2009-12-05(Sat)
とある科学の超電磁砲 #10 サイレント・マジョリティ
禁断の木の実に手を出してしまった佐天さん。

歓喜から後悔、そして漆黒の闇へ。

友達たちに「レベルアッパーを持っている」と告げて引いた前回。泳いだ目や震える表情から嫌な予感はしましたが、どうやらあっさり使ってしまったようですね。自分一人では怖くて使えない禁制品もみんなで使えば怖くない、はたして件のレベルアッパーは噂どおりの効力を発揮し、紙コップを動かすのがせいぜいだった子は人を浮かせられるほどになり、レベル0だった佐天さんも手のひらで木の葉を舞わせる程度の能力が発動しました。それは僅かな力でしたが0と1では大違い、偽りの力とはいえ「能力者」となれたことに歓喜する表情は今までの鬱積した思いの裏返しでしょう。しかし歓喜の様子と裏腹に影が落ちた絵面は佐天さんの後ろめたさを映し、またこの先起きるであろう悲劇を予感させます。
例のサイトからレベルアッパーをDLした初春はその魔力に惹かれつつも黒子の釘射しにて誘惑を振り払い…まああの「副作用」を知っていればあえて危険を冒すようなマネはしますまい。音声ファイルを受け取った脱ぎ女はもっともらしい対応をしておりますが、後の結果からするにこれは全部芝居だったということか。
レベルアッパーが音楽ソフトであることに疑念を持つ初春。すると前回冒頭に佐天さんが見せた「噂のアイテムの入った音楽プレーヤ」を思い出し…関連性を感じた初春はさっそく電話を入れますが佐天さんは出ず。ブラインドの下がった窓に向かって立ち尽くす後ろ姿はこれもまた言いようのない不安を感じさせますね。

都市伝説レベルの怪しさで、かつ入手困難なブツだったはずのレベルアッパーはいつの間にか広く普及しちゃってます。形態が音楽ファイルなのでコピーも簡単、確かに最初の数人は希少だったかもしれませんが一度広まってしまったらネズミ算式に拡散してしまうのでしょうね。さらに言えば拡散が進むにつれ「あいつも使っている」「みんな使ってる」と主語が大きくなっていき、気も大きくなって、ならば自分もと抵抗感が薄れていくのはよくある話。まさに青少年が犯罪に手を染めるパターンですね。
しかし取り締まる側は体が一つなので大変(笑。あちこちの現場でレベルアッパー使用者を相手にする黒子はいくらレベル4でも身が持ちません。とはいえ身はボロボロでも心は折れない黒子、初春に手当てしてもらいながら捜査方針を語る表情は変態の名を返上せしめんもの。やるときはやる、このギャップが黒子の魅力ですね。
沸騰したヤカンの音をトリガーにかき氷の件で出た「共感覚性」の話を思い出すシーンは、その前に「そっちではなく」とお約束のツッコミを入れてワンクッション。こういう会話のテンポの妙が説明セリフを飽きさせない作りに繋がっているのでしょう。とはいえあのヤカンは「ピー!」って鳴かないだろー(笑。初春は脱ぎ女へこの件を報告。話を聞いてもっともらしく頷く脱ぎ女は…これも全部芝居か。

