京マグニチュード8.0 第11話(最終回)「悠貴へ…」

「おねえちゃん、大好き・・・」

東京マグニチュード8.0 第11話「悠貴へ…」

東京マグニチュード8.0の最終話を見ました。第11話 悠貴へ…苦難の道のりを経て自宅に帰り着いた未来だったが家には誰もおらず、悠貴のことを思っていた。すると、母親が帰って来て、必死に未来に駆け寄り、身体を力いっぱい抱きしめ、涙する。「ママ…っ…」未来が母と...

comment form

管理者にだけメッセージを送る

comment

素晴らしい作品でしたが

穿った見方をすると、東京タワーの崩壊を描くことで、視聴者に地デジ移行を無意識に印象付けようとした気がしてなりません。

No title

最終話は終始涙腺緩みっぱなしでした。
災害によって家族を失う悲しさと立ち直る一つの指針を描いた作品としてバッチグー!でした。
深夜アニメだったけど、小中学生がみれる夕刻に再放送してもらいたいな。

No title

こう言うアニメは基本ハッピーエンドが吉かと?!

れすれす

>右回りさん
マロニエ日記の表紙がスカイツリーなのも意味深ですよね。第1話では地デジカも出てましたし、完全移行まで残り2年を切っていろいろ必死さが滲み出てます(笑

>fuoさん
確かにこの作品は深夜に流すにはもったいないと言いますか、2時間枠くらいに再編集したものを長期休みごとのゴールデンタイムに放映してもいいような。ひな壇芸人の雑学クイズよりよほど見る価値がありますよね。

>通りすがりさん
悠貴くんはいなくなってしまったけれど、その大きな代償によって未来が得たものは計りしれません。もちろんその顛末を見守っていた視聴者も同様でしょう。姉弟揃って元気に帰宅できた上で未来が成長を見せればそれに越したことは無いのですが、死者18万人と想定されたストーリーの現実味、また「もし震災が来たら身近な人がこういう目に遭う可能性がある」という警鐘の意味もあっての弟くん死亡エンドなのかと。マロニエの木に誓う未来を見れば人が死んだから単純に「バッドエンド」というわけでもありませんし。
プロフィール

nobuma


Author:nobuma
リンク、TBはご自由にどうぞ。
※連絡先(☆を@に):
seaside_megane☆yahoo.co.jp

イヴの時間
当blogはイヴの時間を応援しています。
アイカツスターズ! ステージソングまとめ

アイカツ! ステージソングまとめ

アイカツ! ライブステージムービーの変遷

Twitter
最近の記事
カテゴリ
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
09  03  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08 
ブログ内検索
Bookmark
RSSフィード
Amazon
Powerd by FC2