そして今回のハイライト。レベルアッパーを使用して4~5日目のみなさんは能力が加速度的に向上し、強まった力を堪能している様子でした。嬉しそうに能力を使う友達を眺めつつ、しかし佐天さんは初春にこの件を連絡すべきか悩みます。
「怒られちゃうかな…?」
ケータイモニタに映り込んだこの時の表情がまるで「悪いことをした子供が親へ言い出せない顔」なのですね。自分でそれが「悪いこと」だとわかっていても言い出せない、言い出せないまま深みにハマり…ってのはこれもまた青少年犯罪のお約束でしょう。そして悲劇は突然やってきます。偽りの幸福は長く続かず、ついに友達の一人が意識を失い倒れてしまいました。
事の重大さに気付いた時は後の祭り。禁制品に手を出した後ろめたさに加え、友達を巻き込んでしまった罪悪感に打ちのめされながら佐天さんはついに初春へ電話を入れます。カーテンを引いた暗い部屋に俯いて話す様子は彼女の心境をこれでもかと描いていましたね。母親から貰った御守りを手に初春へ全てを打ち明け、「私も倒れちゃうのかな」「レベル0って欠陥品なのかな」と涙声で続ける弱々しさは胸が締め付けられます。
「もし眠っちゃっても私がすぐに起こしてあげます」
そんな佐天さんへ努めて明るく返す初春の強さ。いや彼女もいっぱいいっぱいなのでしょう、口元だけ映すアングルは初春が今どんな表情で佐天さんを励ましているかを想像させる好カット、まあベタといえばベタなのですがこんなの見たら私の涙腺ダムも決壊寸前です。絶妙なカットチェンジが続いた末にいよいよ見せる初春の目には涙が溜まり、そして周囲も気にせず表情を崩して大粒の涙を落とすカットへ。頼もしい言葉を聞いた佐天さんにもそれが伝わり…直後に見せる照れ隠しの軽口がこれまた泣かせます。こういう表情描写は須間雅人(小林常夫:近作では黒神の監督担当)氏のコンテが真骨頂を見せていますね。毎度贅沢な映像ですよ。
しかし運命は残酷でありました。ダッシュで向かった佐天さんの部屋へ到着し、ドアを開けるとそこには…。

倒れてしまった佐天さんはベッドで眠り続け、その様子を目の当たりにした御坂は黒子と共に屋上へ上がってしばしお話。前回気になった「レベルなんてどうでもいい」の何気ない一言はもちろん悪意からでは無いのですが、その言葉が佐天さんをいかに傷付けたか気付き、ハードルの前で立ち止まってしまう人の気持ちなど考えたこともなかったと懺悔する様、能力レベルが高くともじつは無力だった自分に怒る様は何とも辛い。まあ残された者の後悔は事が起きれば必ず付いて回るものなのであまり自分を責めてはいけない。まだ取り返す術があるのだから。
学園都市最強の医師が登場。この人にかかれば大抵助かるので大船に乗った気分でありますね(笑。ここで昏睡患者の脳波についてあれこれ、何やら強制的に脳波を同期させられている節があると…脳波の同期ネタってどこかで読んだ気がするなあ。最近物忘れが多いのでレベルアッパーでどうにかしてほしいところです(笑
初春の逸る気持ちを制する脱ぎ女。いつもの調子で決して焦らず、大人の対応をしている脱ぎ女でしたが…彼女が部屋を出た後にロッカーから覗く一片の書類。そこには「Synesthesia」すなわち「共感覚」と書かれています。だからこれはSynesthesiaというよりもQualiaだろうと思うのですが…共感覚ってとCANAANみたいなのをイメージするなあ。

能力者なら誰でも常に出している拡散力場、それをネットワークで繋ぐために例の同期した脳波パターンをプロトコルとする作戦。要するにレベルアッパー使用者を全員巻き込んだ、各端末をワイヤレスネットワーク接続した有機グリッドコンピューティングってこと? 接続したからと言って各端末の性能が同時に上がるわけではなく、どこかか上がればどこかの端末に負荷がかかるため、その影響が使用者の昏睡という形で現れているのかな。まあレベルアッパーの仕組みについてはあまり深く考えず雰囲気で楽しみますか。こういう考察は専門の人に任そう(笑
同期した脳波パターンのオリジナルを持つ者が犯人である可能性が高い。てなわけでバンクをサーチすると浮き上がった人物は件の脱ぎ女でした。大脳生理学者にて拡散力場が専門の彼女にはド直球な研究ネタです。この発覚に前後して見せる初春の危機は結構な緊迫感にドキドキ、手錠をかけられガヤルドで向かう先はどこなのだろう。というか初春のお花畑については脱ぎ女じゃなくても疑問なので早々に回答されたし。
体中傷だらけの黒子に気付いていた御坂はさすがお姉さま。昏睡者はいつの間にか何千人単位に膨れていたのか(笑。右目を閉じた御坂が肩を突くと反論していた黒子は左目を閉じて黙り、おでこを突くと目を開き、すると黒子に合わせるように御坂が左目をウインクする様子は意思の疎通を感じさせる一連でした。向かい合った対称から同じほうを向いた揃いへ。芸が細かいなあ。
しかし急場とはいえジャッジメントの資格が無い者が堂々と捜査に加わるのはどうなのだろう。どうもこの「ジャッジメントの立ち位置」のあやふやさが気になって仕方がない。こういう所をシビアに描いてくれればストーリーに深みが増すだろうに。
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歓喜から後悔、そして漆黒の闇へ。

友達たちに「レベルアッパーを持っている」と告げて引いた前回。泳いだ目や震える表情から嫌な予感はしましたが、どうやらあっさり使ってしまったようですね。自分一人では怖くて使えない禁制品もみんなで使えば怖くない、はたして件のレベルアッパーは噂どおりの効力を発揮し、紙コップを動かすのがせいぜいだった子は人を浮かせられるほどになり、レベル0だった佐天さんも手のひらで木の葉を舞わせる程度の能力が発動しました。それは僅かな力でしたが0と1では大違い、偽りの力とはいえ「能力者」となれたことに歓喜する表情は今までの鬱積した思いの裏返しでしょう。しかし歓喜の様子と裏腹に影が落ちた絵面は佐天さんの後ろめたさを映し、またこの先起きるであろう悲劇を予感させます。
例のサイトからレベルアッパーをDLした初春はその魔力に惹かれつつも黒子の釘射しにて誘惑を振り払い…まああの「副作用」を知っていればあえて危険を冒すようなマネはしますまい。音声ファイルを受け取った脱ぎ女はもっともらしい対応をしておりますが、後の結果からするにこれは全部芝居だったということか。
レベルアッパーが音楽ソフトであることに疑念を持つ初春。すると前回冒頭に佐天さんが見せた「噂のアイテムの入った音楽プレーヤ」を思い出し…関連性を感じた初春はさっそく電話を入れますが佐天さんは出ず。ブラインドの下がった窓に向かって立ち尽くす後ろ姿はこれもまた言いようのない不安を感じさせますね。

都市伝説レベルの怪しさで、かつ入手困難なブツだったはずのレベルアッパーはいつの間にか広く普及しちゃってます。形態が音楽ファイルなのでコピーも簡単、確かに最初の数人は希少だったかもしれませんが一度広まってしまったらネズミ算式に拡散してしまうのでしょうね。さらに言えば拡散が進むにつれ「あいつも使っている」「みんな使ってる」と主語が大きくなっていき、気も大きくなって、ならば自分もと抵抗感が薄れていくのはよくある話。まさに青少年が犯罪に手を染めるパターンですね。
しかし取り締まる側は体が一つなので大変(笑。あちこちの現場でレベルアッパー使用者を相手にする黒子はいくらレベル4でも身が持ちません。とはいえ身はボロボロでも心は折れない黒子、初春に手当てしてもらいながら捜査方針を語る表情は変態の名を返上せしめんもの。やるときはやる、このギャップが黒子の魅力ですね。
沸騰したヤカンの音をトリガーにかき氷の件で出た「共感覚性」の話を思い出すシーンは、その前に「そっちではなく」とお約束のツッコミを入れてワンクッション。こういう会話のテンポの妙が説明セリフを飽きさせない作りに繋がっているのでしょう。とはいえあのヤカンは「ピー!」って鳴かないだろー(笑。初春は脱ぎ女へこの件を報告。話を聞いてもっともらしく頷く脱ぎ女は…これも全部芝居か。

そして今回のハイライト。レベルアッパーを使用して4~5日目のみなさんは能力が加速度的に向上し、強まった力を堪能している様子でした。嬉しそうに能力を使う友達を眺めつつ、しかし佐天さんは初春にこの件を連絡すべきか悩みます。
「怒られちゃうかな…?」
ケータイモニタに映り込んだこの時の表情がまるで「悪いことをした子供が親へ言い出せない顔」なのですね。自分でそれが「悪いこと」だとわかっていても言い出せない、言い出せないまま深みにハマり…ってのはこれもまた青少年犯罪のお約束でしょう。そして悲劇は突然やってきます。偽りの幸福は長く続かず、ついに友達の一人が意識を失い倒れてしまいました。
事の重大さに気付いた時は後の祭り。禁制品に手を出した後ろめたさに加え、友達を巻き込んでしまった罪悪感に打ちのめされながら佐天さんはついに初春へ電話を入れます。カーテンを引いた暗い部屋に俯いて話す様子は彼女の心境をこれでもかと描いていましたね。母親から貰った御守りを手に初春へ全てを打ち明け、「私も倒れちゃうのかな」「レベル0って欠陥品なのかな」と涙声で続ける弱々しさは胸が締め付けられます。
「もし眠っちゃっても私がすぐに起こしてあげます」
そんな佐天さんへ努めて明るく返す初春の強さ。いや彼女もいっぱいいっぱいなのでしょう、口元だけ映すアングルは初春が今どんな表情で佐天さんを励ましているかを想像させる好カット、まあベタといえばベタなのですがこんなの見たら私の涙腺ダムも決壊寸前です。絶妙なカットチェンジが続いた末にいよいよ見せる初春の目には涙が溜まり、そして周囲も気にせず表情を崩して大粒の涙を落とすカットへ。頼もしい言葉を聞いた佐天さんにもそれが伝わり…直後に見せる照れ隠しの軽口がこれまた泣かせます。こういう表情描写は須間雅人(小林常夫:近作では黒神の監督担当)氏のコンテが真骨頂を見せていますね。毎度贅沢な映像ですよ。
しかし運命は残酷でありました。ダッシュで向かった佐天さんの部屋へ到着し、ドアを開けるとそこには…。

倒れてしまった佐天さんはベッドで眠り続け、その様子を目の当たりにした御坂は黒子と共に屋上へ上がってしばしお話。前回気になった「レベルなんてどうでもいい」の何気ない一言はもちろん悪意からでは無いのですが、その言葉が佐天さんをいかに傷付けたか気付き、ハードルの前で立ち止まってしまう人の気持ちなど考えたこともなかったと懺悔する様、能力レベルが高くともじつは無力だった自分に怒る様は何とも辛い。まあ残された者の後悔は事が起きれば必ず付いて回るものなのであまり自分を責めてはいけない。まだ取り返す術があるのだから。
学園都市最強の医師が登場。この人にかかれば大抵助かるので大船に乗った気分でありますね(笑。ここで昏睡患者の脳波についてあれこれ、何やら強制的に脳波を同期させられている節があると…脳波の同期ネタってどこかで読んだ気がするなあ。最近物忘れが多いのでレベルアッパーでどうにかしてほしいところです(笑
初春の逸る気持ちを制する脱ぎ女。いつもの調子で決して焦らず、大人の対応をしている脱ぎ女でしたが…彼女が部屋を出た後にロッカーから覗く一片の書類。そこには「Synesthesia」すなわち「共感覚」と書かれています。だからこれはSynesthesiaというよりもQualiaだろうと思うのですが…共感覚ってとCANAANみたいなのをイメージするなあ。

能力者なら誰でも常に出している拡散力場、それをネットワークで繋ぐために例の同期した脳波パターンをプロトコルとする作戦。要するにレベルアッパー使用者を全員巻き込んだ、各端末をワイヤレスネットワーク接続した有機グリッドコンピューティングってこと? 接続したからと言って各端末の性能が同時に上がるわけではなく、どこかか上がればどこかの端末に負荷がかかるため、その影響が使用者の昏睡という形で現れているのかな。まあレベルアッパーの仕組みについてはあまり深く考えず雰囲気で楽しみますか。こういう考察は専門の人に任そう(笑
同期した脳波パターンのオリジナルを持つ者が犯人である可能性が高い。てなわけでバンクをサーチすると浮き上がった人物は件の脱ぎ女でした。大脳生理学者にて拡散力場が専門の彼女にはド直球な研究ネタです。この発覚に前後して見せる初春の危機は結構な緊迫感にドキドキ、手錠をかけられガヤルドで向かう先はどこなのだろう。というか初春のお花畑については脱ぎ女じゃなくても疑問なので早々に回答されたし。
体中傷だらけの黒子に気付いていた御坂はさすがお姉さま。昏睡者はいつの間にか何千人単位に膨れていたのか(笑。右目を閉じた御坂が肩を突くと反論していた黒子は左目を閉じて黙り、おでこを突くと目を開き、すると黒子に合わせるように御坂が左目をウインクする様子は意思の疎通を感じさせる一連でした。向かい合った対称から同じほうを向いた揃いへ。芸が細かいなあ。
しかし急場とはいえジャッジメントの資格が無い者が堂々と捜査に加わるのはどうなのだろう。どうもこの「ジャッジメントの立ち位置」のあやふやさが気になって仕方がない。こういう所をシビアに描いてくれればストーリーに深みが増すだろうに。
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